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ヒール最高  作者: 猫美
学院初等編
31/90

霜降りの日のチノテスタ(エルフの子?)

学院に来てから、時たま、なんとも言えない不思議な感じがする。

なんだろう?って思って、周りを見るんだけど、よく解らない。

なんか清らかな感じがして、心地よい。

ラルに聞いたけど、そんな感じしないって言われた。

う~ん・・・気のせいとは思えないんだけど・・・


授業も終わったので、帰る前に学院の散歩でも・・・と思っていたら、またあの感じがした。

絶対、気のせいじゃない。

・・・と思うんだけど。

目をつぶって、感じる方向を調べる。

目を開けて確認する。

・・・えっと・・・男女の二人組から感じるんだけど?

二人が移動すると、不思議な感じも移動する。

なんだろう?

なんで、あの二人から感じるんだろう?


なんとなく、気になって追いかけていたら、校庭に出た。

どこに行くんだろう?

その先には裏山しか無いのに・・・


薄暗い雑木林に入っていく。

一体、何の用があって、こんな所に?

不思議な感じも気になったけど、何をするのかも気になった。

悪い悪いと思いつつも、後を付け、覗き込んでみる。


「かる、もるで、やーる!」


声の聞こえてきた方を覗き込むと、女の子が呪文?を唱えてた。

こんな所で魔法の練習?

なんでこんな寂しい所で?


「かる、もるで、やーる!」


再度、声が聞こえてきた。

男の子の背中側から覗いているんだけど、影になって、どんな呪文なのか見えないな。


女の子が崩れるように座り込む。

男の子の慌てた声が聞こえてくる。


「ミレイ、ミレイ!」


何があったんだろう?

大人を呼んできた方がいいのかな?

どうしよう、どうしよう。


「リサーチ」


え?

ボクがおろおろしてる間に、男の子が何かしている。


「ヒール」


ヒール?

じゃぁ、あの男の子は神聖魔法使い?


「我、彼の者に気力の源、立ち上がる力を分け与えん。トランスファー」


どうやら、ヒールではダメだったみたいだ。

ここからだと、ほんと、影になって様子がわからない。

ついには、男の子も座り込んじゃった。

二人とも大丈夫かな?


と、思っていたら、女の子と目があった。


「・・・だれ?」


男の子が振り返る。


「ご、ごめん。

 ボクはチノテスタ。

 覗くつもりはなかったんだ」

「はぁ。

 そうですか・・・

 そうですね・・・

 えっと・・・いつから覗いてたんです?」

「ご、ごめん。

 女の子が呪文を唱えてるあたり」

「そうですか。

 ま、見られてしまった物はいかんともしがたいですし、

 しょうがないんじゃないですかね」


う~ん?えっと・・・怒られてない?

そうだ。それよりも、二人とも大丈夫なのかな?


「二人とも、大丈夫?」

「え?

 ああ・・・大丈夫ですよ。

 あと少し座っていれば、治ります」

「・・・うん。大丈夫」

「そっか~、よかった~」

「ふむ。

 心配してくださって、

 ありがとうございます」

「ううん。

 ほんと、ごめんね。

 覗いちゃって」

「いいえ。

 それは、大丈夫ですよ。

 ま、他言無用ってことで。

 ところで、エルフの子ですよね?

 珍しいですね」

「ぇ・・・あ・・・うん。

 ちょっと違うんだ」


コウロイドだってこと、気がついてないのかな?


「ボク、コウロイドだから・・・」

「コウロイド・・・ですか」


あれ?何か思ってたのと反応が違うな。


「すみません。

 コウロイドって何ですか?」

「え?

 えっと・・・混血ってこと」

「ああ、なるほど。

 ハーフエルフってことですか」

「はーふ?」

「ああ、いえ。

 お気になさらずに。

 そうですか、混血なんですね。

 それで・・・お母様がエルフなんですか?」

「え?」


あれ?普通に会話してくれる?

普通、コウロイドってだけで、嫌な目で見てくるのに。

この子は違うんだ。


「ああ、家庭の事情に突っ込むのは、

 失礼だったかも知れませんね」

「ううん。いいよ。

 えっとね。

 ウチは父さんがエルフなんだ」

「へ~。

 じゃぁ、よっぽどお母様が、

 美人さんだったんですね」

「え?

