16.友達、でしょう?
ロッタは訳もわからず走り続けた。涙で前が見えなくて、気づいたらまちの入口に立っていた。
戻ってきてしまった。
ロボと一緒じゃないのに。
そのまま、まちに入らずにぼおっと広いゴミ山を見ていた。今の状況で誰かに会って話す自信もないし、帰るときはロボと一緒がよかった。
ずっとそうしていて、どれくらい時間が経ったのだろう。あまり経ってはいない気がするが、誰かの人影が見えた。それはよく知る人物で。
「ロッタ!どこ行ってたのよ!何にも言わずにロボと出ていって!!」
「え…、らら……?」
「そうよ!」
らら、だった。紫色の布を羽織っていて、出ていく前に見た姿となんにも変わっていない。
しかしらら以外の姿は見当たらずに、ロッタは首をかしげた。
「なんでららはここにいるの…?」
「私を誰だと思ってるのよ。占いで知ったに決まってるじゃない!」
えへん、と偉そうならら。催眠術だけじゃなかったんだ…、とロッタは小さくつぶやいた。
少し間をおいて、ららはこの状況なら当然聞いてくるだろうことを口にした。
「それで?ロボはどうしたのよ」
「………、それは占いでは見れないの?」
「全部が全部見れる訳じゃないわ」
ほら早くと急かすらら。ロッタはできるだけ言いたくなかったのだけれど、渋々話した。ここは占いで知ってて欲しかった。
「私があの子の家に行きたい帰りたいって言って、それで、」
「けんかしたの?」
「…うん、そう」
消えそうな声で肯定すると、ららはやっぱりね、とでも言いたげな顔をした。ロッタが戸惑っていると、ちゃんと説明してくれた。
「ロボって今までかなりのおもちゃと関わってきてるんだけどね、みんな離れてくのね。上手くぴったりくる人がいなかっただけだと思うけど」
ロッタは最初に会ったときのことを思い出してみた。確かに一言目からすでに悪印象をもらいそうな声のかけ方だった。
「ロッタは一番長いわよ。一緒に街まで行くなんて、いい友達を見つけたなあって思ってたら…」
けんかをしてしまった。自分のせいで。
ロボは今まで寂しかったのだろうか、とちょっと考えた。ロッタには普通に接してくれていたけど、本当は。
「…でもそれでも今更、だもん」
絶対にロボは怒っている。なのにのこのこと戻っていって仲良くしようとしたって、突き放されるに決まっている。
その様子を見たららは、ゆっくり話し始めた。
「ロボさぁ、ロッタがここに来てくれてそばにいてくれて、すごい嬉しそうだったの。だからもう、悲しい思いはしてほしくなかったのよ、きっと」
「悲しい…?」
「厳しいこと言うけど、私たちっていらなくなったから捨てられたんでしょう?じゃあ捨てた家に行ったって、扱いは所詮ゴミよ」
そりゃそうだ。ゴミをもう一度使ってくれる人なんて、この時代には存在しないだろう。
ロッタはうつむいた。わかっていたけれど、悲しい現実だった。捨てられた者の運命だった。
「それにね、ロッタにはまちを出てほしくなかったんだと思うよ。だってほら、こんなに温かくてすてきなゴミ山じゃない!」
ららは笑顔で言い切った。それから優しく言った。
「帰っておいでよ、今度は一緒に」
それを聞いてはっ、と気づいた。自分が一緒に居たかった人は本当は誰なのか、何が嬉しくて楽しかったのか。
ロッタは決心した。自分勝手な行動にはならないように。ちゃんとロボを連れてこれるように。
街の方向に向けて走り出しながら、前には言っていなかったことをららに向けて叫んだ。
「いってきます!」




