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ヒール最高  作者: 猫美
幼少編
11/90

来客の日

ここ数話、いじめ、虐待(を臭わせる)表現が出てきます。苦手な方は飛ばして下さい。

昨日、母様に断りを入れた後、速攻でミレイを探しに出たのだが、見つからなかった。

さすがに孤児院に乗り込んでまで・・・という勇気はなかった。

家に帰ってから、父様と母様にミレイの話をした。

2人とも、最初は忌み人ってことで嫌悪感を示したが、最後は連れてきて良いと言ってくれた。

虐待の可能性が決め手になったようだ。

ミレイが、自分と両親との仲を気にした。

というのも効いている。

まぁ、コレに関しては、彼女が実に心優しい人であることを示しているし、忌み人ということに関しても誤解があるのかも知れない。

特に父様が虐待に関して怒り心頭の様子。

厳つい顔で怒られると、ちょっと怖い。

涙出そうになった。

まぁ、そんな訳で、両親の了解は得られたので、まずはミレイをウチにかっさらう次第。

ってことで、朝から孤児院を張っている訳です。

・・・不審者ですかね。

いいや。

子供なんだから大丈夫。

・・・大丈夫。

・・・めげそうです。


お、あれは・・・えっと・・・アルフだったか。


「アルフ!」

「ぉゃ?こんにちは。

 ウィルから声を掛けてくるとは思っていませんでしたよ」

「うん。そうだね。

 それはそれ。

 ミレイを見なかった?」

「今日・・・ということですよね?」

「うん」

「今日は見てないですね」

「そうか。ありがとう」

「・・・なんですか、その・・・もう行っていいよみたいな扱いは」

「いや、行っていいよ?」

「ふぅ。相変わらず変な人ですね。

 それで、今日はどうしたんですか?」

「ミレイ待ち」

「はぁ・・・ミレイ待ちですか」

「そそ。張り込み中だから行っていいよ」

「じゃぁ、張り込みしながらでいいので、話しませんか」


思わず、なんとも言えない顔でアルフを見てしまった。


「ほんと、変な人ですね」

「いえいえ。こんな所で張り込みをしている5歳児ほどではありませんよ」


・・・更に何とも言えない気持ちにさせられた。


「新しい遊び・・・ってことはなさそうですが?」

「そうだね。・・・アルフに協力してもらうか」

「は?」

「うん。悪くない。アルフに協力してもらいましょう。

 是非とも協力してください」

「えっと・・・何をですか?」

「ミレイをちょっとかっさらおうと思っていまして」

「は?」

「ちょっとウチまで強制連行しようと思っていまして」

「はぁ」

「ちょっと呼び出してきてくれませんか」

「いやいやいや。オカシイですよね。色々と。

 そりゃぁ、もう・・・色々と」

「いいじゃないですか。

 アルフ!ウィル!で呼び合う仲じゃないですか」

「いやいや。呼び合うだけの仲ですよね」

「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないですか。

 ここで貸しを作っておけば・・・程度に考えてくださいよ」

「そんな気軽な貸しじゃないですよね?」

「ちょっと、うまいこと言って、ウチまで連れてきてくださいよ。

 あとはこっちでうまくやりますから」

「ウチまでって・・・結構距離ありますよね?

