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ヒール最高  作者: 猫美
学院初等編
37/90

特訓の日のその後のラルタイア(級友)

特訓の日の数日後。

ここ最近、チノが放課後になると消えてしまう。

翌日、聞いてみても、「お腹が痛かった」だの「宿題で図書室に行ってた」だのと嘘っぽい。

強気に問いただしても、はっきりと答えない。

私に秘密を作るとは、チノも偉くなったもんね。

これは、私に対する反乱とみたわ。

ぜ~ったいにあばいてやるんだから。


とは言え・・・全然手がかりがないのよね~。

こんな時、ウィルが居れば、何か手助けしてくれそうなモンなのに。

ウィルも見当たらない。

ウィルとミレイちゃんも秘密持ちよね~。

あの二人と放課後に一緒に帰った事なんか、数えるくらいしかないし・・・

って、寮の方向が逆だから仕方ないか。


それにしても、チノはどこに行ったのやら。

一旦、教室に戻ってきたんだけれど、ウィルはやっぱり居ないし・・・

教室を出ようと思っていたら、後ろから声を掛けられた。


「ちょっといいかな?」

「はい?」


振り返ると・・・先輩なんだろうなぁ。

私より、頭一つ分以上は大きそうな男子が居た。

ちょっと見上げる感じになる。


「この教室に、

 ウィル・ランカスターって子はいるかな?」

「ウィルですか・・・

 今日はもう帰ったみたいですが」

「そうですか。

 それは残念。

 ですが、

 この教室なのは間違いないのですね?」

「ええ・・・

 ウィルに何か用ですか?」

「ちょっと、話があったのですが」

「ああっ!?

 ア、アルフ会頭!

 ど、どうしてこんな所に!?」


あ゛~・・・えっと・・・確か精霊魔法のイマエテラだっけ。

精霊魔法の子って接点が少なすぎて、よく解らないんだけど・・・

彼女は、この人のこと知ってるみたいね。


「ええ、ちょっと。

 この教室のウィルに用事があったんですが、

 今は居ないみたいですので・・・」

「ウィルくんに用事なんですか?」

「ええ、まぁ・・・」


イマエテラに寄っていき、小声で尋ねる。


「ねぇねぇ、イマエテラ。

 この人のこと知ってるの?」

「ええっ!?

 知らないことにびっくりだよ。

 黄銅会、会頭のアルフ会頭だよ」

「黄銅会って~と・・・

 学生自治のあれ?」

「そうだよ。

 アルフ会頭・・・

 かっこいいよね~」


・・・くねくねし始めた。

ぁ、元に戻った。


「アルフ会頭!

 ウィルくんに用事なんですよね」

「ええ」

「じゃぁ、私にお任せください」

「どこに居るか知ってるんですか?」

「いえいえ。

 でも、ウチの子が探し出してくれます」

「ああ、君は精霊魔法使いなんですね」

「ええ。

 アルフ会頭のお役に立てるなら、

 喜んで探し出してみせましょう」


へ~・・・精霊魔法ってそんなこと、出来るんだ。


「ウチの子は、そういうのが得意なのです」

「それじゃぁ、お願いしようかな」

「はい。お任せください。

 ・・・シルバリー、シルバリー?」


彼女がシルバリーと呼びかけると、彼女の周りにそよ風が吹き始める。


「シルバリー・・・いい子ね。

 この教室で一緒だった、

 ウィルって子を探してきて欲しいの。

 解る?

 いい子ね。

 行って!」


そよ風が彼女を中心に、周囲に向かってそよぐ。

今のが精霊?


「少し、お待ちくださいね。

 今、においを追ってますから」


におい・・・なんだ・・・


「ありがとう。助かるよ」

「いえいえいえ。

 アルフ会頭のお役に立てるなら、

 喜んで、お手伝いします」


待つこと、しばし・・・


「シルバリー、いい子ね。

 見つけたのね!

 アルフ会頭!

 ウィルくんを見つけました!」

「案内してもらえるかな?」

「ええ、もちろんです。

 こっちです」


と、彼女が教室を出て行く。

どうしよう。

本当に"におい"で見つけられるんなら、彼女について行って、チノを探すお願いをしようかしら・・・

そうね。

お願いしてみよう。

ってことで、急いで追いかけることにした。


校舎を出て、校庭を横切る。


「イマエテラ、どこまで行くの?」

「私も解らないわよ。

 シルバリーがこっちだって言うんだもの」

「まぁ、精霊のことです。

 きっと、こっちに居るんでしょう」

「はい。もちろんです」

「だって・・・こっち・・・

 もう裏山の林しかありませんよ?」


いよいよ、裏山手前の林まで来てしまった。

本当にこっちにいるんだろうか?


「シルバリー・・・どこまで行くの?

 え?そっちなの?」

「どうしました?」

「えっと・・・林の中みたいです」

「そうですか。

 じゃぁ、お二人はここまででいいですよ。

 あとは私一人で大丈夫ですから」

「いえいえいえ。

 私もお供します!」

「私も、結果を知りたいので行きます」

「そうですか。

 まぁ、危険は無いとは思いますが、

 私の側を離れないようにしてくださいね」

「はい!」


ああ、イマエテラはすっごい嬉しそうだ。

もう、隙あらば、抱きつこうかって勢いだ。


林を少し奥に入ると、何かが木に当たる音が聞こえてくる。

結構鋭い・・・木を小突くような音だ。

音の方へ進んでいくと、話し声が聞こえてきた。

・・・この声・・・


「チノ!」

「え?え?

 ラル・・・

 どうしたの?」


チノが戸惑いながら、こちらを向く。

後ろにはウィルにミレイちゃんもいる。

どういうこと?


