ないしょの話の日のミレイ(家事手伝い見習い)
「それじゃぁ、ちょっと行ってきます。
遅くなりそうだと思ったら、
先に帰っていて構いませんから」
「・・・うん」
「行ってらっしゃ~い」
ウィルが出かけてしまった。
チノと2人で野暮用があるらしい。
詳しくは教えてくれなかった。
ラルと2人、残されたわけだけど・・・
「・・・ラル、どうす」
「ねぇねぇ、ミレイ」
急に声を掛けられて、びっくりしてしまった。
振り返ると、イマエテラとニクルが妙に嬉しそうに・・・話しかけてきていた。
「・・・ボク?」
「そうそう。ミレイに聞きたいことがあるの」
「あれから何かあった?」
あれから?何か?
いつからで、どういうことだろう?
思い当たることは何も無かった。
「・・・ううん」
「えー。何も無し?
あんな告白したのにぃ?」
「何も無しってのは無いよね~」
「・・・告白?」
「やだぁ、ウィルの反応よ。ウィルの」
「・・・ウィルの反応?」
今日のウィルを思い返してみる。
・・・いつもど~りのウィルだった・・・と思う。
「・・・ううん」
「えー。何それ。つまんな~い」
「あんな大胆な告白があったんだから、
すっごい反応、期待するじゃない」
何か面白くなる要素があったのだろうか?
朝からの様子を思い返してみる・・・特に変わったことは思い当たらない。
「じゃあさ、じゃあさ、
ウィルのどこが好きな訳?」
「きゃあー。そういう事、聞いちゃうんだ。聞いちゃうんだ」
「えー。興味あるくせに~」
ウィルの好きなところ・・・
どこだろう?
目をつぶって思ってみる。
・・・ウィルの好きなところ・・・
・・・ボクの世界を塗り替えてくれたところ。
ボクに手を差し伸べてくれるところ。
ボクが困ってると助けてくれるところ。
ボクの世界から連れ出してくれたところ。
ボクのことを気遣ってくれるところ。
ボクを家においてくれたところ。
ボクを家族の1人に加えてくれたところ。
ボクに暖かさを教えてくれたところ。
ボクと一緒に笑ってくれるところ。
その笑顔があったかいところ・・・
「・・・すごく、あったかいところ」
「あったかい?」
「すっごく優しいってことでしょ」
「・・・うん。優しい」
なんだろう。
ウィルはいないのに・・・
自然とあったかくなる感じ・・・
「やだ。ミレイすっごいかわいい」
「や~ん、かわいい~」
何!?
ニクルに横から抱きつかれた。
何で?どうして?
「はいはい。だめよ~。
ウチのかわいいミレイはあげませんからね~」
よかった。
ラルが止めてくれた。
・・・と思ってたら、反対側から抱きすくめられた。
「え~。いいじゃない。
こんなにかわいいんだから」
「だめだめ。
ウチのかわいいミレイは予約済みだからね~」
「・・・ラルぅ」
「あら、やだ。かわいい」
手で押しのけると、2人とも離れてくれた。
何だったんだろう?
「・・・むぅ」
「まぁまぁ、むくれないの」
「・・・そうじゃないもの」
気がつけば、周りに人が増えてる・・・
・・・みんな、こっち見てる・・・気がする。
「じゃあさ、じゃあさ、
ウィルとの出会い教えてよ」
「えー、愛人の理由を聞きた~い」
「ウィルって、そんなに優しいの?」
「氷の黒魔女がとろけちゃうんだよ」
「えー、やだー。
なんか言い方がやらし~」
みんなが口々に言いたいことを言う。
もう、どうしたらいいの・・・
こんな時にウィルが・・・居てくれない。
心細くなった時に、ラルと目が合った。
「・・・ラル、助け」
「はいはい。ミレイが混乱しちゃうから順番にね」
え?・・・そうじゃなくて、ここから逃げたかったのに。
「はいはい。じゃぁ、順番に出会いからでお願いします」
「はい。じゃぁ、ミレイ」
「・・・ぁぅ・・・出会い・・・」
ウィルとの出会い・・・
「・・・ボクが悲しい気持ちになってたら、
ボクをね・・・
連れ出してくれたんだ。
・・・暖かい場所で・・・
アダムの果実をくれたの。
・・・すっごくおいしくて・・・」
あの時の果実・・・ほんとおいしかったなぁ。
「・・・それで、ボクを家に連れてってくれて。
ボクがお手伝いさんをすることになったの」
リリー奥様と旦那様、ノイナ・・・みんな暖かい人・・・
「ちょっとちょっと、ミレイ。
なんで急にお手伝いさんになってるのよ」
「そ、そうよ。話が急すぎる」
「・・・え?
