嘘を吐いた日のウィンザー(父親)
ウィルが珍しくおねだりをしてきた。
ネックレス用の鎖が欲しいという。
また、不思議なモノを要求してきたな。と思っていると・・・
ハルトティータ殿からイヤリングを預かったという。
息子がヒールを使えるという事にも驚いたが、
・・・リリーも驚いていたな。リリーが教えたのではないのか?
まぁ、それはそれ。
ハルトティータ殿の名前が出てくるとは思っていなかった。
「・・・では、これにて御前会議を閉会する」
ぬ?どうやら、考えに沈んでいたようだ。
御前会議が終了してしまった。
・・・ハルトティータ殿の事を報告しない訳にはいくまいな・・・
侍従長の下へ向かうか。
「ラルテマ殿!」
「うん?ランカスター殿、何か用かな?」
「その・・・陛下にご報告したい儀がございまして・・・」
「ふむ?先ほどの会議では報告できないような事かな?」
「はっ。あまり大っぴらに話せる内容ではないため、内密に・・・」
「ふむ・・・とは言え、何の話かも解らなければ、ランカスター殿でも無理というモノ」
「確かに・・・そうですな・・・実は、先日のエルフに関する事でして・・・」
「何!?そうか・・・しばし待たれよ」
ラルテマ殿が陛下の下へ向かう。
しばらくすると、別室へ案内された。
陛下の前でひざまずく。
「陛下、無礼の段、平にご容赦」「よい。話せ」
「はっ。
先日、エルフの一族より、ハルトティータ殿がイヤリングを人族の子供に貸与した・・・との連絡があった件に関してですが」
「何か解ったのか」
「はっ。
実は・・・その・・・人族の子供とは、ウチの息子のようでして・・・」
「何!?どういうことか」
「息子の言葉によれば、ハルトティータ殿の小鳥を治してさしあげた所、いたく感謝され、預かったと・・・」
「ふぅむ」
「治したとは?」
「息子は神聖魔法を使うことが出来まして、ヒールをして癒したとの事です」
「ほほう。
確か、まだ幼かったのでは?」
「6歳にございます」
「ほぉう。
もう、そんなになるか。
いや、しかし、その歳でヒールが使えるとは、大したものよな」
「ははぁ」
「息子の言葉・・・と言うからには、違うと踏んでおるのだな?」
「はっ。
さすがに・・・小鳥を癒してさしあげたからと言って、イヤリングを預けるか・・・という点が不自然かと・・・」
「ふむ。そうよな・・・」
「口止めされている可能性もありますので、追求はしておりませぬ」
「賢明な判断だな。
久しく、親交の途絶えていた彼の一族との絶好の機会だ。
この好機を逸する訳にもいかん」
「ランカスター殿の息子より、譲り受ける必要はございますかな?」
「ふむ・・・いや、やめておこう。
ハルトティータ殿の信頼の証だ。
下手なことをして、機嫌を損ねられても困る。
ランカスターよ」
「はっ」
「その預かり物、無くさぬよう気をつけい」
「はっ」
「何かあるようなら、影から、表から、手助けをいたせ。
また、場合によっては、国を挙げて対応せねばならぬ。
報告を怠るなよ」
「ははぁっ」
退出し、一息吐く。
国を挙げての対応・・・そうならない事を願う。
ウィルに何事も無いのが一番なのだ。
それこそ、国に預けてしまっても良いのだが・・・
「ランカスター殿」
「ラルテマ殿・・・何か?」
「うむ。
さすがに、驚く内容であった。
内密な話も致し方ない事態だと思う」
「そう思っていただけるか・・・」
「個人としては、国に預けていただけると、何かと安心なのだが・・・」
「そ、それは、こちらとしても」
「だが、王がおっしゃることもごもっとも」
「確かに・・・」
「大変かとは思うが、うまく舵取りを頼む。
必要な物があれば・・・いや、何かあれば相談して欲しい。
出来うる限り力になろう」
「ありがたい。
その言葉だけで、城壁に守られている思いだ」
「では、失礼する」
「では」
さて・・・ウィルにどこまで話したものか・・・
それは家に着くまで、ゆっくり考えるとしよう。
次回「技術革命の日」
Twitter @nekomihonpo
変更箇所
息子が申しますには→息子の言葉によれば
息子が言うには→息子の言葉
ハルトティータ殿名前→ハルトティータ殿の名前(指摘感謝)
従事長の元→従事長の下(指摘感謝)
従事長→侍従長(指摘感謝)
陛下の元→陛下の下(指摘感謝)
次回タイトルの追加