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ヒール最高  作者: 猫美
学院中等編
40/90

違和感の日

珍しく、夜中に目が覚めた。

・・・気がしたのだが、やっぱり寝てた。

ほら、夢の中で起きる夢とか・・・あんな感じ。

夢がうつつか、うつつが夢か。

夢の世界って気持ちいいよね。

と、うだうだしていると二度寝してしまうので、起きることにする。


着替え終わって・・・はて?

ティータの祝福はどこだ?

う~ん?

普段の自分なら・・・こう・・・着替えて、首飾りを外して・・・机の上に置くよな。

うん。昨日の晩も、机の上に置いた気がする。

・・・無いな。

落ちたかな?

机の下を探しても見当たらない。

ベッドの下にも無いな。

鎖が付いているから、落ちはしても、転がりはしないと思うんだが・・・

机の引き出しにも無いな。

はて?

本格的に見つからないぞ。


控えめなノックと共に、ミレイの控えめな呼びかけが聞こえてきた。

もう学院に行く時間なのか。

帰ってから探すことにしよう。

と、ドアを開ける。


「ミレイ、おはようございます」

「・・・うん。おはよう。

 ・・・今朝は、遅め。

 ・・・どうしたの?」

「ええ・・・」


なんだ?今の違和感。


「・・・ウィル?」


すごく些細な・・・

けど、日頃と違う何か・・・

ドアノブを見る。

ドア全体を見る。

そこからの部屋の景色を見る。

自分の行動を振り返る。

何かが・・・


そうか!

掛金かけがねを外す動作が無いんだ。

昨日、掛け忘れたのか?

無いとは言い切れないが・・・

ドアを閉める動作の一部になっているのに?


「・・・ウィル?」

「え?ああ・・・

 学院に行きましょうか」

「・・・どうしたの?」

「いえ・・・

 そうですね、ミレイには話しておきましょう。

 ・・・ティータの祝福を無くしました」

「・・・無くした・・・の?」

「無くしたかどうかは解りませんが、

 見つかりません」

「・・・今から、探す?」

「いえ。

 今は、学院に行きましょう」

「・・・解った」


取り敢えず、学院に居る間に可能性を考えるか。

ってことで、考えたのが以下の5点。


1.部屋のどこかにある。

 蹴っ飛ばしてタンスの下とか。


2.どこかで落とした。

 昨日、着替えの際に、外した気になっているが、実はどっかで落としている。

 いや、さすがにそこまでボケてはいないつもりだが・・・


3.動物に盗まれた。

 猫がくわえて走り去ったとか。

 窓は閉まってるから、カラスが持って行くってのはないか。


4.泥棒に入られた。

 ・・・ピンポイントに盗んでいくだろうか?

 学生の寮なんかじゃ、金目の物は期待出来ないだろうに。


5.ティータの祝福目当てで盗まれた。

 金目の物を目当てに、泥棒に入るよりは、可能性が高いか?


考えておいてなんだが、動物って線は無いだろうな。

どこかに落としたってのも可能性としては低いだろう。

酔っ払ってるならまだしも、しらふの状態で、着替えの際に気がつかないってことがあるだろうか?

さすがに気がつくと思うんだが・・・

それに、外した気がするしなぁ。

まぁ、疑ってると、だんだん自信が無くなってくるんだが・・・

2は無いとしよう。

と、なると、1、4、5・・・

と言うか、1か5だろうなぁ。


ま、取り敢えず、1に関しては手立ての当てがある。

そんな訳で、放課後待ち。


放課後になったので、いつもの練習場所へ赴く。

ルーパの校舎からだと、近いからいいが、ルーバシーになった今、この場所はちょっと遠いな。

とは言え、ルーバシーの校舎の近くに、ちょうどいい場所無いしな・・・

まぁ、それはそれ。


「今日の特訓はお休みにしたいのですが・・・」

「え?休みにしちゃうの?」

「うん、そうだよね。

 明日は3年の試験の日だもんね」


あれ?もうそんな日だっけ?

