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ヒール最高  作者: 猫美
学院初等編
22/90

寝耳に水の日

その日、日課のヒールを終えて、家に帰ると、母様がすっごいワクテカな感じで待ち構えてた。


「た、ただいま」

「・・・ただいま」

「おかえりなさ~い。待ってたのよ~。

 どこまで行ってたの?」

「いえ。ちょっと町の周囲を・・・小川の辺りとか」

「ああ、あの辺ね~」

「そ、それで、母様。どうしたのですか?」

「魔法特性を測定しましょう」

「はぁ。測定出来るモノなんですね」

「ええ。そうよ~。

 じゃ~ん。測定の水晶~」


青白い水晶の中に、白い影がもやもやと蠢いてる。

なるほど・・・・・・不思議水晶だな。


「これで特性が解るのですか?」

「そうね。呪印魔法の特性と、大まかな属性まで解る優れ物よ」

「でも、お高いんでしょう?」

「あらあら。うふふ。何?その言い回し」

「え・・・いや・・・そう言わなければいけない気がしまして」

「そうね。ちょっと高いかしらね~」

「いいんですか?そんなことにお金を使って」

「いいのよ。ウィルとミレイちゃん・・・

 後々は孤児院の子供達にも使えるのだから」

「なるほど」


まぁ、人材発掘用の投資と思えば高くないのか?

結局、値段教えてくれないけど。


「さぁさぁ、ウィル、触ってみて」

「普通に触るだけでいいんですか」

「そうよ~。お手軽でしょ」

「お手軽ですね」


触るだけで解るのかー。

不思議水晶だな。

触れてみるが、特に変わった様子は無い。

ちょっと白いもやがもやもやっとしたぐらいか。


「特に変化はありませんね」

「そうみたいねぇ。

 ウィルは呪印魔法の素質が無いみたい。

 残念だわ」

「まぁ、父様も母様も呪印魔法使えませんからね。

 素質が無くて正解なのかも知れませんよ」

「そうねぇ。

 じゃぁ、ミレイちゃん、触ってみて」

「・・・ぅ、うん」


ミレイがおそるおそる触ると、白いもやが動き出す。

ぐるぐるとねじれるように・・・白いもやが青く青くなっていく。

青白い水晶の中で、一瞬見えなくなるが、

更に濃い青になり、影となって見て取れた。


「あらあら。

 ミレイちゃん、スゴイわ。

 水か・・・氷の素質があるみたい。

 スゴイわ~」

「・・・ぇ?」

「色が属性を示しているのですか?」

「そうなのよ。

 先生をお呼びして本格的な授業を」

「ゃ・・・まって・・・」

「あら?ミレイちゃん、授業は嫌?」

「だって・・・お金・・・勿体ない」

「あらあら。そう?

