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ヒール最高  作者: 猫美
学院中等編
41/90

呪いのアイテムの日の次の日の???(???)

まずは、魔法の効果を確認しましょう。

効果もさることながら、効果の持続時間も問題ですわ。

一瞬しか発動しないようなら、別の手段を考えねばなりません。

魔法陣の紙を構え・・・初めての魔法なので緊張しますね。


「かる、えるーど、れたでーしょん!」


風属性は発動の確認が解りにくいのですが、この魔法は解ります。

身体の周りに風がまとわりつくような・・・

そうだ、数を数えないと・・・

10くらいからでいいかしら・・・

11、12、13・・・


この状態で、実際に音が消えるのか確認しないと・・・

風がまとわりついて、少し動きにくいですわね。

18、19、20・・・


用意しておいた金属製の食器を床に落としてみましょう。

魔法の効果で甲高い不協和音は、聞こえてきません。

残念ながら完全な無音という訳では無く、低く鈍い音が響くだけ・・・

39、40、41・・・


試しに、椅子を倒してみます。

倒れる瞬間に、思わず顔を背けてしまったのだけれど、これも派手な音はせず、低い打撃音が響くだけ・・・

完全に無音にならないのが少し気になりますけど、これなら十分に役に立ちますわね。

54、55、56・・・


あと確認するのは、私の心力でどこまで持つのか・・・ってことかしら?

他に確認することは・・・特には思いつきませんわね。

72、73、74・・・


・・・155。156、157・・・

さ、さすがに辛くなってきました。

動けなくなっても困ります。

ここら辺が限界ですわね。

魔法陣を手放し、魔法の効果を開放します。

数えで150・・・余裕を考えると120程度というとこかしら。

さすがに、ぐったりですわ・・・き、今日は、もうお終いにしましょう。

疲れましたわ。



次の日、校舎の裏の荒れ果てた空き地に出向きましたわ。

私とて、こんな所に出向きたくも無かったのですが、部屋の留め具をどうにかするためには仕方ありません。

あの程度の留め具ならば、この辺の・・・ありませんわね。

生えていると思ったのですが・・・


思ったより苦労して見つけましたわ。

キンガロエの葉です。

葉の平側が持つしなやかさと、横の固さ・・・

これを扉の隙間に差し込んで、上に持ち上げれば、外れるはずですわ。

念のために3枚くらい取っておきましょう。



いよいよ決行の日。

頭からすっぽりと外套を羽織り、寮の入り口を見張ることの出来る建物の影に潜んでいるのだけれど・・・

ラヴィール家の子犬はまだかしら。

この私を、こんな所で待たせるなんて、いい度胸じゃない。

やはり、躾のなってない子犬はだめね。

などと考えていたら、寮の入り口が開き、子犬が顔を見せ、左右を見やった後、引っ込んだ。

よくやりましたわ。


急いで、それでいて静かに入り口に駆け寄ります。

寮に入る前から魔法を使うべきかしら・・・

数えで120・・・150を限度とすると、少しでも後にしたい所だけれど・・・

入る時の音で露見しても困りますわね・・・

やはり、使いましょう。


魔法陣を取りだし、小声で呪文を唱えます。


「かる、えるーど、れたでーしょん・・・」


今から、数えで120・・・素早く行動しなければ・・・

1、2、3・・・

寮の扉を、そっと引く・・・

音も無く開く・・・


あの子犬、よくやりましたわ。


7、8、9・・・

扉を開き、身体を素早く忍び込ませます。


中は薄暗い・・・が、しばらくすると目が慣れ、月明かりで周りが見えてきましたわ。

18、19、20・・・

階段の影に忍び寄り、1階奥と2階を伺います。

明かりが漏れてくる様子も無く、特に気づかれた様子はありませんわね・・・

ゆっくりと物音に気をつけながら2階に上がり、素早く階段の影に隠れます。

24、25、26・・・

1階、2階奥、3階に気をやりながら、3階へ上がります。

階段の影に隠れ、緊張で高鳴った胸を押さえようと・・・


大丈夫。

今のところ、順調にやれていますわ。


4階の様子を伺います。

耳を澄ませ、物音を・・・


なんてこと!