ま、いっか。

今はそれどころじゃないし。


「明日が試験の日だと言うことは、

 すっかり忘れていましたが、

 試験とは関係無いですよ」

「あれ?そうなの?」

「忘れてたんだ・・・

 やっぱウィルは大物だね」

「そんなことよりも、

 チノにお願いがあります」

「うん?何?」

「ちょっと僕の部屋まで来て欲しいのですが」

「え?いやだよ。

 だって、ウィルの部屋って、

 女の子の階じゃないか」

「大丈夫ですよ」

「いやだよ」

「チノ、ウィルの頼み事なんだから、

 聞いてあげれば?」

「そうですよ。

 聞いてあげましょうよ」

「う・・・

 ま、まぁ・・・

 ウィルの頼みだから、

 仕方ないけど・・・」

「ありがとうございます。

 助かります」

「ウィル、私も行っていい?」

「ラル・・・」


どうしたモンか・・・

あまり大っぴらにしたくないっちゃ、したくないし・・・


「取り敢えず、遠慮していただけると助かります」

「ふ~ん。秘密なんだ」

「そうですね・・・

 ちょっと・・・まだ話せそうにないです」

「チノから聞き出しちゃうかも知れないよ?」

「チノが喋ってしまうのは、

 僕には止めようがありません。

 ま、チノを信じていますが」

「ウィル・・・」

「まぁ、いいわ。

 ウィルなら、

 必要になったら話してくれるでしょうし」

「ありがとうございます」

「いいっていいって。

 じゃぁ、今日は解散よね。

 明日、試験の手伝いがんばりましょ」

「ええ。そうですね。

 また、明日」

「ラル、またね~」

「さ、行きましょうか」

「う、うん・・・

 ラルには話せないってことだけど、

 ボクにはいいの?」

「内緒にしておきたい所ですが、

 チノには協力してもらわないといけないので・・・」


道すがら話そうかとも思ったのだが、表で話すのもどうかと思ったので、部屋まで待ってもらった。


「さぁ、入ってください」

「うん。お邪魔します」


チノとミレイが入ってから、扉を閉める。

内緒の話ということで、チノが軽く緊張しているようだ。


「さて・・・

 早速で申し訳ないのですが・・・

 ティータの祝福を感じますか?」

「え?ティータの祝福って、

 あの首飾りだよね?」

「ええ、そうです」

「えっと・・・

 そう言えば、

 今日のウィルからは感じないね。

 どうしたの?」

「この部屋の中では感じますか?」

「え?

 ・・・う~ん。

 感じないみたい・・・だけど?」

「ふむ。やはり、そうですか・・・」


これで、部屋に無いことは確定か・・・

さて・・・困ったな。

どこかに落としたか、盗まれたか・・・

やっぱ、落としたって考えにくいんだよなぁ。

昨夜、外した気がするし・・・


「えっと・・・

 どういうこと?」

「無くしました」

「ええ!?

 急いで探さなきゃ!」

「ですから、

 チノに来てもらったのですが・・・

 ま、部屋に無いことが解っただけでも、

 ヨシとしましょうか」

「お、落ち着いてる場合じゃないよね?

 急いで巡視に言って、

 探してもらわなきゃ。

 大事なモノなんでしょ?」

「そうなんですがね・・・」


そこまでおおごとにしていいものかどうか・・・

盗まれた以外の可能性は無いだろうか?

いかんな。

もう、自分の中で、盗まれたと考えるルートに凝り固まってる。

他の可能性を考える頭が無いな。


まぁ、仕方ない・・・盗んだとして、犯人像だが・・・


本職(?)の泥棒が盗んだ・・・

ピンポイントにティータの祝福だけ盗むだろうか?

4階と言うことを考えれば、リスクだらけだ。

金目の物を盗むなら、商店から金を盗んだ方が楽だし、足も付きにくい。

可能性は低いんじゃないだろうか?


そもそも、どこでティータの祝福の情報を仕入れたか?という事になる。

そりゃ、当然、本職ともなれば、そういう情報網に顔が利くと考えられる。

そういう闇市場的な所で、情報が広まっている可能性が無い訳じゃ無い。

そうなると、物は闇市場に流れ、ゆくゆくはどこかの金持ちに買われる・・・というコースだろうか。

素人には到底手出しの出来る話じゃ無いな。


「ウィル?どうしたの?」

「ええ・・・

 ちょっと考え事を・・・」


顔見知りの犯行ってのはどうだろうか?

顔見知りなら、どこかで情報を入手する機会もあったかも知れない。

もし仮に、顔見知りの犯行だとして、盗んだ後、どうするだろうか?

売るだろうか?

顔見知りの場合、金目的とは考えにくいんじゃないだろうか?

持ち歩くだろうか?

さすがに、家にしまっておくか・・・

しかし、知り合いには見せたくなったりするんじゃないだろうか?


大人の顔見知りで、ティータの祝福を知っているのは・・・

サララケート先生くらいか?

う~ん・・・サララケート先生が、なんかの拍子に他の人に喋る・・・容易に想像が付くんだが・・・


子供の顔見知りだと、それこそ、チノくらいになってしまうんだが・・・

チノってことは無いな・・・


「ウィル、やっぱり巡視に知らせた方がいいよ」

「いえ、それは取り敢えずやめておきます」

「え?なんで?」

「まだ、考えがまとまっていないのですが、

 闇市場に流れたとしたら、

 巡視では難しいでしょう」

「え?そ、そうかも知れないけど・・・」

「父様に報告することにします。

 一応、国家の役人ですから・・・

 ツテもあるでしょう」

「そ、それならいいんだけど」

「犯人が近くにいる可能性もあります」

「え?」

「チノには申し訳ないのですが、

 今しばらく、僕に協力してください」

「それはいいけど・・・

 近くって、どういうこと?」

「顔見知りの犯行かも知れないってことです」

「ええ!?か、顔見知りって・・・

 ボクも知ってる人かも知れないってこと!?」

「ええ、可能性の話ですが・・・

 顔見知りの場合、

 持ち歩いてる場合も考えられます。

 そうなった場合、

 チノの感じ取る力が重要になります」

「う、うん。解った。

 気をつけてみるよ」

「お願いします」


さて・・・父様に報告か・・・どうしたモンかな。

久しぶりに気の進まない話だ。


次回「呪いのアイテムの日の次の日の???(???)」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

次回タイトルの追加

カッパー→ルーパ

シルバー→ルーバシー



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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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