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玩具のまち  作者: 海月
16/18

16.友達、でしょう?

ロッタは訳もわからず走り続けた。涙で前が見えなくて、気づいたらまちの入口に立っていた。

戻ってきてしまった。

ロボと一緒じゃないのに。

そのまま、まちに入らずにぼおっと広いゴミ山を見ていた。今の状況で誰かに会って話す自信もないし、帰るときはロボと一緒がよかった。

ずっとそうしていて、どれくらい時間が経ったのだろう。あまり経ってはいない気がするが、誰かの人影が見えた。それはよく知る人物で。

「ロッタ!どこ行ってたのよ!何にも言わずにロボと出ていって!!」

「え…、らら……?」

「そうよ!」

らら、だった。紫色の布を羽織っていて、出ていく前に見た姿となんにも変わっていない。

しかしらら以外の姿は見当たらずに、ロッタは首をかしげた。

「なんでららはここにいるの…?」

「私を誰だと思ってるのよ。占いで知ったに決まってるじゃない!」

えへん、と偉そうならら。催眠術だけじゃなかったんだ…、とロッタは小さくつぶやいた。

少し間をおいて、ららはこの状況なら当然聞いてくるだろうことを口にした。

「それで?ロボはどうしたのよ」

「………、それは占いでは見れないの?」

「全部が全部見れる訳じゃないわ」

ほら早くと急かすらら。ロッタはできるだけ言いたくなかったのだけれど、渋々話した。ここは占いで知ってて欲しかった。

「私があの子の家に行きたい帰りたいって言って、それで、」

「けんかしたの?」

「…うん、そう」

消えそうな声で肯定すると、ららはやっぱりね、とでも言いたげな顔をした。ロッタが戸惑っていると、ちゃんと説明してくれた。

「ロボって今までかなりのおもちゃと関わってきてるんだけどね、みんな離れてくのね。上手くぴったりくる人がいなかっただけだと思うけど」

ロッタは最初に会ったときのことを思い出してみた。確かに一言目からすでに悪印象をもらいそうな声のかけ方だった。

「ロッタは一番長いわよ。一緒に街まで行くなんて、いい友達を見つけたなあって思ってたら…」

けんかをしてしまった。自分のせいで。

ロボは今まで寂しかったのだろうか、とちょっと考えた。ロッタには普通に接してくれていたけど、本当は。

「…でもそれでも今更、だもん」

絶対にロボは怒っている。なのにのこのこと戻っていって仲良くしようとしたって、突き放されるに決まっている。

その様子を見たららは、ゆっくり話し始めた。

「ロボさぁ、ロッタがここに来てくれてそばにいてくれて、すごい嬉しそうだったの。だからもう、悲しい思いはしてほしくなかったのよ、きっと」

「悲しい…?」

「厳しいこと言うけど、私たちっていらなくなったから捨てられたんでしょう?じゃあ捨てた家に行ったって、扱いは所詮ゴミよ」

そりゃそうだ。ゴミをもう一度使ってくれる人なんて、この時代には存在しないだろう。

ロッタはうつむいた。わかっていたけれど、悲しい現実だった。捨てられた者の運命だった。

「それにね、ロッタにはまちを出てほしくなかったんだと思うよ。だってほら、こんなに温かくてすてきなゴミ山じゃない!」

ららは笑顔で言い切った。それから優しく言った。

「帰っておいでよ、今度は一緒に」

それを聞いてはっ、と気づいた。自分が一緒に居たかった人は本当は誰なのか、何が嬉しくて楽しかったのか。

ロッタは決心した。自分勝手な行動にはならないように。ちゃんとロボを連れてこれるように。

街の方向に向けて走り出しながら、前には言っていなかったことをららに向けて叫んだ。


「いってきます!」



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