この魔法の欠点に気がついてしまいましたわ。

自分の周囲の音をさえぎると言うことは、私の発した音を目立たなくすると同時に・・・

私が耳を澄ませても"音が聞こえない"と言うことですわ。

ど、どうするべきかしら。

戻って出直し・・・いえ、出直しても変わらないわ。

こ、このまま続行よ。


39、40、41・・・


4階に上がり、部屋の前に身をかがめます。

思わず、耳を澄ませ、扉の向こうの物音を聞き取ろうとしてしまいますわ。

魔法の効果で聞こえないのにもかかわらず・・・

緊張で自分の鼓動が耳元で鳴り響く・・・

なんでこんなにうるさいのかしら・・・

48、49、50・・・


キンガロエの葉を1枚、扉の隙間に差し込むのだけれど・・・

・・・なんでこんなに入りにくいのかしら。

急がなければと焦る心、まったく言うことを効かない手・・・

ああっ、もうもどかしい!

扉を軽く押すことで、するすると吸い込まれていきますわ。

やりました。

56、57、58・・・

上に、ゆっくりと滑らせていくと、途中で引っかかるように止まる場所が・・・

これが留め具ね・・・

慎重に手を動かします。

急に手応えが軽くなり、下方向に引っかかる感じだけが・・・

どうやら失敗したみたい。

引っかかってる部分で外せないかと、上に引っ張ってみたけれど、完全に切れてしまったようです。

64、65、66・・・

2枚目の葉を取り出し、同じように隙間に差し込みます。

留め具の所で、同じように引っかかりを感じ、葉に切れ目が入る感触が伝わってきます。

・・・だめなのかしら。

72、73、74・・・

3枚目を差し込み、2枚目と重ねて持ち上げます。

これでだめならお手上げですわ。

鈍く・・・留め具を持ち上げる手応えが伝わってきます。

慎重に・・・じわじわと・・・上に抜ける感覚が・・・

ゆっくり扉を押すと、無事に開きましたわ。

素早く身を部屋内に忍び込ませます。

先ほど、千切れた葉を懐に忍ばせます。

80、81、82・・・


部屋の中は、真っ暗で・・・それでも、ここまでやってきた私にはうっすらと物が見えます。

腰をかがめ物陰に隠れながら・・・どこにしまわれているのか考えます。

ハイエルフの宝と言われるような物を、タンスの中や引き出しの中なんていう簡単な所にしまうかしら。

いいえ、普通ならもっと厳重な所にしまうわ。

とは言え、困ったわ・・・

そんな所、思いつきませんもの・・・

88、89、90・・・

帰りのことを考えると、あまり悠長に考えてはいられませんわ。

まずは探さないと・・・

身近な机の引き出しをゆっくりと引っ張り出します。

それらしい物は見当たりませんね。

94、95、96・・・

まさか、着けたまま寝ている!?

そ~っと近づけば大丈夫ですよね?

首筋を確認しましたが、着けてはいないようですわね。

それこそ、どこにしまっていますの!

もう、腹立たしい・・・

105、106、107・・・


まずいですわね。

そろそろ、余裕が無くなって・・・

111、112、113・・・

ふと、机の上に光る物が転がっているのが目に付きました。

手に取ってみると、銀の鎖で首飾りになっており・・・

こ、これですわ。

なんで、こんな貴重な物を、こんな所に、無造作に置いてるんですの!

・・・お陰で簡単に見つかりましたが・・・なんかすっきりしませんわ!

そ、そう!こ、これで、もうこんな部屋に用はありませんわ。

速やかに、かつ、静かにおいとまいたします。

扉をそっと閉め、階下の確認もそこそこに急いで寮の外で駆け出ます。


やりました!

やりましたわ!

ふふふ、これであの成り上がりも大人しくなるでしょう。

おーほっほっほっ!

思わず、高笑いしてしまい、周囲を見回します。

・・・よく考えたら、まだ魔法を継続しているのですから、どんなに高笑いしても聞こえませんわね。

ちょっと夜更かしが過ぎましたが、今日は気持ちよく眠れそうですわ。


次回「遠征の日、実験の時間」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

次回タイトルの追加

うっすらを→うっすらと(指摘感謝)


※キンガロエの葉はチューリップの葉のような形だとお考えください。チューリップの葉だと少ししなやかさが足りないので扉の隙間に突っ込むには向かないと思いますが。そのヘンはご都合主義ということで・・・

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◆用語 ●幼少期人物一覧
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 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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