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色彩館  作者: こをり
9/37

ハチ色 

途中から視点が変わるというめんどくさい文になっています。

え?いつもだって?


・・・・・ふへへ。


少女漫画のヒーローはピンチになったヒロインをお姫様抱っこをして守りながら戦うシーンをよく見る。

女の子は皆憧れるものだと聞いたことがあるが、男側からしては堪ったもんじゃない。

腕が塞がっているから何も触れないし、体重が膝に来るし、バランスだってとりにくい。

恋人同士のいちゃいちゃタイムでは大いに活用すればいい。

でも守りながら戦うなんて無理だ。よたよたと逃げるだけで精一杯。

彼は心配そうな目でこっちを見ていた。少し哀れみの視線も交えながら。


「ぜぇぜぇ言ってるけど大丈夫か?」

「だい、じょうぶに、見えます、か?」


替わってくださいよ。と言う前に逃げる事に必死であっという間に駐車場へついてしまった。

明日筋肉痛だろうな。なんて不吉なことを言われながら彼女を後部座席へ寝かせる。

私も普通に運転席へ乗ったが、彼がふと当たり前の事に気づく。


「連れて行くのか?」

「あ」


なんでか助けちゃって、なんでか持って帰ってきちゃってるけどこれは犯罪行為だ。

家に帰そうにも、気絶をしているのだから無理に起こすのもちょっと気が引ける。

しばらく考えてみたがいい案が浮かばず、どーする?となっているところに機械音が響いた。

ケータイだと分かり、いそいそと液晶を見ればつい数時間前に話した友人からだった。


「鳴ってるぞ」


私の嫌そうな顔に気づいているのに、電話を催促するだなんて彼はドsだと思う。

しぶしぶ電話を繋ぎ耳へ持っていくと「お、繋がった。ボタンこれで合ってたのか」と恐ろしい事を言い放った。友人の機械音痴はいい加減治して欲しい。


「なんのようですか?」

【さっきと同じだぴょん】

「キモ」

【切らないでー!お願い後生だから】


めんどくさい時にどうしてめんどくさい奴から掛かってくるんだろう。

彼に断りを入れて、私は会話に少しだけ集中した。


◆◇◆◇


あいつが電話を始めてから数分。文句を言うわりに楽しそうに喋っている。

手持ち無沙汰になりふと、今だ気絶している少女を見ると眉間にしわを寄せ眠っていた。

自分が少女を助けた理由はなんとなく見当はつく。が、納得は出来なかった。

まぁいいだろう。どうせ今限りの関係で終わるのだ。

結論つけてから特別する事もなくなり暇を持て余す。

ケータイを取り出してみるがこれと言って電話もメールもすることも出来ない。

なんせ日付が変わっているのだから。


「明日起きられないな」


呟いて口の端がピリッと痛んだ。それと同時に金髪に思いっきり殴られた場所が次々と悲鳴を上げる。

あいつに筋肉痛だと馬鹿にしたが自分も似たようなことになるだろうな。

明日が休日でよかった。骨も折れてないようだし休めば治るはず。

ちらり。

あいつに目線をやっても電話に夢中なようで出発する気配がない。

そのまま目線を動かし手で止まる。


「ケーキどっかいっちゃったのか」


無駄使いだとか言ったのは自分だがケーキに罪は無い。それに甘いものは嫌いじゃないのだ。

ため息を小さく吐けば、同じように向こうからもため息が聞こえた。

あいつがケータイをしまうのを見ながら疑問符を投げると億劫そうに口を開く。


「帰りますよ」

「この子は?家がわかったのかよ」

「一緒に、帰りますよ」

「・・・・・・説明よろしく」


説明を催促するが先に車に乗れと指示されそれに従う。

さっさと帰って風呂にはいって布団に潜りたい。そしてドロのように眠りたい。

しかしながらこの状況を考えて、今日は眠れるのかは神のみぞ知るってやつだ。

車が発進し、無駄なく走ったあと高速へ乗る。

それから俺はまたさっきと同じことをあいつの耳へ入れる。


「説明よろしく」

「まぁ親友のお願いですよ」


お得意のうそ臭い笑みを顔に貼り付けたまま喋る。またこいつの悪い癖が出たのだ。

何度やめろと言っても聞く耳を持たない。

それに巻き込まれて、後片付けをするのはいつも周りにいる俺たちだというのに。


「楽しい方向にばっかり寄っていくな」

「楽しい?めんどくさい事を押し付けられた私は被害者ですよ」

「嘘付け。鏡見てみろ、被害者じゃなくてれっきとした加害者の顔だ」

「何言ってるんですか。美人しか写ってませんよ」

「まじか。その鏡にシールなんて貼ってないと思うんだが」


言い返せば言い返される。でも今日は俺の勝ち。

唇を尖らせ何も言わなくなり、もう一度さっきの言葉を言うと帰ってから話す、とだけ言われた。

へそを曲げてしまったこいつは厄介だ。

言い返さなければ良かったか。後の祭りだがそう思わずにいられない。

最後に1つだけ聞かなければ。そうじゃなきゃパトカーが追いかけてくるかもしれないのだ。


「俺たちは犯罪行為に加担してないよな?」

「・・・・してるはずないでしょ」

「今の間はなんだ」

「欠伸が出そうになったんです。ほら目が潤んでるでしょう?」

「前見ろ、まえ!」


顔を横に向かれ慌てて元のほうに向ける。この歳で棺おけ行きなんて勘弁してくれ。

くすくす笑い声が響いた。さっきのことまだ根にもっていたらしい。

仕返しに長い髪を軽く引っ張るが逆に笑い声が大きくなってしまった。

もうこいつめんどくさい。

着いたら教えてくれ、寝るわ。それだけ言って座席に深く座りなおす。

体もそうだが、腹も限界だ。

だがそれ以上に、眠気がものすごい勢力で俺の脳みそを占領しに来たのだ。


逆らおうと言う思考など微塵にも考え付かなかった。


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