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ヒール最高  作者: 猫美
学院高等編
70/90

訪問の日

対抗戦から1巡り(9日)が経過した。

高熱を出してぶっ倒れてしまったネクリオス達も、今ではすっかり元気になって・・・毎日のようにミレイに会いに来ている。

その根性というか、しぶとさはアッパレだと思う次第。


風邪の特効薬を見つけたらノーベル賞モノだ。

なんていう冗談がまかり通ってしまうくらい風邪はやっかいな訳だが・・・

まさか、魔法のあるこの世界でもやっかいなモノだとは思わなかった。

はっきりとした原因が見えてこないため、原因に作用するような回復魔法が使えない。

神聖魔法は魔法とは言え、西洋医学っぽい対処療法という側面を持っている。

思い返してみれば、自分が風邪を引いた時も母様が魔法で治すのでは無く、普通に寝てたな・・・そんな幼い頃の思い出。

案外魔法って奴も万能じゃ無いんだな・・・と言うことを再認識した出来事だった。


対抗戦は、他のパーティーは見せ場も無く、我々が勝ちをかっさらってしまった。

周囲の壁から見学していた連中から、その対戦内容が広まると、ミレイは氷の黒魔女としての地位を確固たるものとした。

ラルも、二つ名こそ付かなかったが、序盤、終盤に見せた巨大な水球は、遠くの壁から見ていた連中にもはっきりと見える大きさで、一目置かれる存在にのし上がっている。

チノはと言うと、地味ながらも、開始早々に全パーティーを発見した・・・と言うことで戦士課の男子連中に一目置かれているようだ。


さて・・・私こと、ウィル・ランカスターだが・・・実は全然、名が上がっていない。

まぁ、そりゃそうだろう。

吹雪が吹き荒れ、水球が爆散するような場において、"ヒールばか"が何の役に立つのかと・・・

全然活躍が見えてこないので、相手にされていない。

ミレイなどは、そんな状況に我慢が出来なくてフォローしようとしてくれたが、自分で止めた。

自分の行動を客観的に思い返してみよう。


対抗戦の最中・・・ミレイの後ろにぴったりくっついてた。


自分の活躍を説明しようとすれば、そんな状況の説明が必要になる。

どう冷静に見ても、変態すぎる。

・・・なんだ、その羞恥プレイ。

ってことで、口止めをし、神聖魔法なんて役立たずよね~という風を装うことに決めた。

ネクリオスだち・・・と言うより、ヨルマナがしつこく種を聞いてきたので、明かしたが・・・


一躍、時の人・・・の中に紛れ込んでいる役立たず・・・そんなポジション。

なんとも言えない気持ちにさせられる。


まぁ、いいんだ。

そんなことはどうでも。


先日、アシュタオリル先生から研究室へのお誘いがあった。

話自体は悪い話じゃ無い。

とは言え、ゆくゆくは将来の生活が関わってくるとなると、慎重にならざるを得ない。

将来をどうしたいのか?

と言うことを真剣に考えなければならない時期に来たのだろうか?