・・・でも、ボク・・・」
「お手伝いさんって何?どういうこと?」
「さすがにその説明じゃ解らなさすぎるわ」
でも・・・大体、こんな感じだった・・・と思う。
「じゃぁ、住み込みでお手伝いさんしてたの?」
「・・・うん」
「待って待って、その頃って何歳よ?」
えっと・・・何歳だったかな?
え~っと・・・
「っていうか、
引き取って勝手にお手伝いさんにしちゃうって酷くない?」
「・・・む!」
「わ~、待った待った。
酷くない酷くない。
大丈夫。
それは誤解だから。ね?」
ラルが急に抱きついてきて、そんな事を言う。
そんなラルの勢いにみんなびっくりして・・・ボクもびっくりしたけど・・・
でも、リリー奥様のことを悪く言うのは、ちょっと許せなかった。
ラルが止めてきたから、怒るのはやめておくけど。
「じゃぁ、もう、ず~っとウィル一筋なんだ」
「うっわ~。純愛じゃない」
「ねぇねぇ、向こうはどう思ってるのかな?」
向こう・・・ってウィルだよね。
そうだよね。
ウィルは、ボクのこと、どう思ってるんだろう?
「そりゃ、嫌ってはいないんじゃない?」
「そうよねぇ。いつも一緒にいるもんねぇ」
そうだよね。
嫌ってたら一緒になんか・・・いてくれないよね。
「で、その辺ど~なのよ?」
「・・・え?」
「ウィルはミレイの事、どう思ってるか?って話」
「何か言ってなかったの?」
「・・・えっと」
ボクのこと・・・何か言ってたっけ?
「・・・前に、かわいい・・・って」
「きゃー」
「やだー。ちゃんと好き合ってるじゃない」
「ミレイ、照れてかわいい~」
「こんなミレイ見たら、かわいいって言っちゃうわ」
「おい。お前ら、いい加減にしろ。
ちょっと騒ぎすぎだ。
さっさと寮に帰れ」
教室の入り口から戦士学科の・・・えっと・・・名前は知らないけど、先生が怒っていた。
ひとくくりにされて怒られてしまったけど、ボクは巻き添えだと思う。
「きゃ~、ごめんなさ~い」
「は~い。帰りま~す」
「じゃぁ、ミレイ、またね」
「また、話聞かせてね~」
「・・・ぇ?うん」
・・・また・・・って今日みたいなのでいいのかな?
何が面白かったのか解らないけど・・・
「ミレイ、いこっか」
「・・・うん」
ラルと2人で教室を出る。
今日の特訓はどうするんだろう?
「・・・ラル、今日はどうするの?」
「そだね・・・結構、時間も経っちゃったし、帰ろっか」
「・・・特訓は無し?」
「無し無し。
まぁ、たまにはいいじゃない?」
「・・・うん・・・いいのかな?」
「いいのいいの」
・・・いいのかな?
でも、何となく・・・今日は疲れたから、いいかな?
何だろう・・・すごく疲れた感じ。
「ミレイ、お疲れ?」
「・・・ぇ?うん」
「ああいうのは苦手?」
「・・・苦手と言うか。
みんな、何でボクに話しかけてきたのか、
よく解らない・・・から」
「う~ん。
女の子は恋バナが好きなんじゃよ」
じゃよ?
「・・・恋バナ?」
「そそ、恋バナ。
ミレイは身近な恋バナの提供者」
「・・・よく、解らない・・・かも」
「ま、それでなくても、ミレイは秘密たっぷりだからね」
「・・・そんなこと無い」
「そう?みんな興味津々だったじゃない」
「・・・それは・・・そうだけど」
なんて言うか・・・慣れないから、どう接したらいいか困る。
その点、ラルは自然に接してたな。
そう言うのって、凄いと思うし・・・ちょっと憧れる。
・・・自分のそんな姿を想像してみたけど、似合わなかった。
「・・・ラルは、凄いね」
「え?急に何?どうしたの?」
「・・・ううん。ボクはラルみたいになれそうにないから」
「え?ちょっと、よく解らないんだけど?」
「・・・ううん。いいの」
「ミレイだって凄いよ」
「・・・そんなこと無い」
「ううん。凄いんだよ。
すごく、心が強いんだと思う」
「・・・よく解らない・・・かな」
「ふふ、結構、長い付き合いだけど、
まだまだお互いのこと、解ってないね」
「・・・うん。不思議」
「そうだね」
なんか、不思議な日だったけれど、なんとなく楽しくなれた日だった。
次回「大慌ての日」
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