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ヒール最高  作者: 猫美
学院初等編
35/90

先生の日のコニル(先輩)

休み時間にのんびりとしていると、ルーパの子が訪ねてきたという。

おやおや。ラルタイアちゃんじゃないですか。


「やほー、ラルタイアちゃん。

 そんなに急いでどうしたの?」

「コニル先輩、レアルス先輩はどこですか?」

「う~ん・・・お手洗いかなぁ?

 レアルスに用事なの?」

「ああ、いえ。コニル先輩にも。

 えっと、ウィルが今日大丈夫だって」

「おお!?

 ウィルって~と、

 レアルスが言ってたヒールの子だね。

 そっか~。

 今日、大丈夫なのかー。

 やったね」

「はい。それで、放課後、寮に連れて行きますんで」

「お~お~。

 それは素晴らしい知らせよ、ラルタイアちゃん。

 解った。

 レアルスには伝えとく」

「はい。お願いします。

 じゃ、時間もないんで、戻ります」

「わざわざ、ありがとね~」


嵐のように去って行ったね。

元気っぷりがレアルスと被るわ。

そりゃ、仲良くなるわ。


戻ってきたレアルスに伝えたら、大喜びだった。

うんうん。解る、解るよ。

私もヒールの腕前が上がるかと思うと、嬉しくなっちゃうからね。

もう、二人して放課後が楽しみで楽しみで、その日は授業に身が入らなかった。


授業が終わってから、二人して走るようにして帰って・・・件のウィルくんが来てないことに、二人してがっかりしたりもした。

なんでも、一旦、寮に帰ってから来るとのこと。

そうだよね。

冷静に考えれば、ルーパだもんね。

時間が余っちゃうよね。


レアルスはいつも以上に落ち着きが無く、談話室でそわそわしながら待ってた。

私は、お客様のためにお茶の準備。


そんなことをしつつ、しばし・・・談話室の方から声が聞こえてきた。


「レアルス先輩、

 ウィルを連れてきましたよ!」

「おぉ!来たね!

 ささ、座って座って」


ふふ・・・レアルスにしっぽがついていたら、激しく振られているんじゃないかな?


「こんにちは。

 キミがウィルくんよね?

 ようこそ」

「ぁ、はい。

 こんにちは」


談話室には・・・まぁ、当然なのだが、男の子が座っていた。


こう言ってはなんだが・・・ごく普通の男の子だ。

ルーパの1年ってことだから、かわいらしくあるのだけれど。

受け答えを聞いている限りは、ルーパらしからぬと言うか・・・

なんとも不思議な・・・普通なんだけど、忘れることの出来ない感じの男の子。


彼の隣では、ちょこんとお人形さんの様で・・・その髪の毛に特徴のある女の子が座っていた。

こちらはこちらで、その黒髪の所為で普通からほど遠い感じの女の子。


男の子の方の特徴を伝えるのは難しいけど・・・なるほど、この二人なら特徴的すぎる。

レアルスが言っていたのも納得。


で、この男の子が、ヒールの先生?

実際の魔法を見ていないので、どうにも解らないわ。

だって、ルーパの1年だよ?

まぁ、あのレアルスが嘘をつくとは思えないし・・・


「先生!私たちに、ヒールを教えて!」

「取り敢えず・・・その先生ってのやめませんか?」

「そんなことより、ヒールを教えて欲しいの」

「そんなこと・・・

 まぁ、いいですけど。

 ヒールですか?」

「ヒールというか・・・ヒールの前後を含めて?」

「アーシラリル様にヒールしたとき、

 その前に色々やってたじゃない?

 それを詳しく教えて!」


レアルスがものすごく熱心で、ちょっとおかしい。

もう・・・普段の授業も、これくらい熱心ならいいのに。


「じゃぁ、ヒールの手順ですが・・・

 授業を受けていないので、我が家流ですよ?」

「そっか。授業免除だもんね。

 我が家流ってことは、

 先生の家独自なの?」

「いえ・・・独自なのかどうかは解りませんが・・・

 先生ってのは、まだ続くんですかね?」

「まぁまぁ」

「はぁ・・・

 ヒールをするにしても、

 傷口の状態を確認しなければなりません。

 リサーチという呪文で、

 相手の状態を確認します」

「いきなりヒールでいいじゃない」


まぁ、そうよね。

わざわざ時間を掛けてヒールする必要も無いし・・・


「場合によりけりですね。

 大ケガで、一刻を争う事態なら、

 ヒールで一命を取り留めることが優先です。

 それでも、全快するのではなく、

 一部、傷を残した方がいい場合もあります」

「なんでよ。

 治った方がいいじゃない」


そうそう。

それはそう思う。

わざと全快しないなんて・・・わざわざどうして?


