歌の日のミレイ(家事手伝い見習い)
今回は主人公視点無しです。
「・・・ノイナさん。居間の掃除、終わったの」
「おや。もうですか?
思ったより早かったですね」
ノイナさんが、居間を、確認する。
「大丈夫ですね。
十分に綺麗に掃除出来ている様です」
「・・・うん。よかった」
「まだ、少し時間があるようですから、
廊下の窓掃除をお願いします」
「・・・うん、解った」
窓掃除は、けっこう、好き。
拭いた所が、きれいに、透き通る感じが、好き。
・・・でも、踏み台が無いと、届かないから、きらい。
布を濡らして・・・ぎゅ、ってして・・・
ぎゅ・・・ってのが苦手。
力が無くて、びしゃびしゃ。
乾いた布で、きゅきゅ、ってして・・・
・・・うん。きれい。
「・・・♪もるで、のすにと、へんげるたい」
調子を、合わせて、濡れた布で、拭く。
「♪じおに、かんやか、いでいやし~」
更に、乾いた布で・・・
・・・あれ?
今、なんか・・・窓が白かった?
濡れた布で拭く・・・けど、なんともない。
乾いた布で拭く・・・うん。きれい。
なんだったんだろう?
「♪もるで、のすにと、へんげるたい」
調子を合わせて、濡れた布で拭く。
窓がうっすらと白い。
・・・何?なんで、拭いたのに、白くなるの?
じ~っと見ていたら、じわじわっと戻っていった。
もう一回、濡れた布で拭く・・・何も起こらない。
・・・何だろう?えっと・・・ウィルに聞いてみよう。
2階の、ウィルの部屋に向かう。
扉を軽く、叩く。
「はい?」
「・・・ウィル、入って、いい?」
「ええ。いいですよ」
よかった。
扉を開けて、部屋に入る。
「どうしました?」
「・・・うん。
えっと・・・窓が、白くなるの」
「よく、解らないですね」
「・・・ごめんね。
ちょっと・・・うまく、言えない」
「実際に見せて貰った方が早いですかね」
「・・・う、うん。
・・・そうなんだけど・・・」
「どうしました?」
「・・・ちょっと、恥ずかしい」
「は?
恥ずかしい・・・ですか」
「・・・うん」
「じゃぁ、やめておきますか?」
「・・・ううん。やっぱり、見て欲しい」
ウィルと一緒に、1階の、窓の所に行く。
・・・やっぱり、恥ずかしい。
何も言わずに、じっと見てる。
「う・・・♪もるで、のすにと、へんげるたい」
何とか、歌いながら、濡れた布で拭いた。
すっごい・・・恥ずかしい。
顔が何か熱い。
「冷たくなっていますね」
ウィルが、窓を触りながら言う。
冷たくなってる・・・の?
冷たいと、白くなるの?
「ふむ・・・
じゃぁ、今度は、僕の手を握りながら、
歌って貰えますか?」
「・・・え?」
・・・そ、それは、恥ずかしい。
「や・・・は、恥ずかしい」
「まぁ、そう言わずに」
あう・・・
そっと手を差し出したら、軽く握られて・・・
こ、これで歌うの?
・・・恥ずかしい。
「さぁ、恥ずかしがらずに」
「あう・・・♪もるで、のすにと、へんげるたい」
「・・・気にせず、続けて」
・・・まだ、歌うの?
「ぁぅ・・・♪じおに、かんやか、いでいやし~、
とりと、ふういき、かすもい~ど、
てとら、かりこり、し~りむまい」
「ふむ。・・・もう一回、お願いしていいですか?」
「・・・え?」
・・・ウィルが、いじわる・・・だ。
「さぁ、さぁ」
「う゛~・・・
♪もるで、のすにと、へんげるたい、
じおに、かんやか、いでいやし~、
とりと、ふういき、かすもい~ど、
てとら、かりこり、し~りむまい」
「温度が上下していますね」
「・・・どういう、こと?」
「歌に合わせて、冷気が漏れ出すと言うか・・・そうですね。
魔法の力が漏れ出している感じでしょうか」
「・・・魔法・・・なの?」
「もるで、のすにと、へんげるたい・・・で、一旦冷たくなります。
で、一旦、元に戻るのですが、
じおに、かんやか、いでいやし、で、再度、冷たくなります」
「・・・えっと?」
「魔法の下準備が終わってる感じでしょうか?
あとは切っ掛けがあれば、発動すると思うのですが・・・」
「・・・切っ掛け」
「ま、後で実験してみましょう」
「・・・解った」
後で、枯れ森で試す・・・ってことかな。
「仕事の途中ですよね?
手伝いましょうか?」
「・・・ううん。ありがと。
でも、ボクの、仕事」
「そうですね。
ミレイの仕事ですね。
解りました。
仕事が終わったら呼んでください」
「・・・うん」
まずは・・・ボクの、仕事しないと。
濡れた布の時、歌うと、白くなって・・・掃除にならない?
う~ん・・・気をつけよう。
掃除が終わったので、ウィルと枯れ森に来た。
・・・枯れ森じゃないのに・・・枯れ森?
「・・・ウィル?
