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ヒール最高  作者: 猫美
学院初等編
34/90

先生の日

社会人の頃は、11連休なんてのはあっという間だった。

あれよあれよという間に終わっている物だった。

大人の自分に子供の自分・・・二つの時間がくっついている自分は、同じように・・・もしくは更に短く感じるんじゃないかと思っていた。

子供の自分は、子供なりの時間感覚になるらしい。

時間感覚は心と密接に関係しているんだと思ったんだが・・・どうやら身体・・・むしろ、細胞との関係の方が勝るらしい。

つまり・・・11連休って長いんだな・・・と実感してきた所だ。


そんなこんなで、寮に帰ってきた。

長いお休みをそれなりに有意義に使えたと思う、

紙すき、ミレイの魔法、トランスファー(MP譲渡)の練習。


ミレイの歌は、短縮魔法で間違いないだろう。

音階が短縮に寄与しているのも、ほぼ間違いない。

とは言え、あまり厳密な音階でも無さそうだ。

上がり下がりが重要なのかな?と当たりを付けている。

歌の後に発動用のキーワードを付与するだけだ。

最初は、「かる、やーる」と唱えてもらったが、「やーる」だけで発動することが解った。

歌の2番以降が、何の魔法なのかは不明だ。

追々実験していくとして、まずはMP増やさないとな。

実は2番から、かなり上位の魔法で、一発でMP不足・・・ってことになっても困るし。


トランスファーは、接触が重要だと解った。

片手より両手・・・それでも、まだ効率が悪い。

3割~5割くらい譲渡に失敗している感じがする。

とは言え、両手以上はどうしろっていうんだ?

と、行き詰まりを感じているが、こつこつ実験していこう。


なんせ、休み明けで久しぶりの学院だ。

夏休みなんかと違うので、日焼けして見た目が変わる・・・なんて事も無い。

ま、授業の内容も、急激に変わるなんて事も無いけど。


ラルタイアがにこやかに話しかけてきた。

いや・・・仏頂面でも困るのだが・・・こうも、にこやかだと怪しさの方が上回る。


「ねぇ、ウィル。

 今日、学院が終わったらいい?」

「・・・何の話ですか?」

「ほら、前に約束したじゃない」

「ああ、ラルタイアの寮の先輩と、

 お話をするってヤツですかね」

「そう、それ。

 今日、先輩の都合がいいんだって」

「また急な話ですね」

「だめかな?」


・・・まぁ、子供なので、急ぐような用事は一切無いんだが・・・

放課後は、チノテスタも交えて、特訓でも・・・と思ってたんだがなぁ。

ま、チノテスタには申し訳ないが、のっけから休みってことで・・・


「まぁ、いいですが」

「ほんと、ありがとー。

 じゃ、ちょっと先輩に伝えてくるね」


ひとっ走りと行ってしまった。

ラルタイアは元気だな。

なんで、魔法学科なんだ?


「・・・ウィル。ボク、どうしよう?」

「そうですね・・・」


どうしたモンかな?

連れて行ってもいいんだが、あまり連れ回して、その黒髪を見せびらかすのもどうかと思うし・・・

とは言え、一人で帰らせるのも・・・なんとなく心配だしな。


「ミレイはどうしたいですか?」

「・・・ついていって、いい?」

「ええ、構いませんが・・・

 その・・・

 ミレイの髪を見せて歩くのは、

 ミレイに取って良いことなのかな?

 って判断が付かなくて・・・」

「・・・大丈夫」

「え?大丈夫?」

「・・・うん。リリー奥様が、帽子、くれた」


嬉しそうに、はにかむなぁ。

母様が帽子・・・こっちに帰ってくる時の箱は、帽子ケースだったのか。


「じゃぁ、一旦、寮に帰ってから、

 一緒に出かけましょうか」

「・・・うん」


戻ってきたラルタイアと、落ち合う約束をし、チノテスタに詫びを入れ、一旦、寮に帰る。

普段は、帰るまでに、あれやこれやと雑多をこなし、帰ってから出かけるなんてことは、ほとんど無かった。

そんな訳で、帰ってから出かけるなんて、なんか新鮮な気分だ。


ミレイが麦わら帽子を被って出てきた。

"つば"は、それほど大きくもなく、かと言って小さくもなく・・・15cmくらいか?

ミレイの髪を隠すには無難なサイズじゃないだろうか?

