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玩具のまち  作者: 海月
10/18

10.何故そこを目指すのか


全くの無計画でまちを飛び出したことが判明し、多少の口論があったものの、話し合いの機会が持たれた。

喧嘩になりそうなところはボスが少し仲介して、二人の意見はまとまった。何故無計画で出たのかという言い争いよりは、随分早く決まっていた。

それは元々意見が似たものであったから。

「アンディ、私達人間の住んでいるところに行きたい」

「…?どういうことだ?」

「人間が生活してるところに行きたいの。街とか」

ロボも頷く。つまりは人間が見たいのであって。

「…、後悔はしないか」

「大丈夫!まかせて」

「捨てられてからの余裕みたいなやつだな」

アンディはしばらく考えて、最終的には勢いで決めてしまっていた。ボスはそれを楽しそうに見ていた。

軽く放心状態のアンディに、ボスはおかしそうに呼びかけた。

「どうする?俺が行こうか」

「、いや、いい!大丈夫だっ」

ほら行くぞ、と言ってアンディは早足で出口に向かった。謎な行動に、ロッタとロボは首を傾げることしかできないでいた。

「ボス、アンディどうしたの」

ボスは微かに笑いながら、出口を指さした。誤魔化すように二人の背中を押した。

「まぁ本人がなんとかするだろ。二人とも、辛くなったり逃げたくなったら戻ってこい」




「ロボは街に行くだけでいいの?」

アンディに追いつこうと早足で歩きながら、ロッタは聞いた。ロボは何故か少し寂しそうに「ああ」とつぶやいた。

「えー、心残りとかないの」

話しているとアンディも加わってきた。それだけのためにまちから出てきたのか、とふざけて怒るフリもしていた。

「あー、うん、俺は不良品のおもちゃだから。一度だけ人間の住んでるところを見てみたかっただけだ」

なんてことないみたいにさらっと流された言葉に、二人の歩みは止まった。しっかりと聞きとれていたけど、頭には入ってこなかった。

「え…、なんて」

「不良品、片腕取れてるだろ。このタイプは作り直さないといけなくて手間だって、捨てられた」

おもちゃは遊んでもらうために作られるのに。

時代の流れでこんな残酷なことが起こっているなんて。

言葉を失った二人に、ロボはしまった、とでも言いそうな顔をした。自分の中では整理できていて、もう受け入れている事柄らしい。

なんとなくロボが答えたことは、二人には考えられないようなことだった。

「ごめん、聞き流してくれ。そんなつもりじゃなかったから」

そんなつもりじゃないことは、言われなくてもわかっている。ロボは優しいから冗談で言ったりなんかしないはずだ。

何か言わなくちゃいけないと思いながら何も言えない二人は、黙々と歩き続けた。早くこの空気をなんとかしないということは三人とも考えていた。

結局状況はなんとかならないままに様々な建物が見えてきた。これを機に、とアンディが少し上ずった声をあげた。

「ほら見ろ、街だぞ!」

人や動物が歩いているのが見えて、わぁ、と思わずつぶやく。

着いてから数分間、さっきまでの雰囲気を忘れたロッタとロボは、ただ圧倒され見とれていたのだった。

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