ヒールを試した日のノイナ(家政婦)
「ウィル坊ちゃま~?ウィル坊ちゃま~?」
お屋敷の中をお探ししたのですが、見当たらず、今は庭を探してさまよっているのですが・・・見当たりません。
ウィル坊ちゃまは、どこに行かれたのでしょう?
万が一・・・ということも考えられます。
早くお探しせねば!
「あらあら、ノイナ。どうしたの?」
「ぁ、リリー奥様。
も、申し訳ありません。
先ほどから、ウィル坊ちゃまのお姿が見当たらないのです」
ちょっと目を離した隙に・・・なんてのは言い訳にしかなりません。
ひたすらに謝り、一刻も早く探し出さねばなりません。
「あら、それなら・・・」
「え?」
「少し前に、
『かあさま、町をみてきます』
って言うので、
『気をつけて行ってらっしゃい』
って見送ったのよ。
ノイナに伝えておくべきだったわね。
ごめんなさい」
「いえ・・・私のことはいいのですが・・・ウィル坊ちゃま、お一人で行かれたのですか?」
「そうねぇ。
お友達と行くとは聞かなかったのだけれど」
い、いくらなんでも放任主義過ぎます。
こ、これは急いでお探しせねばなりません。
「お、奥様。
いくらなんでも危険過ぎます。
ウィル坊ちゃまは、しっかりしたお子ではありますが、まだ3歳です。
誘拐・・・は無いかと信じていますが、大人の力には逆らえません。
どこかでケガをしているかも知れません」
「あらあら。
確かに、そういう心配はあるかも知れないけれど・・・ノイナは心配しすぎじゃないかしら?」
「いいえ、奥様。
心配しすぎということは、決してありません」
「男の子なんですから、少しくらい、やんちゃでもいいと思うのだけれど?」
奥様がやんちゃ過ぎます!・・・とは言えない私。
「私、急いで探しに行って参ります」
「あらあら。そう?悪いわね」
「では、行って参ります」
取る物も取り敢えず、町に出て聞き込みです。
買い物なじみのおやっさんから有力情報を得ました。
なんでもウィル坊ちゃまらしき子供が、町の外の方へ歩いて行ったそうです。
何故、そこでお止めしないのかっ!
と理不尽なことを言いたくもあったのですが、まずは坊ちゃまの安否が大事です。
こちらの外には枯れ森しかなかったはず。
誘拐の危険も少ないはずです。
枯れ森には、危険な野生動物も居なかったはずです。
ある意味、一安心と言った所でしょうか。
町の外へ急ぎましょう。
「あれ?ノイナさんじゃないか。
そんなに急いでどこに行くんだい?」
「あ、ジャックのおやじさん。
ご無沙汰しております。
ウィル坊ちゃまが、こちらの方に来たと聞いて、大急ぎでやってきたのです。
見かけませんでしたか?」
「ウィル坊ちゃんって~と、ランカスターんとこの坊主だな?」
「はい。
まだ3歳の小さな子なのですが、枯れ森の方へ歩いて行ったという話を聞きまして・・・」
「ふ~む・・・じゃぁ、あれが坊ちゃんだったのかな?」
「!?・・・何かご存知なのですね!?」
「ぁ、あぁ・・・なんか小さい坊主が、肩を落としながら町の中心へ向かっているのを見たからな」
「えぇっ!?
い、いつですか!?」
「あぁ、それこそ、今しがただよ」
な、なんということでしょう。
これは急いで戻らなければなりません。
「私は急いで追わねばなりません。
貴重な情報、ありがとうございました。
また、お店の方には、今度寄らせていただきます」
「ぁ・・・あぁ・・・すぐに追いかければ見つかるさ」
「はい!ありがとうございます。
それでは失礼します」
なんということでしょうか。
いえいえ。
貴重な・・・それこそ珠玉な情報を頂きました。
急いで町中に戻りましょう。
「ウィル坊ちゃま~!」
あれからすぐにウィル坊ちゃまを見つけることができました。
ああ、ご無事で何よりです。
お手々を引いて家に帰りました。
それからと言う物、ウィル坊ちゃまが、町へ出かけているようなのです。
ふと、半ルーオ(35分程度)~1ルーオ(70分程度)ほど、ウィル坊ちゃまを見かけない日があったのです。
思い返してみると、毎日、半ルーオ程度見かけないのです。
リリー奥様と一緒なのかと思い、確認をしてみたのですが、
「ノイナと一緒だったんじゃないの?」
との仰せ。
こっそりと抜け出しているようなのです。
本当に、本当に偶然、買い物の途中で、ウィル坊ちゃまらしい後ろ姿を見かけたのですが、その日は見失ってしまいました。
ウィル坊ちゃまに限って、悪さをしているとは考えにくいのですが、もし、ここでウィル坊ちゃまが悪の道に走ってしまっては、ランカスター家の家事を預かる身の名折れ!
なんとしても確かめねばなりません!
と、心に誓って、こっそりと監視しているのですが・・・今日もまた、気がつくとおりませんでした。
「ウィル坊ちゃま~?」
次回「前世の記憶に苦しんだ日」
Twitter @nekomihonpo
まだまだ駆け出しの段階で評価をいただき、ありがとうございます。
その評価に恥じぬよう・・・ご期待に添える展開を書くことが出来ればと思っております。では。
変更箇所
会話前後に空行追加
次回タイトルの追加
刻→ルーオ