「例えば、傷口に・・・

 壊れた武器の破片が入ったまま、

 ヒールをして、

 傷口を完全にふさいだら、

 どうなりますか?」

「え?」


破片が残ったまま・・・になるのかしら・・・


「武器の破片なら、まだいいかも知れません。

 毒物をまき散らす種が入ったままだったら?

 虫が卵を植え付けていたら?」


うぇ・・・卵はいやだなぁ・・・

でも、そうよね。

そういう場合も、十分考えられるわ。


「ヒールで消えるんじゃないの?」

「消えるかも知れません。

 消えないかも知れません。

 僕は、消えないと考えています」

「だって身体を癒やすんだよ」

「身体を癒やすことと、

 異物を消すのは別の事です」


そう・・・よね。

うん。異物は消えない。

消えずに、身体に残ったままになるわ。

・・・たぶん。

・・・確認したくないけど。


「そうよね。

 治癒院での当番の時、

 傷口が汚れている人には、

 水で洗ってから治療をするように、

 って言われてるしね」

「ヒールをするにしても、

 原因を取り除かないと、

 再び弱ってしまいますからね」

「なるほど。

 その原因や異物を発見する為に、

 リサーチを使うのね」

「そうです。

 僕のリサーチは、

 異常のある場所を色で知らせてくれるのですが、

 他の人も同じなのかは解りません」

「その辺は、練習あるのみね」


とは言え、治癒院での演習の場合、そんなケガの人って来るのかしら?

ううん。例え、来なくても練習と思って、リサーチを使わなきゃ。


「そうですね。

 リサーチで異常や異物を発見したら、

 それを取り除きます。

 手で取り除いてもいいですし、

 呪文で取り除いても構いません。

 僕の場合は、

 リリーブという呪文を使うことがあります」

「大きな破片なんかは、

 手で取り除いた方が早いということかしら?」

「そうです」

「リリーブという呪文は、

 どういう呪文なの?」

「そうですね・・・

 ぜん動・・・

 筋肉の動きで、

 異物を押し出すというか・・・

 移動させる感じなのですが」

「筋肉の動きで?」

「ええ。

 こう・・・腕とかが、

 ピクっと動くのを連続で・・・

 異物を移動させる感じです」


えっと・・・なんとなくは解るんだけど・・・

いまいち感じがつかめないというか・・・


「先生の呪文を教えてください!」

「・・・先生ってまだ続くんですね」

「ぜひ呪文を!」

「えっと・・・

 僕の場合ですが、

 我、彼の者に入りし異物を押し出す力を与えん。リリーブ・・・

 と、唱えることで発動します」

「異物を押し出す・・・」

「この辺は、皆さんのイメージ・・・

 皆さんの感じるままに唱えるしか無いと思いますが」

「そうよね」

「で、でも・・・

 大いに参考になったわ」


それにしても、この子はすごいわね。

まだルーパなのに、ヒールによる治療を完璧にこなしている・・・


「ウィルくん、今日はありがとうね。

 これもお母様の教えが良かったからかしら?

 さぞかし、有名な治療師なんでしょうね」

「え・・・えっと・・・

 どうでしょう。

 家では極々普通の母親でしたから・・・」

「そうなの?勿体ないわ」

「そうですかね・・・

 そうですね。

 母様が認められるというのは、

 嬉しいですね」


あ、やっとなんか・・・子供らしい笑顔を見た気がする。

なんだ。こんないい顔で笑えるじゃない。



その日、新しい手法を学んで興奮しながら眠りについた。

後日、リリーブを使ってみたら、とんでもなく心力を必要とし・・・押し出す間、心力を込め続ける必要があった・・・彼の子供らしさなんか見せかけだったと思い知らされた。


次回「特訓の日」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

こんにちわ→こんにちは(指摘感謝)

次回タイトルの追加

カッパー→ルーパ

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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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