8.ご案内します
ついて来いと言われて、二人木馬の後を黙々と進んでいた。そのうち気まずくなってきたロッタは、とりあえず木馬に話しかけてみた。
「ねぇー、どこ行くの?」
「この辺りのおもちゃが集まっているところだ。お前たちがどこへ向かっているのかは知らないが、一度来たらいい」
すたすたと歩く木馬に反応らしい反応ができないまま、ロッタはとりあえず頷いた。
ロボは行き先に特に興味はなかったようで、ロッタはよく行き先を聞くなぁ、と考えていた。
「それにしても」と今度は木馬の方が口を開いた。
次に言った言葉は、テンションの高さが恐ろしいくらいさっきまでと違っていた。
「この頭部のバランスで、よくここまで自由に動けるものだな!普通は頭をおこすことさえ、できないんじゃないのか!?」
木馬はくるりと振り返ってロッタを見た。見つめてくる目がキラキラしていた。
素直に感動しているのだろうが、頭でっかちに対して若干失礼なその言葉に、ロッタは苦笑いする。明らかにどう対応していいか、困っていた。
「ここまでするには、大変な努力が必要だっただろう!?」
「え…、確かに最初は頭取れるかと思ったけど」
「そうだろうそうだろう!これは素晴らしいな!」
興奮している木馬に、ロッタはお手上げ、とでも言うようにロボを見た。ロボはすごく面倒くさそうに、木馬に声をかけた。
「…お前、微妙に失礼だな」
「?何がだ?」
「バランスの悪さを言ってるよーなもんじゃないか」
すると木馬は今気づいたみたいに、急に声のトーンが落ちた。小さな声で「すまない…」と言うのが聞こえた。
「いや、別に気にしてないよ?」
ロッタが慌てて早口でフォローすると、すぐに木馬は立ち直った。以外と単純な性格のようだ。
気を取り直した木馬は、今度はロボを見た。表情から言う事はなんとなく想像できて、ロボは思わず半歩後ずさった。
「お前も腕一本で、しかもアームなのか!すごい二人だな!」
「……木馬さん木馬さん、それも捉え方によっては…」
木馬の名前はアンディ、というらしい。ロッタとロボも簡単に自己紹介をして、改めてはじめましてをした。
「二人はどこから来たんだ?」
そんなアンディの疑問にも、迷うことなく答える。
「えー、まちだよ」
何気なく答えたが、アンディは目を丸くして驚いていた。そんなに変なことを言った覚えのない二人は、その反応に逆に驚いた。
「まちって…、あの『まち』か…?」
「えっと…、うん。ゴミ山の」
「なんでここに来た」
ロッタはびっくりしてアンディを見た。アンディは何故か怒っている様子で、軽い返事することはできなかった。
アンディは二人が固まっているのを見て、自分が何をしているか気づいたようだ。一瞬動きを止めて考えてから、二人に謝った。
「すまない…、つい、」
「アンディ、まちに何が?」
「――っ!なんでもない!ほら、基地に着いたぞ!」
誤魔化しながら、アンディは走っていった。二人は怪しく思ったが、言えないことなら、と無理矢理自分を納得させていた。
おもちゃ達の集会は、基地、という所で開かれるのだろう。早足で中に入って行ったアンディに、ロッタとロボはついて行った。