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第1話「異世界転生」

目の前が真っ暗だ。

ここは多分死ぬか生きるかの狭間かな?

だけど助けはどうせ来ない。ならせっかくだし今の状況を語るとしようか。

恐らくどの宗教でも禁止されている行為。恐らくどの国でも犯罪となる行為。殺人。

どこにでもいる普通の高校生である僕、ミナトは先程そんな罪を犯した。でもそれはそんなに悪いことか?僕のしたことは僕の親友であるリュウタと最愛の恋人ハナを殺しておきながらのうのうと生きているゴミを始末しただけだ。僕の命を犠牲にして。

本当は死ぬつもりなんてなかったけど少し失敗しちゃったんだよね。まぁ別にこの世に未練もないしいいけど…

それじゃあ僕は寝るよ、永遠にね。

―――――


「・・・・・」


僕は何故か目を覚ましていた。

死んだはずなのになぜ?

僕の頭に疑問が湧いてくる。その疑問を解決するためにも周りを見渡してみる。

そこは真っ白でふわふわと雲のようなものだけで何も無い、だだっ広い空間であった。しばらくそこらを歩いたり、走ったり、叫んだり、地面を叩いて見るが何も起きない。5分ほど経って疲れてきたので休憩がてら、その場に寝転がった。まるで羽毛布団のようで心地が良い。いっそここを天国だと結論付けて眠り続けようか、そんなことを思った時辺り一帯に声が響いた。


『諦め早すぎ、もう少し探索するでしょ。普通』


まさか僕の行動にツッコんで来るやつが居るとは。

声の主を探そうと思い起き上がると僕の目の前数cm先に阿弥陀如来像があった。


「!?」


僕は急いでバックステップで奴から離れる…ん?阿弥陀如来像?は?

僕の頭の中がハテナで埋め尽くされる。

そんな僕を見かねたのか、目の前のそれは説明を始める。


『私の正体が気になっているようだから教えてあげるよ。私はこの世の創造主。君たちで言うところの神というやつだよ。

そしてここは異世界転生させるための窓口みたいなものだね。』


・・・?

まずいな、説明されてんのに一切分からない。


「えっと、まずひとつずつ丁寧に説明してもらえる?」


『仕方ないなぁ〜。まず僕はこの世界の神。それはわかった?』


「この世界の神って阿弥陀如来像なんだ」


どんな感想よりも先にそんな言葉が僕の口から漏れる。


『いや、別にそんなことは無いよ。君は日本人だからこの姿の方がわかりやすいかなって。変えようと思えばどんなものにもなれるよ。例えば、ほらっ』


そう言って、千手観音像やキリストの像、自由の女神像に姿を変える自称神。

神の姿って像で固定なのかよ。しかもなんか日本人への偏見すごいし…

まぁいい。そんなことよりも気になることがある。それを質問することにしよう。


「ここが異世界転生させるための窓口っていうのはどういうことだ?」


そう、何よりも気になるのはそこだ。

僕は先程死んだ。自殺したのだ。それなのに僕は転生を


『そのままの意味だよ。分からない?』


「言葉の意味はわかる。なんで僕がそれに選ばれたのかって話だ。」


質問の本筋をわかっていない神に対して、僕はキレ気味に言葉を返す。


『なんだそんなことか。別に君だけじゃなくてね。君の世界で死んだ人は、次の世界へ行くようになってるんだよ。仏教の六道を想像してもらえるとわかりやすいかな?』


・・・なるほど?色々と聞きたいところはあるものの、一応3割程度の理解はできた。


『というわけで行ってらっしゃーい。』


情報を処理するのに時間がかかっている僕に対してそんなことを言う神


「は!?ちょ待て待てまてまt」


僕の願いは神には届かないようで奴の手が僕の頭に触れた瞬間、目の前が真っ黒になりそこで僕の意識は途絶えるのだった。


―――――――


「・・・」


ゴツゴツとした地面に寝転がっている感覚がして、目が覚めるとそこには雲の上の光景の面影はなく辺り一帯様々な色の緑が広がっていた。

急すぎてついていけないがどうやら僕はもう異世界へ飛ばされてしまったらしい。

僕は起き上がり周りを見渡すが人どころか野生動物すらいない。しかしさっきあのクソ神は僕らの元いた世界からこの世界へ転生してくると言っていたので誰もいないことはないだろう。

そうして先程の天界?同様、僕は探索を始める。


歩き始めて数分は経ったであろう時、僕は地蔵を見つけた。この世界にもこういうものはあるのだな、と思いつつ通り過ぎようとする。


『転生者パターンC、罪人ヲ発見。』


突然声を発する地蔵。僕のことを罪人と呼称したことから攻撃をされる可能性がある。

僕が身構えていると


『チュートリアル及ビ世界ノ説明ヲ開始シマス。』


どういうことだ?チュートリアル?