・・・ちょっと早すぎるんじゃないかとも思うが・・・

まぁ、まずは詳しい話を聞いてからだろうか。


そんな訳で、アシュタオリル先生の研究室へお邪魔することにした。

高台に位置するルーオジーの校舎から、第5区方面に少し下った位置に研究棟が建てられている。

この研究棟で研究を行っている先生もいれば、自宅で行っている先生もいる。

アシュタオリル先生は前者・・・この研究棟に引き籠もっている類の先生らしい。


戦士課の先生なんかは、研究では無く、研鑽けんさんになる。

そのため、学院から割り当てられた場所では思ったように研鑽・・・修行が行えない場合が多いため、自宅の場合が多い。

そんな理由から、郊外に近い比較的土地が自由になる場所が多いそうだ。


閉じこもってばかりの魔法使い・・・薄暗い部屋で書類やら実験器具が積み重なった部屋を想像していたのだが、実際は日差しの気持ちいい部屋だった。

まぁ、書類や実験器具が積み重なっているのは間違いなかったが・・・

取り敢えず、ウチら4人・・・応接室にあたる部屋でアシュタオリル先生から話を聞いている。


「この間、大雑把に話したと思うが、

 ウチは面白い成果を出せば卒業資格を与えとる」

「呪印魔法に関係無くてもいいんですか?」

「限定はしとらんが、呪印魔法がいいの~」

「それだとチノ・・・

 チノテスタが厳しいと言いますか・・・

 先生の下で学ぶ利点が無いのですが」

「む・・・学ぶ利点と言われると困るのぉ。

 卒業資格に関しては、お主ら4人で4つ・・・

 厳密にはあと3つでいいんじゃ。

 楽なモンじゃろう」

「まぁ、卒業資格に関してはそうですが・・・

 チノテスタは弓術です。

 先生の下での利点が解りません」

「ウィル、ボクはいいよ。

 個人での練習でも腕は上がってるし、

 家に帰れば、父さんが鍛えてくれるし」


チノはそれでいいかも知れないが、それではレベルアップが鈍化しないだろうか?

やはり、専門の先生に教えを請い、着実にレベルアップを図った方が将来のためだと思うんだ。


「それはそれ。

 これはこれ・・・ですよ」

「そうじゃの。

 野外活動の際は腕を磨けるかも知れんが、

 普段はあまり役に立たないかのぉ」

「それでは困るのですが・・・」 

「将来・・・という点なら、ワシや卒業生が口利きをしてくれるかの。

 こう見えても、ウチの卒業生は優秀揃いじゃ。

 かなり手蔓てづるとしては強力じゃぞ?」


ふむ、手蔓・・・コネという点には魅力を感じるな。

そういう意味では悪くないのか・・・?

まぁ、実際にどういうコネがあるのかにもよるが・・・

そもそも、将来、どうしたいのか・・・って話だよな。

この点に関しては、1回、個々人でしっかり考えて貰って話し合った方がいいかも知れないな。


「なるほど、手蔓ですか・・・

 それは魅力的・・・と言えば、魅力的かも知れませんね」

「ほんと、ウチの卒業生は優秀じゃぞ?」

「まぁ、それに関しては追々考えるとします。

 話を戻して、チノテスタのメリット・・・利点は手蔓ですか?」

「ウチの研究室では、弓術に関してはそんな所かのぉ。

 あとは魔法の効果を的として弓を射るくらいしか・・・」


チノがここに入るメリットが少なすぎる気がするな。

コネは魅力的ではあるが、それに頼りっぱなしではチノが伸びない。

まぁ、話を先に進めるか。


「話は少し戻りますが・・・

 卒業資格に関してです。

 いきなり面白い成果・・・と言っても、難しいです。

 普段はどんなことを研究されてるんです?」

「ふむ・・・

 呪印魔法の解析と応用じゃな」

「新しい呪印魔法を生み出す・・・と?」

「そうそう簡単に新しい魔法は生み出せんよ」

「それはそうでしょうね」


図書館で読んだ限り、そういった方面の本はほとんど無かった。

応用が進んでいないとは思えないので、秘密主義と言うか・・・成果をおおっぴらにする人間が少ないようだ。


「呪印魔法を失敗すると、

 どうなるか知っておるかの?」

「失敗・・・ですか」


ミレイやラルには本に載ってる魔法しか試して貰っていない。

失敗があったとすれば、発動しなかったくらいか。

実例はソレだけだな。

あとは授業で習った話だけだ。


「発動しない。

 気絶する。

 暴発する。

 の3つですか」

「そうじゃな。

 そう教えとる」


そう教えてる?

じゃぁ、実は違うということなのか?


「私が失敗した時は、何も起きなかったな~」

「・・・ボクもそう」

「そうじゃな。

 それが一番多い。

 原因は色々ある。

 魔法陣が間違っとる場合や、

 心力が発動に足りとらん場合じゃ」


まぁ、そうだろうな。

それはそれ。

正直、話の方向が見えてこない。

不思議そうな顔をしていると、アシュタオリル先生が話を続ける。


「次に多いのは、気絶じゃな。

 一瞬にして、心力を放出してしまうのじゃ。

 それこそ、まばたきする間にの」

「ミレイやラルはなったことが無いですね。

 とは言え、怖いですね」

「気絶するだけじゃ。

 命に別状は無い」


命に別状は無い・・・ってことは、暴発は命の危険があると?


「最悪に等しいのが、

 意識を持って行かれる事じゃ」

「えっと・・・暴発では無く?

 それに気絶との違いが解らないのですが・・・」

「まさに持って行かれるんじゃ。

 自分じゃ戻って来れぬよ」

「え?」


自分じゃ戻って来れない?

