14.無表情の従業員
ロッタとロボは特に行くあてもなく、ふらふらと街をさまよっていた。
行くあてがないのはずっと変わらないことだが、おもちゃ屋さんを見てすっかりテンションの下がってしまった二人は、ほとんど無気力の状態だった。
「…、疲れたね」
「ああ、大分歩いたもんな」
言い合ってからふぅ、とため息をついた。疲労や足の痛みは、どうやら感じてはいなくても蓄積はされていたようだ。
街というものは大分長い間楽しんだ気がする。あとあまり見ていないものといえば…、やっぱり人間だろうか。
「家に勝手にお邪魔したり、してみたいよね」
「よくそんなこと思いつくもんだな」
ロボが呆れながら言った。
とは言いながらも、ロボも興味があるようでなんとなく乗り気だった。見つからなければ大丈夫だろう。
思いついたら行動は早くて、早速入れそうな家を探し出した。だがここは街ということを忘れていた。普通そうな家なんてなかなか見つからない。
「…、仕方ないね」
二人は結局通りにある、適当な雑貨屋さんに入った。見つからなさそうなところを探して物陰に隠れる。
店の中では人間の、たくさんの言葉が行き交っている。それに混ざって機会音。どうやらロボットは大分普及してきているらしい。
「すごいねぇ、ロボットなんて」
ロッタが何気なく言ったことに、ロボは顔をしかめた。不機嫌そうにロッタにいう。
「俺はあいつらが嫌いだ」
まぁそりゃそうだろうな、とロッタは苦笑いした。なだめても無意味だとわかっていたから、適当に相槌を打つだけにする。
「あいつらに任せてたらだめになる」
「うん、そうだね」
「だから人間はなまけるんだ」
ロボは同じロボットの種類として、敵対意識を持っているようだ。これだけ批判するのは人間がなまけるとかいう理由だけではないだろう。
「うん、でも頼っちゃってるんだね」
お店の様子を見ていると、ほとんどの仕事をロボットがやっているようだった。科学技術が進歩したのだろうか、細かい動きまでできていた。
店主らしき人はカウンターに座ってお客さんとおしゃべりを楽しんでいた。これなら全てロボットに任したとしても支障はないように思ってしまう。
「なんか、だらけきった生活だな」
ロボが残念そうに言った。ものを大切にしない理由もなんとなくわかる、とぼやいている。
「でも仕方ないよ、こんな時代に生まれたおもちゃなんだから。人間に好んでもらえるようなものにならないと」
そう言ったら、ロッタはえらいよな、と笑われた。
だってそうやって生きなければ残ることはできない。できるだけ手元に残してもらうのは誰もが願うこと。
「ま、全員が頼ってる訳じゃないだろうからな」
このまま居ても面白いことは起こらないだろうと、二人は店を出た。ロボットは二人に気づいていたようで、小さく手を振ってくれた。
出たときに隣のお店を見ると、一生懸命働いている若い人の姿が見えた。
「…、そろそろ終わりだな」
店を出てから、ロボがぽつんと言った。もう見るものは見た。勝手に飛び出してきたんだし、帰らないといけない。そういう意味だった。
思えばいろいろしたわりにあまり日にちは経っていない。でもまちが恋しかった。
帰りかった。みんなにも会いたくなってきていた。ニックもちゃんと着いているだろうか、とも考えた。
それでもロッタは言っておくことがあった。
「ねぇロボ。行きたいところがあるんだ」
「ん、もっと早く言えよ。どこだ?」
怪訝そうな顔をするロボ。ロッタは懐かしかった頃を思い出して、言った。
「あの子――、私を可愛がってくれていたあの子のところに、行きたいの」