よく分からないが攻撃する気はないようなので、とりあえず警戒を解く。


『コノ世界ノ事ハ、ドコマデ聞カサレテイマスカ?』


混乱をしている僕を他所に話を続ける地蔵。こちらが理解するまで待たないことにあのクソ神と似たモノを感じる。とりあえず言葉を返さないと何も始まらない気がしたのでコイツの質問に答えてやる。


「この世界は全人類が前の世界で死んだ後にやってくる所だって事までは聞いた。それで僕が転生者パターンCっていうのはどういう事だ?」


『ナルホド、ソコマデシカ聞イテイナイノデスネ。デハ、マズ質問ニ答エマショウ。』


そう言って自分の頭上に実体のない液晶の様な図を提示しながら説明をして来る地蔵。


『マズ、コノ世界ニハ3種類ノ人間ガ居マス。

1種類目(パターンA)ハ、前世デ平凡ニ生キテキタ人間ガ該当シマス。コノ方々ハ前世の記憶ヲ持タズ、赤子トシテ生マレテキマス。

2種類目(パターンB)ハ、前世デ成功シタ人間ガ該当シマス。コノ方々ハ前世ノ記憶ヲ持チナガラ赤子トシテ生マレ、成功度ガ高イ程記憶ガ長ク続キマス。

3種類目(パターンC)ハ、前世デ人間ヲ殺シタ人間ガ該当シマス。コノ人間共ハ前世ノ記憶ヲ持チナガラ、全盛期ノ肉体デ転生シマス。ソシテ……………』


そんな説明を続ける地蔵。めっちゃ長いので要約すると


さっき地蔵が言っていた通りこの世界には3種類の人間がいて、僕はその中のパターンCに当てはまる。

そしてこの地蔵はパターンAの人間には見えず、パターンBで尚且つ記憶がある時点の人間、パターンCの人間が通った時にのみ反応し、この世界の説明をする。

この世界の住民にはどのパターンであろうと、最低でも1つの能力が貰え、能力の強さや数は前世での罪の数や重さによって変わる。また、前世での善行の数や質で頭の良さやフィジカルが決まる。

この世界は僕の思う異世界同様、多種多様なモンスターがいる


ということらしい。

ここまでの話を聞いて僕の頭に1つの疑問が思い浮かんだので聞いてみることにした。


「最初に言ってたチュートリアルっていうのは?」


『パターンCノ人間ニノミ行ウ能力ノ付与デス。マタ、戦ウ相手ハ完全ランダムデ選バレマス。』


どういう意味か分からず戸惑っていると、突然僕の目の前にゴーレムが現れ僕の顔面に拳を叩き込む。


「――っっ」


僕は間一髪で奴の拳を避ける。完全ランダムで選ばれるにしては殺意が高すぎるだろ。僕前世でそんな悪いことしたか?……あっしてたわ。


『言イ忘レテイマシタガ、パターンCノ人間ニ限リ能力ハ最初、与エラレテイマセン。コノゴーレムノ核デアル頭ヲ潰シタ後、能力ヲ手ニ入レルコトガデキマス。』


確実に言うのが遅いが、つまり倒せばいいってことだな。

・・・ん?待てよ。僕の頭に思い浮かぶゴーレムというのは、基本石か鉄でできている。そんな僕の知識は何も間違ってないみたいで、こいつの立っている地面は今も深い足跡を作っている最中だ。これを素手、しかも前世のままのフィジカルで破壊するというのは、プロのボクサーでも不可能だろう。つまりそれはある程度前世で徳を積んでおかないとここで死ぬことを意味している。


………あれ、もしかして詰み?


そんな言葉が僕の頭に湧いてでる。

そんな事を考えている間もゴーレムはこちらへ近づいてくる。幸い早いのは最初の1発だけだったようで、奴の歩みは僕の家のエアコンが機能し始めるより遅い。

逃げようとする僕。しかし待てよ?この世界は前の世界で死んだ人間が送られる。それが意味するのは僕をいじめてきた奴もこの世界にいるということ。そしてあいつはパターンCに該当するカスだ。このゴーレムにやられて死んでいる可能性もあるだろう。だがもし奴が生き残った場合。僕が前世で命を張ってまで殺した意味が無くなる。それどころか奴はこの世界でも同じようなことをするだろう。

そんなことになるのなら、この世界で僕が平和に生きるためにも、僕のような犠牲者を生まない為にも限界まで足掻いてやる。


覚悟を決めた僕はやつの懐へ潜り、首に腕を回す。それと同時、僕はできるだけ力が伝わるように全力で地面へと倒れ込む。

本来なら僕が首にぶら下がって終わるところだが、前世での行いの分強化されたフィジカルで、奴も同時に倒れて地面に背中を付ける。案外僕はいいことをしていたらしい。そして僕は流れるように馬乗りになり、拳を作る。

自分の体がどうなっても知ったことでは無い。僕は今世を生きる為、声にならない声で叫びながら、何度も自分の拳を目の前のそれに振り下ろす。


「―――――」


何回、何十回、何百回拳を叩きつけた時だろうか、僕は冷静さを取り戻し、

目の前にただの石の欠片が無数に散らかっているのを見た。


「…やって、やった、ぞ」


僕は血だらけになった拳でガッツポーズを作りながら、枯れた声を発し、欠片の横に倒れ込む。

僕の意識が飛ぶ。その直前に


『チュートリアルクリア。能力ヲ付与シマス。』


そんな声が聞こえた気がした。

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