先生の言った言葉を噛みしめる・・・


「それこそ、彫像のように身動き一つせん」


服がクンッと引っ張られる。

見やると、ミレイが不安になったのか、僕の服の端を掴んでいた。


「自分じゃ・・・と言うことは、助ける手段があるんですよね?」

「ああ、そうじゃ。

 魔法陣の描かれたモノを消滅させればよい。

 取り上げてもいいし、破壊してもいい。

 大抵はそれで戻るはずじゃ」

「大抵は・・・?」

「うむ・・・呪文の詠唱のみで発動した場合、

 取り上げるべき魔法陣が無いからの。

 その場合、数日で死ぬだけじゃ」

「うわ。呪文怖っ」


ラルが大げさに驚いている。

・・・大げさになのか?


大げさでは無いよな・・・呪文はやばい・・・ということだ。


ミレイの呪歌は大丈夫なんだろうか?

発動のキーワードを探るだけで手を加えていないが・・・

まぁ、呪歌の場合、いろいろと制約が・・・音階であったり、単語であったり・・・多そうだから大丈夫だとは思うが・・・

何らかの回復手段・・・もしくは回避手段を考えておかないとまずいのだろうか?

そういう意味では、研究を行っているアシュタオリル先生の所で学ぶってのは悪くない。


「きちんと魔法陣を用いれば大丈夫じゃ。

 もっとも、1人で実験を行ってはならんがの」

「そうですね」

「さて、ウチの主たる研究じゃが、

 魔法陣の解析と、改良・・・

 新しい魔法の創造じゃ」

「えっと・・・危険性を訴えた後で、

 そんなことを言われても魅力を感じないのですが・・・」

「それは誤解と言う物じゃ。

 危険性をしっかり理解し、

 どこに危険がひそんでいるのかを考察し、

 その上で、新しい魔法に挑戦する。

 そういう研究じゃよ」


まぁ、危険な箇所が解らなければ、安全対策も取りようが無いのは確かだが・・・

脅しておいて魅力を感じろと言われても・・・


「実際、心力の効率改善などは、

 うまくすれば5割程度改善したりするのじゃぞ」

「5割もですか・・・

 凄いですね」

「どうじゃ。

 興味出てきたか?」


う・・・確かに、効率化とかは気になる部分ではある。

効率化が出来れば、ミレイやラルの手数が増える。


「まぁ、ウチでの主たる研究は、

 そんな感じかの」

「そうですか・・・

 ご説明、ありがとうございました」

「いやいや、構わんよ。

 それで、考え込んでおったようじゃが、

 ウチに来る気になったかの?」

「いえ・・・きちんと皆で話し合ってからにします」

「ま、そうじゃのう。

 期待して待っとるよ」

「期待してなんですね・・・」


思わず苦笑してしまった。

皆して、お礼を述べ、研究室を辞す。


研究室からの帰り、チノが話しかけてくる。


「それで、ウィルはどうするの?」

「それほど悪い話とは思えないですかね。

 まぁ、各々の将来にも関わってくるので、

 簡単に決めるわけには行きませんが」

「そう?

 簡単に決めちゃっていいと思うけど」


ラルは相変わらず、さばさばしてるな。


「チノは弓術に関して、ほとんど学べそうに無いですからね。

 やはり簡単に決めていいモノじゃ無いと思いますよ」

「んじゃ、どうするの?」

「将来も関わってきますからね。

 みんなが何をしたいのか・・・

 ってことをしっかり考えないと、

 ダメなんじゃないかと思うんですよ」

「難しい話だね」

「ええ、そうですね。

 まぁ、まだ時間はありますから、

 ゆっくり考えていきましょう」


将来・・・と言っても難しいよな。

コネという点では、悪くないんだが。


それはそれとして・・・

呪文を失敗した場合、意識を持って行かれるというのが問題だ。

魔法陣を使っている限りにおいては、ツーマンセルで回避が可能なようだが・・・

念のためという意味では、何らかの回復手段が欲しい所だ。

・・・とは言え、パッとは思いつかないんだが・・・


将来のことも大事だが、この問題も考えておかないとなぁ。

その日は、そんな考え事をしながら眠り込んだ。


次回「訪問の日のラルタイア(同級生)」


しばらくは大人しいと思う。


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

まかり取って→まかり通って(指摘感謝)

研鑽に読み仮名追加(指摘感謝)


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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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