 折角の素質なのに勿体ないわ~」

「母様、普通は家庭教師を付けるものなのですか?」

「そうねぇ。

 最近だと、学院で学ばせて・・・ってことの方が多いかしら」


まぁ、家庭教師なんて・・・お金持ちの所業だよなぁ。

・・・世間一般からしたら、ウチはお金持ちだったな。


「じゃぁ、学院でいいんじゃないでしょうか」

「そう?そうよね。

 学院なら、色々な事が学べるし。

 じゃぁ、ウィルと同じ学院でいいかしらね」

「ところで・・・母様、学院に行くという話は初耳なのですが」

「あらあら。そうよね。そうだったわね。

 7歳から学院に通うのよ」

「ゃ・・・まって・・・」

「あら?何かしら?」

「・・・学院も・・・お金掛かる」

「いいのよ。気にしなくて。

 ミレイちゃんはウチの子も同然なんですから」

「・・・ぁぅ」


ミレイが困った顔で、コチラに助けを求めているようだ。

うん。無理。


「いいじゃないですか。一緒に通いましょう」

「ああ!?忘れてたわ」

「!?・・・何をですか?」

「全寮制なのよ・・・

 ウィルもミレイちゃんもこの家から居なくなってしまうわ」

「ああ・・・なるほど」

「それは寂しいわね。

 ・・・いいえ!でも、学院で得るモノは大きいはず!」

「そうですよ。それに近いなら休みには帰ってきますよ」

「そうよね!だってすぐそこなんですもの!」

「すぐそこ・・・ってことは近いのですね」

「馬車で1日くらい・・・かしら?」

「・・・微妙な距離ですね」

「頻繁に帰ってきてくれないと寂しいわ」

「ええ・・・なるべく沢山帰るようにします。

 ところで、7歳からとの事ですが・・・

 新葉の季節(3月初旬)からですか?」

「ええ、そうね」

「今・・・落葉の3巡り(12月下旬)ですから・・・

 あまり時間・・・ありませんよね?」

「そうなるかしら」


いや・・・全然、時間が無いじゃないか。

何の準備もしてないぞ。

入試とかどうするんだ。


「入るのに試験とかあるんじゃないんですか?」

「あらあら。そのことなら心配ないわ。

 簡単な面接があるだけで、

 あとはお金が払えるかが重要なんですもの」

「・・・金持ちの集まる学院ですか」

「そこまで高くは無いわ。

 そんなに高かったら学院が潰れちゃうもの」

「それもそうですね・・・というか、母様。

 学院に関する基本的な知識が何も無いのですが・・・」

「あら、そうね。

 ウィルたちに行ってもらうのは、

 アルバ・シャンタにあるシャンタ学院よ。

 アルバ・シャンタが学院都市という形になるわね」

「学院都市ですか」

「ええ。学院を中心にして、広がってる町ですからね」

「へぇ。面白そうですね」


その後も母様を質問攻めにし続け、必要そうな知識を吸い上げた。


初等、中等、高等に別れており、3年、3年、5年の11年。

卒業時には17歳の成人の儀を終えてるってことだ。

っていうか・・・17歳で成人なんだな。

15歳くらいかと思ってたわ。

それはそれ。

初等、中等、高等は、ルーパ(銅)、ルーバシー(銀)、ルーオジー(金)と呼ばれる。

卒業兼入学試験があり、その結果により、いい先生に付けるかどうかが変わってくる。

ルーオジークラスを優秀な成績で卒業した者は、要職に就くことが多いとのことだ。

まぁ、ごもっともで。


いいとこのボンボンなどは、卒業試験に失敗した場合、

『成人の儀を無事に終え、戻ってまいりました』

とか言うらしい。

卒業とは言わないらしい。

すぐにバレそうなモンだが・・・


ルーオジークラスまで、一貫なのはシャンタだけらしい。

・・・この国では。

他の"学園"都市はルーバシーまでとのこと。

学園"都市"でない所はルーパまで。

"学院"と"学園"の違いはルーオジーまであるかどうか。

つまり、"学院"ってのは、大学みたいなモンか。

シャンタは、ルーオジーまである分、学院都市として大きいのだそうだ。


入学時に希望と個人特性に合わせてコースが別れる。

戦士学科、魔法学科、一般学科の3学科。

さらに学科の中にいくつかの専門職がある。

戦士学科 剣術コース、戦士学科 弓術コース、戦士学科 隠密コース、

・・・隠密!?

どうやらシーフ系のようだが・・・他に言葉無かったんか?

魔法学科 呪印魔法コース、魔法学科 神聖魔法コース、魔法学科 精霊魔法コース、

一般学科は単科らしい。

初等教育~中等教育が3年×2と短いことから、早いうちから専門職を叩き込もうという魂胆のようだ。


「所で・・・母様。

 全寮制だと、ミレイが心配なのですが・・・」

「あら。どうして?」

「ぃゃ・・・ウチは気にしていませんが、

 世間的には忌み人と見られてしまいますよ」


いやいや・・・待てよ。

寮に限った話じゃないよな。

クラスでも当然いじめがあるよな・・・


「あらあら。そうね・・・どうしたものかしら?」

「・・・そう・・・だから・・・やめよぅ?」

「寮の方は、お願いしてウィルと一緒にして貰いましょう」

「そんなことが出来るんですか?」

「・・・ぁぅ」

「大丈夫よ。学内ではウィルが守ってあげるのよ?」

「それはもちろんです」

「・・・ぅ」


速攻で答えたのはいいが、本当に大丈夫か?

身体のケガならヒールで癒せるが・・・

最近、やっと明るくなってきたのに、また、心に傷を負ったら、ケアできるのか?

う~む・・・早め早めに判断して、やばそうなら、学院から出ればいっか。

・・・かなり、親不孝な感じがするので、あまりしたくないけど・・・

なんか、心配してたら胃のあたりが気持ち悪く・・・


「じゃぁ、今日は、ミレイちゃんの学院生活の服を見に行きましょう♪」

「ぁぅ・・・お金・・・勿体ないの」

「じゃぁ、僕は」「ウィルも一緒に行くの」

「え?」

「一緒に行くの」

「「・・・はぁ」」


行く前から、ミレイと二人でため息・・・そんな平穏な日。


次回「寝耳に水の日のミレイ(家事手伝い見習い)」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

いいよの→いいのよ(指摘感謝)

次回タイトルの追加

カッパー→ルーパ

シルバー→ルーバシー

ゴールド→ルーオジー


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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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