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緑の丘の銀の星  作者: ひろみ透夏
第3話 ステネコ

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9/14

03-02

 

 

 目を覚ましたとき、(あた)りはまっ暗だった。



 ガサリ、ガサリと草をかきわける音に気がついたわたしは、小型宇宙船からすべり降りて、音のする反対側にすばやく身を隠した。


 少しずつ音が近づいてくる。


 そっと顔を出してのぞいてみると、草かげのあいだに、きらりとふたつ、光るものが見えた。



「あれは獲物(えもの)を狙う肉食獣(にくしょくじゅう)の目だ。この星でわたしを襲う可能性のある生き物は……」



 再び宇宙船のかげに身をひそめ、銀河的に有名な生物博士の頭脳をフル回転させた。



「ライオン、トラ、クマ、ええと、それから……」


「ネコです」


「いやいや、ネコは人を襲ったりしないよ」



 そうこたえてはっとした。わたしは誰と話しているんだ?



「安心してください。わたしはネコです」



 とっさに声のするほうに目を向けた。

 いつのまにか小型宇宙船のてっぺんに、まっ黒なネコが座り、黄緑色に光る目で、ぴたりとこちらを見おろしている。



「こんばんは博士。お(はつ)にお目にかかります」



 ネコはそう言いながら、うしろ足ですくっと立ち上がり、ていねいにおじぎをした。



「きみは地球のネコじゃないね? 地球のネコは言葉を話したり、二本足で立ったりしないはずだよ」


「さすがは銀河的に有名な生物博士。おっしゃる通り、わたしは純粋な地球のネコではございません」



 ネコはくるりと背を向けて続けた。



「博士。あなたがここに不時着したときから、わたしはあなたをずっと観察していました。見極(みきわ)めたかったのです。話をしていい相手かどうか……」



 わたしは話を聞きながらも、目の前にいる生物の正体を頭の中でけんめいに(さぐ)っていた。


 この銀河にはネコ科の生物がたくさんいるし、言葉を話すネコもいる。


 しかし彼らは、長いしっぽが退化していたり、おなかに袋を持つ有袋類(ゆうたいるい)だったり、このネコとはだいぶ違う姿をしている。


 銀河でも四本の指に入るほど有名な生物博士のわたしでも、こんなネコは見たことがなかった。




「わたしは捨てられたのです! この未開の惑星に!」




 そう叫んでふり返ったネコの目には、あふれんばかりの涙が溜まっていた。



 話を聞くとこうだ。


 ネコは未開の星で宝を探すトレジャーハンターの一員だったが、仲間と宝の取り分で大喧嘩(おおげんか)。この地球にひとり置き去りにされたというのだ。



「なるほどね。きみはつまり、この星に本来いるはずのない『外来(がいらい)生物(せいぶつ)』にあたるわけだ。銀河生物保護法ぎんがせいぶつほごほうにおいて、その対応は二種類。

 ひとつは、飛来(ひらい)した隕石などに付着していた生物が、その星に住みついて繁殖(はんしょく)した場合。それは自然の出来事なので、そのまま放置される。

 ふたつめは、ほかの星から誰かの手により生物が持ち込まれた場合。それは自然の出来事とは言えないので、発見しだい駆除(くじょ)する決まりになっている。

 ちょうど今回のわたしの任務(にんむ)が、この星の外来生物の調査なのだよ……」



 わたしはネコの顔を、ちろりと(にら)んだ。




「きみのケースは、ふたつめにあたる……」





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