嘘を吐いた日
首飾り用の鎖が欲しい。
なんて、いきなり言うのも不自然すぎる。
と、言うのも、ハルトティータのイヤリングだ。
このイヤリング・・・結局、ネックレスにするのが無難かなぁ。と思う次第。
さてさて、どうしてこんな物を手に入れたのか説明しないとダメ・・・だよなぁ。
仕方がない・・・ヒールが使えることをカミングアウトするか。
「父様、母様・・・お願いがあります。
首飾り用の鎖が欲しいのですが・・・」
「うん?誰かプレゼントする相手でも出来たのかな?」
「いいえ、父様。自分で使いたいのですが」
「あらあら。ウィルがネックレスをするの?」
「はい」
「ネックレス・・・では無く、それ用の鎖なんだな?」
「はい。・・・実はイヤリングを預かりまして・・・」
ポケットからハルトティータのイヤリングを取り出してみせる。
「あら。綺麗・・・ペリドットかしら?」
「この宝石をあしらったイヤリングを預かった?」
「えっと・・・お礼にと言いますか・・・」
「あら。どんな良いことをしたのかしら?」
「えっと・・・ヒールが使えるようになったので」
「まぁ!ウィルったら、ヒールが使えるの!?」
「ぇぇ・・・一応・・・」
「ほう」
「ウィル!スゴイわ~。
さすが、ウチの息子ね。
これで、将来は安泰だわ。
末は治癒院の院長さんかしら?」
「まぁまぁ、落ち着きなさい。
それで、ウィル・・・ヒールが使えることと関係があるのかね?」
「ええ・・・ハルトティータさんという方の・・・」
「ハルトティータ!?」
「え?父様、ご存知なのですか?」
「ぇ、ぁ・・・ぃゃ・・・もしかしてエルフの方かな?」
「ええ。ご存知の方だったのですね」
「ああ・・・名前だけはな」
「へぇ。有名な方だったんですね」
「それで、ハルトティータさんがどうなさったの?」
「ああ・・・えっと・・・」
さて・・・困った。
枯れ森を癒してたら感動された。
・・・とは言えないよなぁ。
「鳥・・・そう、綺麗な小鳥がケガをしてしまい、困っていらしたので・・・
ヒールで癒してあげたんですよ。
そしたら、いたく感謝されまして・・・」
「あらあら。じゃぁ、ちゃんと小鳥さんは治ったのね」
「ええ。それはもちろん」
「まぁまぁ。ウィルのヒールは大した物ね」
うっわ~。なんか背中に変な汗が出てきた。
やっぱ嘘が入るときついな。
特に不自然な点は・・・ありまくりだよ!
鳥のケガでお礼にイヤリング・・・ねーよ!
「そうか・・・ハルトティータ殿からのお礼なのか・・・」
「・・・父様?」
「ああ・・・いや・・・
そのイヤリングはハルトティータ殿が身につけていたのかな?」
「ええ・・・そうですが?」
「そうか・・・」
父様の様子がなんともヘンだな。
やっぱ、ハイエルフって凄いのか?
名前を出すべきじゃ無かったか?
・・・と後悔したが、手遅れなので子供らしく気にしないことにした。
「じゃぁ、そうね・・・銀の鎖なんてどうかしら?」
「え?そんな立派な物でなくても構わないのですが」
「あらあら。ウィルが預かったのでしょ?」
「ええ。そうですね」
「じゃぁ、無くさないように、しっかりした物にしておかないと」
「ぅ・・・そうですね」
「今度、台座を作りに行きましょう」
「え?いやいや。そこまでしなくても」
「見た目もちゃんとしておかないと失礼だわ」
「そういうモノですかね・・・」
まぁ・・・何はともあれ、無事に銀の鎖をゲット。
・・・高そうだな。
まぁ、いいか。
ウチが貧乏ならいざ知らず、そこそこお金持ちになってるしな。
どうも、このイヤリング・・・ティータの祝福というだけあって、マジックアイテムっぽい。
知力にプラスか、魔法攻撃力、MP、MP回復速度あたりにプラス補正があるようだ。
と、言うのも・・・MP切れしにくくなった。
・・・気がする。
MPが枯渇するまでの作業が増えた。
うん。ありがたいんだけど、ありがたくない。
ってことで、枯れ森に出かける時は、持ち歩かないことにしよう。
全然スパルタになりゃしない。
やっぱ、こういうマジックアイテムってあるんだなぁ。
ますます、高価そうな気がしてきた。
預かってていいんだろうか?
次回「嘘を吐いた日のウィンザー(父親)」
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