3.道の途中
「じゃあ、そろそろ行くか」
十分はしゃいでから、ロボの一言で二人は歩き出した。さっきからずっとハイテンションだったから、まだ余韻が残っていた。
「そういえば、ここってぬいぐるみはあんまりいないんだね?」
景色を眺めていたロッタが言った。ロボは特に悩むこともなく、ああ、と返事した。
「おもちゃもこうやって捨てられる世の中でも、ぬいぐるみと人形は別なんだよ。人形供養とかいうので燃やされるんだ」
最近じゃぬいぐるみはお前くらいだな、と言われて仲間が少ないことに、ロッタは少しがっかりした。
ロッタはうさぎのぬいぐるみだ。頭と耳がやたらと大きく、白地に茶色の斑模様のうさぎ。左耳に真っ赤な大きいボタンがついているのが特徴的というのか。
なぜ自分が人形供養に出されなかったのかは不明だけど、熱い体験をせず、ロボにも出会えたのだから気にしないでおく。少し前までの自分なら、こんな悪夢のようなところに来るくらいなら燃やされた方がマシ、と思ったかもしれないことを考えると、随分思考が変わったのがわかる。
ロボット供養とかないのかなぁ、と言ってロボに呆れられたりしながら、二人はゴミの道を進む。
すると、遠くで二人のおもちゃが何やら見慣れないことをしているのが見えた。
紫色の布を羽織った人形が、ぜんまいじかけのおもちゃに布を掛けて、何かしている。考えてもよくわからないので、ロッタは仕方なく尋ねた。
「ロボ、あれは何をしているの」
「あれは…、」
ロボは言いかけて一瞬口をつぐんだ。嫌なものでも見たかのような反応で、明らかに表情に出ていた。
「あれは人間がよくやる、占いっていうものの真似事みたいなもんだ。俺は…、やったことないが」
「えーっ、楽しそう!」
ロッタがうきうきしながら言うと、ロボが慌てて止めに入った。とても必死だった。
「あれだけは止めとけ。頭がおかしくなる」
「おかしくなる…?なんで?」
「……、とにかく止めとけ」
説明が足りないのが不満だが、真剣さにおされてロッタは頷いた。ここまで真剣になるなら何か理由があるのだろう、と無理矢理自分を納得させる。
その後なぜか変な間が空いてしまったので、ロッタは話題を変えようと大きな声を出した。
「ねぇ、これどこに向かってるの」
「言ってなかったか。ちょーろーのところだよ」
「え?長老?」
「違う、ちょーろー」
ちょーろーと長老の微妙な違いのつけ方に苦労するロッタを引っ張り、ほら、とロボは前を向いた。
二人はぽっかりと開けたスペースに出た。