「イマエテラさん、

 どうもありがとう」

「いえいえいえ。

 アルフ会頭のお役に立てて、

 すっごくうれしいです」


アルフ先輩がウィルの方へ向かう。

チノを質問攻めにしたかったけど、アルフ先輩の用事も気になる。


「やぁ、ウィル。久しぶり」

「・・・アルフじゃないですか。

 どうしたんですか?

 こんなところまで」

「ウィルを探していたら、

 こんなところまで来ちゃったんですよ」

「ふむ。

 僕に用事ですか?」

「ええ。

 本当はもっと早くに来るつもりだったのですが、

 ウィルが入学の年だとすっかり忘れてました」

「忘れる程度の用事なんですから、

 いいんじゃないですか?」

「まぁ、そうおっしゃらずに。

 ウィル・・・

 次代の会頭になりませんか?」

「かいとう・・・ですか」

「ええー!」


イマエテラ・・・驚きすぎ。

ウィルがイマエテラに驚いちゃってるじゃない。

いや、私も驚いたけど。


「かいとうが何なのか解っていないのですが?」

「ああ、一年ですしね・・・

 仕方ないでしょう。

 黄銅会という自治会の代表です。

 まぁ、ルーパだと自治というほどの力はありませんが」

「ああ、生徒会長ですか」

「せいとかいちょう?

 生徒会長ですか・・・

 まぁ、そう言えなくもないですね」

「僕を指名するとして・・・

 選挙は無いんですか?」

「せんきょ・・・ですか」

「信任投票です。

 人気投票みたいなモンでしょうか」

「ああ・・・投票ですか。

 特に無いですね」

「え?無いんですか?」

「ええ」

「じゃぁ、会頭にふさわしくない人が、

 会頭に指名されたらどうするんですか」

「異議申し立てをして、

 何らかの形で実力を示して・・・

 って形ですかね」

「何らかの形って・・・」

「まぁ、大抵は仲間と組んで、

 団体戦でしょうか・・・」

「はぁ・・・

 まぁ、いいですけど。

 やりませんから」

「ええー!」


イマエテラ・・・びっくりするからやめて。


「なんでよ。

 アルフ会頭直々のご指名なのに!」

「そうですね。

 まぁ、直々はともかくとして、

 理由くらいは教えてもらえますかね」

「ミレイのことがあるからですよ」

「え?」

「ああ、なるほど。

 ・・・ミレイのことを持ち出されると、

 強く出られませんね」

「そんな訳で、

 折角ですが、

 お断りします。

 そもそも、

 一年を次期会頭に指名するってのは、

 どうなんですか」

「どうとは?」


二人は、まだまだ話の途中だったけど・・・アルフ先輩の用事も解ったし、私はチノの方へ振り向いた。


「さぁ、チノ!

 話してもらいましょうか?」

「ラル・・・

 なんか怖いよ?」

「ウィルたちと、

 ここで何してたの!

 さっさと白状なさい!」

「え・・・

 でも・・・

 内緒だし・・・」

「私にも内緒なの!」


ウィルやミレイちゃんとは一緒に秘密持ってるのに!

幼なじみの私は除け者なんだ・・・


「あ・・・いや・・・

 えっと・・・

 特訓してました」

「特訓?」

「あ・・・

 えっと・・・

 みんなには内緒だよ」

「秘密の特訓なんだ・・・

 秘密だから、

 私も除け者なんだ」

「あ・・・

 いや・・・そうじゃなくて・・・」


なんか、あったま来た。

チノもチノだけど、ウィルもミレイちゃんも、友達だと思ってたのに、私にも内緒だなんて!

振り返ると、まだアルフ先輩と話をしていたけど、どうにも言わないと我慢ならなかった。


「ウィル!」

「え?

 ああ、なんですか?」

「私も、明日から参加するから!」

「え?」

「参加するから!」

「ええ。それは構いませんが・・・

 えっと・・・

 チノテスタ・・・

 なんか怒らせましたか?」

「ボクに聞かないでよ」


なんか、余計に頭来た。

やっぱり、文句の一つや二つや三つ四つ言わないと・・・


「ん?

 ミレイ、なんですか?」


ミレイちゃんが、ウィルの袖を引っ張っているみたい。


「・・・ウィルと、チノテスタが、悪い」

「え?」

「・・・ラルタイア、かわいそう」


ミレイちゃんの言葉に・・・思わず涙が出そうになった。

ち、違うの。

ミレイちゃん、すっごくいい子なんだもの。


ウィルがこちらに向き直る。


「ラルタイア、ごめん」

「うん」

「後で詳しく話す」

「絶対だからね」


取り敢えず、今はこれで満足しておく。

ミレイちゃんに感謝するんだぞ。


「ラルタイア、ラルタイア・・・」


イマエテラが小声で話しかけてきた。

なんだろう?


「なに?」

「ウィルくんって・・・

 アルフ会頭と知り合いよね」

「そうみたいね」

「じゃぁ、ウィルくんと一緒にいたら、

 アルフ会頭と仲良くできるかしら?」

「ん~・・・どうだろ?

 結局、ウィルは会頭を断ったみたいだし」

「あ・・・

 そっか。

 そうだよね」

「でも、だいぶ親しそうだったよ?」

「そう思う!思うよね!

 やっぱり、ウィルくんと仲良くなっておこうかしら」


だ、だいぶ動機がよこしまです・・・

接点が少なかったから、全然解らなかったけど・・・中々、味のある子ね。

・・・ウィル・・・がんばれ。

と、心の中で応援をしておくのであった。


次回「呪いのアイテムの日」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

次回タイトルの追加

カッパー→ルーパ


唐突ですが、次回から、10歳~の中等編。


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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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