黒髪に麦わら帽子・・・なんとも懐かしい感じの情景が広がっていた。


「・・・ウィル?」

「じゃぁ、行きましょうか」

「・・・うん」

「帽子、似合ってますよ」

「・・・うん。ありがと」


なんか、和むな~。


街角でラルタイアと合流し、ラルタイアの案内で第5区「太陽と星の寮」の前にやってきた。

どうにも不穏な・・・って、女子寮じゃないか。


「なぁ、ラルタイア」

「なにかな~?」

「ここ、女子寮だよな」

「そうよ」

「帰ってもいいかな?」

「約束したじゃない」

「帰ってもいいかな?」

「大丈夫、大丈夫」

「大丈夫じゃないだろ!

 女子寮に男子が入っていいのか?」

「談話室に入る分には問題無いから」


後ろから押すようにして連れ込まれる。

まぁ、ここまで来ていた時点で、約束を反故にして帰るってのも無いんだが。

・・・談話室ってのも妥協点だな。

これが個人の部屋だったら帰ってるな。


「レアルス先輩、

 ウィルを連れてきましたよ!」

「おぉ!来たね!

 ささ、座って座って」


これまた、元気な先輩だな。

ラルタイアと息が合いそうだ。


「今、コニルが飲み物を持ってくるからね」

「はぁ、お構いなく」

「ウィルくんだ。いらっしゃい」


インティーだったよな。

そうか・・・ラルタイアと同じ寮だったのか。


「えっと・・・お邪魔してます」

「女子寮なのに!」

「・・・帰りますよ?」

「ごめーん。

 冗談だから、帰らないでー。

 先輩に怒られちゃう」


あれ?インティーって、こんな性格なのか?

なんか、学院と感じが違うような・・・

まぁ、女子寮っていう自分の城だから、地が出てるのかもな。


「こんにちは。

 キミがウィルくんよね?

 ようこそ」

「ぁ、はい。

 こんにちは」


お茶を差し出される。

ほんのり暖かい。

熱々のお茶では飲みにくいし、ありがたい。

お茶を持ってきてくれた・・・ということは、この人がコニル先輩なのだろう。


「コニル、遅い」

「はい、無茶を言わない」


なるほど・・・この二人に頼まれたら、ちょっと断りにくそうな勢いがあるな。


「それで・・・

 お話があるとのことですが?」

「そうそう、そうなのよ。先生!」


レアルス先輩が身を乗り出して、手をつかんでくる。

ガシッって音が聞こえてきそうな勢いだ。

っていうか、先生!?


「え?先生?」

「はい、そこ。落ち着こう」


コニル先輩のツッコミが入る。

・・・良いコンビだな、この二人。


「先生!私たちに、ヒールを教えて!」

「取り敢えず・・・その先生ってのやめませんか?」

「そんなことより、ヒールを教えて欲しいの」

「そんなこと・・・

 まぁ、いいですけど。

 ヒールですか?」

「ヒールというか・・・ヒールの前後を含めて?」

「アーシラリル様にヒールしたとき、

 その前に色々やってたじゃない?

 それを詳しく教えて!」


アーシラリル・・・様ぁ?

ヒールの試験やった時の人だよな。

様付けされるほどの人気者だったのか・・・


それはそれ・・・

母様から教えられたということにして、リサーチ、リリーブ、ヒールの流れを教えた。

まぁ、母様とヒール談義なんかしたことが無いので、神聖魔法の常識ってヤツを知らないんだが・・・

本来であれば、授業でその辺を習うんだろうが、すっ飛ばしてるからなぁ。


どうも、いきなりヒールというのが一般的のようだ。

精々が傷口を洗う程度。

異物を含んだままヒールすると、身体に埋まっちゃうんじゃないか?

まぁ、説明をしたら解ってくれたのでヨシとする。

残念ながら、練習対象が居ないので、練習・・・と言う訳にはいかないが、約束は果たしたぞ。


談話室を占拠していたので、女子寮の住人が通りかかるたびに、興味深そうに覗いて・・・神聖魔法の講義と知ると立ち去る・・・を繰り返した。

実に居心地が悪い。

一通り話が終わったので、ラルタイアに貸しということにして、早々に立ち去った。


「すっかり暗くなってしまいましたね」

「・・・そうだね」

「ミレイは、退屈じゃありませんでしたか?」

「・・・ううん。大丈夫」

「あくびしてましたよね」

「・・・う・・・少し、退屈・・・だったかも」

「ふふ、ま、仕方ないでしょう。

 さ、帰りますか」

「・・・うん」


次回「先生の日のコニル(先輩)」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

こんにちわ→こんにちは(指摘感謝)

次回タイトルの追加

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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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