来客の日のリリーレルマ(母親)
虐待(を臭わせる)表現が出てきます。苦手な方は飛ばして下さい。
「じゃぁ、ミレイちゃん・・・一緒にお風呂に入りましょう」
「ぇ・・・」
「さあさあ」
「ぁぅ・・・」
ちょっと強引だけれど、ミレイちゃんをお風呂に連れて行ったの。
忌み人として虐げられてきた期間が長かったからか、すっかり引っ込み思案というか、人との接触を極端に嫌っているみたい。
そんな性分に育ってしまっていることが悲しかったわ。
脱衣所で服を脱がすと、服の下からアザだらけの身体が現れたわ。
「これは・・・」
「あの・・・えっと・・・」
思わずミレイちゃんを抱きしめてしまったの。
こんな子に・・・酷い虐待をするなんて。
なんて酷い・・・こんな素直な子を守ってあげたい・・・誰がこんなことを・・・と言った諸々のことがぐちゃぐちゃっとして・・・
「ぁぅ・・・ごめんなさい」
「え?どうして謝るの?」
「だって・・・こんな・・・だし。忌み人・・・だから」
「ううん。謝らなくていいの。
むしろ、私たちが謝らなければいけないわ。ごめんなさいね。
つらかったでしょう?」
「ぇぅ?・・・ううん」
「冷えてしまうわ。お風呂に入りましょう」
「・・・どうしても?」
「そうね。折角だから、どうしても」
「うわ・・・あったかい・・・」
「そう。よかった」
二人してお風呂に浸かる。
残念ながら、身体のアザや火傷の跡はヒールでは治せなかったの。
まぁ、そんな気はしていたのだけれど・・・あまりにも酷いので治してあげたかったわ。
若いから、そのうち目立たなくなるとは思うのだけれど。
「ねぇ。ミレイちゃん」
「・・・はい」
「ウチの子にならない?」
「ぇ!?・・・だめ」
「あら。だめなの?どうして?」
「だって・・・嫌われちゃう」
「嫌われちゃう?誰から?」
「みんなが・・・みんなから」
「大丈夫よ。誰もミレイちゃんを嫌ったりしないわ」
「ううん・・・外のみんなから」
「大丈夫よ。ウチの人が守ってくれるから」
「ううん・・・嫌われるの・・・だめ」
「そう。優しいのね」
本当、優しい子。
忌み人を家族として引き取ってしまったら、家族が世間から爪弾きになるって事を理解している。
なんて優しい子。
ぎゅっと抱きしめてしまったの。
「・・・ちょっと・・・苦しい」
「あらあら。ごめんなさい。
ウチの子になるのがダメなら、ウチで働くのはどう?
これならミレイちゃんもそんなに困らないんじゃない?」
「ぇ?・・・えっと・・・」
「そうね。ウチの子になってしまうと、ウィルとの結婚で困りそうだし・・・身元の引き受けだけなら、家族ではないのだから、結婚で世間体を気にする必要も無いわね」
「ぇ?・・・ぇ?・・・あの・・・だめ」
「あら?ウチのウィルは嫌い?」
「・・・そんな・・・こと、ない・・・と思う」
「あらあら。じゃぁ、問題は解決ね」
「ぇ?・・・解決・・・してない」
「ウチで住み込みのメイドさんなんてどう?
きちんとお給金も出すし、家族には追々なればいいわ。
これならミレイちゃんも問題無いわよね」
「ぁぅ・・・困る・・・」
「あらあら。嫌なことは早めに解決しておかないとね。
何か嫌なことあるかしら?」
「えっと・・・忌み人だから・・・」
「ん~・・・ミレイちゃんは忌み人じゃないわ。
これで問題は解決ね」
「ぇ?」
「だって、ミレイちゃんはこんなにも良い子なんですもの。
忌み人なんかじゃないわ。
仕事のことは、ノイナからお聞きなさいな。
急がずに、ゆっくり憶えていけばいいから」
「ぁぅ・・・」
ちょっと強引すぎたかしら?
でもこれくらいしないと、この子は身を引いてしまいそうだし・・・そういう部分は時間を掛けて解決していけばいいかしらね。
ゆくゆくはウィルのお嫁さんとして、家族になっていけばいいのだし。
「これから、よろしくね。ミレイちゃん」
「ぇぅ・・・」
次回「来客の日のミレイ(お客さん)」
Twitter @nekomihonpo
変更箇所
なるって子と→なるって事(指摘感謝)
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