ロク色
ここからは、別主人公?の視点から入ります。
分かりずらくて申し訳ない。
その主人公のプロフィール↓
若くない歳、男、女顔(コンプレックス)、性格は飄々としている。
きらびやかな繁華街。寝ることを忘れたように人が行きかうこの町は、嫌いじゃなかったりする。
ただ、無機質な機械から発せられる大音量の声にいい加減耳が痛くなってきた。
そんなこともお構いなしに喋り続ける友人に、文句の1つをこぼす。
「そんな事言われても無理なものは無理です」
【そこをなんとか!頼れるのはお前だけなんだ】
「・・・・・私はようやく仕事が終わって自由の身なんです。切りますよ」
【いやーん。つれないこと言うなよ!ほんとちょっとの間だけ・・・】
プッ、とボタンを1つ押せば今まで煩わしかった声がなくなる。
さて、うるさい音も消えたし今日の仕事も終わった。けどこれから家に帰るのはなんだか勿体ない。
探しに行こうではないか。
「楽しい事を!」
「ダメに決まってるだろ」
一刀両断された私の意見。ブーイングは華麗に無視されいじけてしまう。
私の横にいるもう一人の男は仕事のため、付き添い役をお願いしたのだがいまいちノリがよくない。
だが彼のおかげで仕事は意外と速く終ったのだからなにかお礼をしようかと聞けば、「さっさと帰るぞ」とつまらない事を言っているではないか。
私はこの町を探検したい。面白そうなことが転がってそうだし。
「ダメだ」
「え、声に出してましたか?」
「いや、顔に出てる」
そこまで顔に出してたつもりは無いんですけど。
じーっと睨んでると観念したのか、1時間だけと言う条件で散策を許可された。
はやる気持ちを抑え、手に持っていたケータイをスーツのポケットに仕舞いなおすと彼は気になっていたのか問うてきた。
「さっきの電話はよかったのか」
「あぁ、友人の無茶振りですよ。毎度毎度【お願い】してくるので溜まったもんじゃありません」
それが心底嫌なわけじゃない。人として頼られるのは嬉しいが、そう何度も言われると腹が立つ。
まあ、ちょっとやそっとで壊れる友情じゃないと自負しているから言えることなのだけど。
「今はそれより、探検です」
普段からこのような煌びやかな場所には来ない。人ごみは苦手だが、今日はなんだか気分がいい。
綺麗なお姉さんの誘惑に打ち勝ちながら、どのお店へ入ろうかと視線を彷徨わせる。
あ、いいところ発見。私の目線の先はいつぞや新聞に載っていたケーキ屋。
外国を思わせるこじゃれたお店はケーキの甘い匂いとよく合っていた。
「お土産に丁度いい。でしょ?」
「無駄遣いは感心しない」
「お土産を無駄遣いなんて言わないでくださいよ」
店内に入り可愛らしい形のケーキが所狭しと並んでいる。
どれも美味しそうだ。ケーキと同じく可愛いらしい店員と雑談しながら気にいったのをいくつか購入。
ふと時計を見るとずいぶんと遅い時間なことに気づく。
「こんな時間までお店をあけてるのですか?」
心配になって聞いて見ると店員は、暇だから、と軽い口調で返された。
ここにいる人たちは本当に寝ることを知らないのではないかと少し疑ってしまう。
それから少ししてケーキ屋の出入り口へと足を運ぶ。
先に出ようと自動ドアをくぐった彼が、ドンッ!と言う音を奏でた。
「っと、おい大丈夫か?」
「ん?どうかしましたか」
『あ・・・・・す、すいま、せん』
「いや、それよりも」
『すいません!!』
声からして女の子だろう。その子は叫ぶように謝ってそのままり走り去ってしまった。
何事だ、と思いつつ不謹慎ながらワクワクした。
だって普段からあまり表情を崩さない彼が、すっごく面白い顔をしているのだから。
「・・・泣いてた」
「泣いていた?家出ですかね?」
「そんな雰囲気じゃない。なんてゆうか・・・逃げてるみたいな」
「で、君は何でそんな顔をしてるんですか?女の泣き顔なんて飽きるほど見てるでしょうに」
「茶化すな」
いつもなら当たり前のように、軽く交わす言葉なのに睨まれるだなんて。
人が多くもう彼女の影など残っていないのに、彼はジッとその方向を向いたまま動かない。
コレはますます面白い。好奇心にストッパーをかけるはずもなく、思ったことをそのまま口に出す。
「行きましょうか。まだそんなに遠くに行ってないでしょうし」
私の問に、彼は頷きもせず駆け出した。
二人してキョロキョロ目を動かしながら、軽く走り辺りを見回すとさっきの女の子を発見。
堂々と信号無視をし、スナックの看板を目指してよろつきながら進んでいる。
一瞬見えた少女の顔は彼が言う通りの泣き顔だったが、どこかホット安堵しているようにも見えた。
「捜し求めていたスナックに出会えたとか?」
「・・・おい、あれ」
私の冗談は流されたのは悔しいが、彼女の様子がおかしいことに気づく。
その横に突然現れた派手な金髪の男に肩を握られ、なにやら怯えているように見える。
さっき見た安堵の表情はとっくに消えうせていた。
「あの方がら悪いですねー。女の子も可哀想に、きっと厄日なんでしょう」
金髪があまりに大声で騒いでるせいか野次馬がだんだん増えてきた。暇な人たちだな、と思いながら自分もその一員にいることに気づき少し面白くない。
助けに行こうかと、彼に言おうと声をかけるが応答が返ってこない。
「ちょっと聞いて」
「すまん。どいてくれ」
私に言ったのではなく、前にいる野次馬に言ったのだ。という事は助けに行くのか。
明日は私が厄日になるんじゃないか。それほど彼の行動はありえない事だった。
仕方がない。腕に自身はないが口では勝算はあるはず。
彼の後ろについていきながら、堅苦しかったネクタイを緩める。
私の口元がわずかに上がっていたのは、きっと誰も知らないんでしょうに。