ケンカをした日のイミビト(いじめられっ子)
ここ数話、いじめ、虐待(を臭わせる)表現が出てきます。苦手な方は飛ばして下さい。
・・・あまり出かけたく・・・なかったの・・・けれど・・・お使いに行かないと先生が怒る・・・から、町に出かけたの。
「忌み人がいるぞ」
「忌み人がこんなトコ歩いてるんじゃねーよ」
ビシャッ
・・・泥団子・・・
ビシャッ
「忌み人は出てけ」
ビシャッ
「うわっ、きたねぇ」
ビシャッ
・・・服・・・汚れちゃった・・・怒られる・・・かな。
ゴッ
痛ッ。
キーンッ。と耳鳴り・・・
「おい、やめろっ」
・・・何?
「なんだ、このガキ?どこのガキだ?」
「さぁ、ここいらじゃ見かけない顔ですね」
「寄ってたかって、女の子をいじめるとは、ずいぶんと格好いいことしてんな!おい」
何?・・・この子・・・誰?・・・何?
「はぁ?忌み人なんだから、いいんだよ」
「邪魔だ。どけよ」
そう。・・・忌み人だもの・・・仕方・・・ないの。
「イミビトだかなんだか知らないが、女の子は守るモンだ。それが男ってモンだ」
「いいから、邪・魔・だっ!」
ドカッ
・・・ボクの目の前で、男の子が・・・殴られる。
「ぁ・・・」
やめて。・・・この子は関係・・・ない。
「こんの・・・卑怯者がっ!」
・・・忌み人なのは・・・ボク。
「いってぇな。クソが。やっつけてやる。お前らは手を出すなよ」
でも・・・声が・・・出ない。
・・・怖い。怖い。怖い。
「ジャン、やっちまえ」
「クソガキ、覚悟しとけよ」
どうしたら・・・いいの?
・・・目の前の男の子の方が・・小さい。
・・・勝てる訳・・・無い。
「くっそ!」
・・・忌み人のボクなんかのために・・・ボロボロにされちゃう。
・・・どうしたら・・・どうしたら・・・
・・・怖い。怖い。怖い。
『ピリルルル!ピリルルル!』
「やべぇ。イヌだ」
「ジャン!巡視が来るぞ」
「そんなガキほっとけ」
巡視官が・・・来る?
・・・助かった・・・の?
・・・よかった。
・・・ぼろぼろ・・・だけど、大けがは・・・無い?
「ふぅ。・・・とは言え、こっちも逃げた方がいいかな?
ねぇ、行くよ?」
何?・・・手を握られた。
「ぁ・・・」
だめ・・・だよ。
・・・忌み人に触れたら・・・よくないよ?
「面倒はごめんだから行くよ?ほら」
「ぇ・・・」
ゃ。・・・引っ張られる。
・・・ここ・・・町の外・・・
「はぁはぁ」
・・・こんなとこまで・・・来ちゃった。
「はぁはぁ」
「はぁ・・・ごめんね。ちょっと傷見せてね」
「ぇ・・・」
・・・男の子が頭に・・・触る。
「痛ッ」
「あっ、ごめんね。
ちょっと待ってね」
「ぇ・・・いい・・・だ、大丈夫だから」
「ちょっと傷口濡らすよ~」
「ゃ・・・だ、大丈夫だから」
「じゃぁ、ちょっとじっとしててね~」
聞いて・・・くれない。
・・・近くの小川で・・・布を濡らして・・・当ててくれた。
・・・目をつぶって片手をかざしてるけど・・・何をしてる・・・の?
「我、彼の者を癒すことを願いたてまつらん。ヒール」
「えっ!?」
・・・頭を触ってみる。
「・・・痛くない」
「ん。傷も残ってないし、大丈夫そうだね」
「な・・・何をしたの?」
「ちょっとヒールをね。
・・・それより、汚れちゃったね。ウチに来なよ」
・・・ヒール!?
「ねぇ、ウチに来て身体を綺麗にしよう?」
「ぇ・・・だめ」
びっくりして・・・手を振り払う。
「!・・・ごめん・・・なさい・・・ボク、忌み人だから・・・」
ボク・・・走って、その場から・・・逃げ出しちゃったの。
男の子が何か言っていたけど・・・よく聞こえなかったの。
何故か・・・涙が出てきて・・・止まらなかったの。
次回「人さらいの日」
Twitter @nekomihonpo
変更箇所
会話前後に空行追加
私の目の前→ボクの目の前
次回タイトルの追加