 あとはって・・・ほとんど終わってますよね?」

「年上なのに小さいことを気にする人ですね」

「はぁ・・・まぁ、ウィルの家まで連れて行くくらいならいいですけどね」

「え?ほんとに!?」

「・・・なんですか。その反応は」

「いえいえ。大助かりです」

「既に嫌われているので、ちょっとくらい強引にしても上乗せされるだけなので、気にしませんが・・・」

「ちゃんとフォローしておきますよ」

「別にいいですよ」


まさか、ほんとうにやってくれるとは思わなかった。

ちょっとくらい強引ってのが引っかかるが、気にしてたら話が進みそうにないしな。


「ウチまでと言いましたが、さすがにそれもどうかと思いますので、そこの角まででいいですよ」

「そうですね。その方が助かります」

「とは言え、逃がしたくないので家まで付き合って頂けると助かります」

「まぁ、いいですけど・・・」

「じゃぁ、角で隠れてますので・・・僕の名前を出すと警戒されるかも知れませんので、うまく誤魔化してくださいよ」

「警戒って・・・何をしたんですか?」

「まぁまぁ・・・じゃ、お願いしますよ」

「・・・はいはい」


アルフが素直に孤児院の方へ・・・本当に行ってくれるとは・・・言ってみるモンだ。

うん。彼の中の人はいい人だな。


しばらく時間を潰していると、アルフがミレイを連れて戻ってきた。

さすがにうつむいてる。

いや。

昨日も、その前も、ミレイはうつむき加減だった気がする。

忌み人という枷が、前を向いて歩くということにも影響しているんだろうなぁ。


「こんにちは。ミレイ」

「・・・ぇ!?」

「これでお役ご免ですかね」

「いやいや、もうちょっと付き合って貰う約束でしたよね」

「はぁぁ・・・もう、結構疲れたんですが」

「貸しでいいですから、お願いしますよ」

「・・・あの・・・どういうこと?」

「ああ、僕がお願いしてミレイを連れてきて貰ったんです」

「・・・なぜ?」

「ちょっと連れて行きたいところがありまして。

 おいやですか?」

「・・・ぅ・・・えっと・・・」


アルフを警戒してるね。

まぁ、それはしょうがないよね。


「大丈夫です。彼には何もさせません。

 もし、彼がミレイをいじめるようなら、僕が全力で守ります。

 だから安心してください」

「・・・ぅ、うん」

「じゃぁ、行きましょう」


うなずくやいなや、ミレイの手を取って歩き出した。


「アルフは、約束ど~り、付いてきてくださいね」

「約束ですからね」

「じゃぁ、ミレイ・・・ちょっと歩きますよ」

「・・・どこ、行くの?」

「本当は目隠ししたいくらい内緒です」


強引に手を引いて連れてきた。

うん。

実にワルモノです。

口では嫌と言いながら、あまり強い反応がないので、ついつい本当に連れてきてしまった。


「ウィルは、やっぱりいいとこのお坊ちゃんだったんですねぇ」


アルフがしみじみと言う。


「いいとこと言うほどですかね?」

「十分、いいとこだと思いますよ」

「なるほど」

「世間知らずのお坊ちゃまですね」

「・・・なんか含みがありますね。

 まぁ、いいです。アルフ、ありがとうございました」

「本当にこれでお役ご免なんですね」

「ウチにあがって、お茶でも飲んで行かれますか?」

「やめておきましょう」

「そうですか・・・さぁ、ミレイ、到着です。家に入りますよ」

「ぇ?」

「じゃぁ、ウィル・・・私はこれで失礼しますよ」

「ええ、本当にありがとうございました」

「今日のことは貸しにしておきますからね」

「お安くしておいてください」

「たっぷりと取り立てますよ」

「お手柔らかに」

「ははは、じゃ、また今度」

「ええ。また今度」

「ぁぅ・・・じ、じゃぁ・・・また今度」

「ミレイはまだダメですよ」

「ぁぅ・・・」

「さぁ、家にはいりましょう」


前庭を抜けて玄関へ。

そして玄関ホール。


「ただいま。母様、ミレイを連れてきました」

「あらあら。いらっしゃい」


ミレイはおっかなびっくりで、僕の背中に隠れる。

なんとも・・・小動物ちっくで和む。


「まあまあ、可愛らしい。・・・美人さんね」


ふむ。

そうだよな。

将来は美人になりそうだ。

黒髪も綺麗だし。


「じゃぁ、まずはお風呂に入りましょう」

「は?母様、お風呂ですか?」

「ええ、そうよ。

 可愛い子ですからね。

 綺麗に磨き上げないと。

 そうそう。ウィルはダメよ」

「も、もちろんですよ。何を言ってるんですか」

「ぁぅ・・・」


ミレイが拉致されていった。

ドナドナが聞こえてきそうだな。

ぽつ~んと1人残されてしまった。

えっと・・・・・・リビングで待つかな。

次回「来客の日のリリーレルマ(母親)」


Twitter @nekomihonpo


変更箇所

引っかかりるが→引っかかるが

私の名前→僕の名前

次回タイトルの追加

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◆用語 ●幼少期人物一覧
 ●学院初等期人物一覧
 ●学院中等期人物一覧
 ●学院高等期人物一覧

以下、感想に対する補足になりますが、ネタバレを含む可能性があります。
見る場合、最新話まで見た上で見ることを推奨します。
◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7(2013/02/03)
あとがきは ネタバレ を含む可能性があります。
◆あとがき(2013/02/01)
1話にまとめあげる程ではなかったおまけ。
◆研究室での日常のヒトコマ(2012/11/23)



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