技術革命の日
余談編
前世の記憶が、これほど役に立たないとは思わなかった。
所詮、近代技術が無ければ、何の役にも立たない。
電子回路のエンジニアとして、飯を食っていたのだが、この世界では一切役に立たない。
なんせ、電気がない。
まぁ、雷系の魔法があるらしいので、皆無ではないが・・・
電子回路の知識なんぞは一欠片も役に立たない。
・・・理科の実験ベースなら役に立つのだろうが。
電気系技師って電気無いと無力だな~。と実感する。
身の回りの生活を改善しようにも、電気が無いことには・・・
そもそも、色々な基本が、何も解っていない。
例えば・・・味噌を使った食べ物が食べたいと思ったとする。
味噌こうじを発酵させた物だという知識はある。
じゃぁ・・・味噌こうじをどうやって手に入れるんだ?
大豆を発酵させればいいのか?
それって納豆じゃね?とかとか・・・
結局、できあいの材料を使って、それなりに食べてきた程度では、この世界での食生活を改善するなど、言語道断。
無理無茶無謀ってモンですよ。
そんな訳で・・・前世の記憶が役に立った!と思える場面は、ほとんど無い。
っていうか、思い出せない。
皆無じゃないのか?
人としての常識を教わらずに済む程度か・・・
そんな訳で、前世の記憶を使ってみようのコーナー。
ドンドンヒューヒューパフパフー。
で、飲み水改善のため、ろ過装置を作ってみたいと思う。
本当は、水洗トイレを作りたいのだが、メチャクチャ難易度が高い。
ってことで、まずは簡単なろ過装置からだ。
木枠で配管を作り、網で大きなゴミを除去。
布にくるんだ川底の砂と木炭で小さなゴミを除去。
これで、綺麗な水が・・・
「ウィル・・・それなに?」
「水を綺麗にする実験ですよ」
「井戸・・・汚いの?」
「汚い・・・という訳ではありませんが、
川の水ほど綺麗じゃないですよね?」
「・・・うん。ちょっと濁ってる?」
「そこで、このろ過装置です」
「ロカソウチ?」
「上に水を流し込むと、下から綺麗な水が出てくるんです」
「・・・ほんと!?」
「出てくる・・・はずです。
これから実験するんですよ」
「・・・見てていい?」
「ええ。構いませんよ」
不格好な漏斗の部分に水を流し込む。
ほうら下から綺麗な水が・・・
「・・・少しだね」
「そうですね。
思った以上に通過してきませんね」
「でも・・・水は綺麗。
・・・飲んでいい?」
「ああ、ちょっと待ってください。
一応、僕が試してからにしましょう」
ごく。
「大丈夫ですね。
ほら。ミレイ、飲んでみていいですよ」
「・・・うん」
こく。
「・・・おいしい」
「ちょっと、炭臭いですかね」
「でも・・・綺麗」
「脇から漏れてますね」
「そう・・・だね。漏れ漏れ・・・」
「まだまだ改良が必要ですね」
・・・前世の記憶を役立てるのは難しそうだ。
次回「寝耳に水の日」
Twitter @nekomihonpo
感想、指摘、評価等々ありがとうございます。
お気に入りの件数もすっごい増えててガクブルですが、ご期待に添えるような話を書ければと思っています。がんばります。
※味噌こうじではなく、大豆と米こうじから作ります。主人公の知識が間違っています。
変更箇所
前書き(お恥ずかしい・・・指摘感謝)
次回タイトルの追加