 あはは、そうなのかな。

 うん。

 そうなのかも」


こんなこと言われたの・・・初めてだ。


「よっと」


男の子が、勢いよく立ち上がり、おしりの汚れを打ち払う。


「・・・もう、大丈夫?」

「ええ、大丈夫です。

 ミレイ、魔法の腕は感じましたか?」

「・・・よく、わかんない」

「そうですか・・・」

「・・・でも、なんか不思議。

 ・・・通り道みたい」

「何か感じ取った・・・ってことですかね」

「・・・そうだと、いいね」

「さて・・・」


男の子が、こちらへと振り返る。


「僕の名前はウィル。

 この子はミレイ」

「え?あ、うん」

「・・・うん」

「じゃ、チノテスタ・・・

 今日のことは内緒にしてください」

「ぅ、うん。

 それはいいんだけど・・・

 どうして?」

「う~ん・・・

 秘密の特訓って所です。

 まぁ、実験の意味合いの方が強いんですが」


どうして秘密なの?・・・と聞きたかったけど、思いとどまった。

この秘密と引き替えにボクも参加したい。

特訓をしたい!って思ったんだ。


「内緒にするのはいいけど、

 その・・・

 ボク、また来てもいい?」

「え?

 まぁ、チノテスタにはすでに知られていますから、

 別に構いませんが・・・」

「ほんと?

 やったー。

 ありがとぅ。

 ウィル、ミレイ!

 よろしくね」

「・・・うん」

「逆に、なんでここに来たいんですか?」

「うん。ボクも秘密の特訓をしたいんだ」

「チノテスタも魔法の特訓ですか・・・」

「ううん。

 そうじゃないんだ。

 ボク・・・コウロイドだから、

 負けない為に、

 力が欲しいんだ」


ウィルが驚いた顔をしている。

・・・どう思ってるんだろう。


「だから、

 ここで特訓に参加させて欲しい」

「なるほど。

 事情はよく解りませんが、

 チノテスタが真剣だと言うことは、

 よく解りました」

「じゃぁ」

「ええ、もちろん、歓迎します。

 とは言え・・・

 僕は神聖魔法、

 ミレイは呪印魔法しか解りません」

「ううん、いいんだ。

 一緒に特訓をしてくれるだけで」

「チノテスタは何を特訓したいんですか?」

「ボクは弓術なんだ。

 だから、ここで弓の特訓をさせて欲しい」

「弓ですか・・・

 これまた・・・

 見事に専門外ですねぇ」

「いいんだ。

 何か解らないけど、

 ウィルたちといると、

 不思議な感じがして・・・

 ボクにも出来そうな気がするんだ」

「ふむ」


ウィルが、胸元に腕を突っ込んでガサゴソとしている。

何をしているんだろう?


「これの所為かも知れませんね」


ウィルが手を取りだして開く。

手のひらには綺麗な黄緑色をした宝石が光っていた。

ああ、この宝石なんだ。

この不思議な感じは・・・この宝石の力なんだ。


「チノテスタに流れるエルフの血が、

 この石の力を感じ取っているんだと思います」

「そうなの?」

「ええ。

 サララケート先生がおっしゃってましたから」

「大事な石なんでしょ?」

「ええ、まぁ、そうですね」

「なんか、恐れ多いから、

 しまってしまって」


ウィルが、ゴソゴソとしまう。


「ボクなんかに見せてよかったの?」

「エルフの方には、

 なんとなくバレてしまいますからね。

 それに、チノテスタとは仲間ですから」

「そんな簡単に信用しちゃダメだよ!」

「だまそうという人は、

 そんなこと言いませんよ。

 ま、チノテスタは、

 いい人の様ですから、

 大丈夫かな・・・と」


うわ。なんだろ・・・すっごい照れる。

今、きっと、顔真っ赤だ。


「じゃぁ、こ、これからもよろしく」

「ええ。よろしくです」

「・・・うん」


後をつけたのは悪かったけど、ボクにとってはよかった。

いろいろと嬉しくなる出来事だった。



次回「技術革命の日の2」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

次回タイトルの追加


この2話は、ちょっと詰め込みすぎたと反省してます。

そして、ぼくっ子三人衆・・・味付け方法に失敗したのかも。

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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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