もう、ヒールする、木・・・ほとんど、ないよ?」
「そうですね。
かなりヒールし尽くしましたかね」
「・・・もっと、奥・・・行く?」
「いや、やめておきましょう。
あまり遠くに行くと、帰りが遅くなりますし。
まぁ、いいんです。
今日は、ミレイの歌の確認です」
「う・・・やっぱり、また、歌うの?」
「そうですね。
歌って貰わないと、
確認が出来ませんから」
「あう・・・」
今日の、ウィルは・・・いじわる・・・だ。
「まずは歌わずに、
もるで、のすにと、へんげるたい、
と言ってみましょうか」
「・・・言うだけ?」
「ええ、そうです。
さ、どうぞ」
と、言って、ウィルが手を握ってきた。
あう・・・これは、これで、恥ずかしい・・・
「・・・もるで、のすにと、へんげるたい」
・・・ウィルが、じっと、手を見ながら考えてる。
・・・えっと・・・どうしよう。
「やはり、歌になってないと、
駄目なようですね。
音階が必要なんでしょうか?」
「・・・歌じゃないと、だめ・・・なの?」
「そうみたいです。
じゃぁ、今度は、歌の後に、
かる、もるで、やーる、を加えてみましょう」
「・・・うん。解った
♪もるで、のすにと、へんげるたい、かる、もるで、やーる」
「何か変わった感じはありましたか?」
「・・・ううん。よく、分かんない」
「ま、一発で成功するとも思ってませんでしたがね・・・
そうですね・・・
手のひらを向かい合わせにして、
その中に雪玉を想像してやってみましょう」
「・・・うん。
♪もるで、のすにと、へんげるたい、かる、もるで、やーる」
・・・難しい。
気持ちよく、歌えない・・・
「初級の魔法だと思うんですが・・・」
「・・・ウィル」
「どうしました?」
「・・・歌いにくい」
「え?」
「・・・かる、もるで、やーる・・・が、歌いにくい」
「リズムが崩れるからですかね。
う~む。
もるでを取り除いてみますかね」
「・・・かる、やーる?
・・・うん。やってみる」
・・・雪玉を想像して・・・
「♪もるで、のすにと、へんげるたい、かる、やーる!」
・・・手のひら、から、何かが、出ていくような・・・
・・・熱いみたいで、冷たい。
「おぉ!?」
すごい・・・雪玉が・・・小石から、こぶし、くらいに・・・なって・・・
・・・落ちた。
熟れた、赤の実・・・みたいな、音が・・・聞こえてきた。
木の根に、ぶつかって・・・
そしたら、周囲が・・・両手で、囲い込むくらいの、大きさが、真っ白に、なっちゃった。
え?・・・どうして?
「うわ。危なかった。
そこまで冷たくなってるのか。
危うく、手で受け止めるところだった」
「・・・落ちちゃった・・・ね」
「そんなことよりも、大成功じゃないですか。
やりましたね、ミレイ」
「・・・え?ぅ、うん」
「前みたいに、気持ち悪くなっていませんか?
大丈夫ですか?」
「・・・ぅ、うん。大丈夫」
「もう一回くらい、いけそうですか?」
「えっと・・・ごめん。わかんない」
「そうですね・・・
今度は、さっきより小さな雪玉を想像してやってみましょう」
「・・・うん。解った」
・・・小石くらい・・・小石・・・小石。
「♪もるで、のすにと、へんげるたい、かる、やーる!」
手のひらから、何かが、出ていく、感じ・・・
これが、魔法の腕・・・なのかな?
今度は、小石・・・思ってたより、大きいけど・・・小石くらいで、落ちていった。
さっきより、軽い音で、雪玉が、壊れる。
手のひらくらいが、白くなった。
「ミレイ、大丈夫ですか?」
「・・・うん。大丈夫」
「念のため、リサーチ」
ウィルが、魔法を、使って・・・ボクを、見る・・・
「大丈夫とは言え、かなり減ってるみたいですね。
トランスファーの実験もかねて、やっておきますか」
「・・・ボク、どうしたら、いい?」
「じゃぁ、手を出してください」
「・・・こう?」
「はい・・・じゃぁ、楽にしてください」
ウィルが、手を取って・・・ちょっと、恥ずかしい。
・・・呪文を、唱える。
「我、彼の者に気力の源、
立ち上がる力を分け与えん。
トランスファー」
軽く、触れられたところが・・・暖かい。
じんわりじんわり・・・広がっていく・・・暖かさ。
目を、つぶると・・・頭の先まで、じんわりじんわり・・・広がっていく。
暖かくて・・・のどが渇いたときの、水みたいに・・・すごく、すごく、次が欲しい。
手を離された・・・ので、目を開けた。
「どうですか?
手を触れた方が、効果が高いみたいですが」
「・・・うん。暖かかった」
「暖かいですか・・・」
「・・・うん。
暖かくて・・・気持ちいい」
「リサーチで見る限り、
前よりは効率良さそうですが・・・
まだまだですね。
片手より両手?
触れる場所の変更?」
「・・・ウィル?」
「ああ、どうしました?」
「・・・ううん。これから、どうするの?」
「そうですね・・・
取り敢えず、あと一回だけ、
魔法を使ってから帰りましょうか」
「・・・ボク?」
「ええ。ミレイの魔法です」
「・・・ま、また、歌うの?」
「そうなりますね」
「・・・ぅ、ちょっと、恥ずかしい」
「まぁ、そうおっしゃらずに。
折角の魔法ですから、慣れておきましょう」
「・・・う、うん」
魔法のこと、になると、ウィルが、いじわる・・・だ。
次回「先生の日」
Twitter @nekomihonpo
変更箇所
次回タイトルの追加
熟れた。→熟れた、
どうした、→どうしたら、
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