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緑の丘の銀の星  作者: ひろみ透夏
第2話 アユム

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02-03

 

 

「この緑が丘の地中深くには、いまでも怖ろしい龍の玉が埋まっているんだって!」



 アユムは目を輝かせながらそう言うと、ずるりと小型宇宙船をすべり降りて、たんねんに船体を調べ始めた。



()()もないし、ぴかぴかして……。先週とつぜん現れたこの銀色の玉が、伝説の龍の玉じゃないかと、ぼくは(にら)んでいるんだよねぇ……」



 思わず顔を見合わせる、わたしとトモミ。


 次の瞬間、トモミがぷっと吹き出した。その顔には「ほら、おかしなやつでしょ?」と、書いてあるようだった。



「まあでも、この場所に家もマンションも建たないのは、そんな言い伝えがあるせいかもね。広いし、高台だし、こ~んなに気持ちのいい丘なのにさ!」



 トモミが両手をひろげて草原を見渡す。


 わたしたちの視線のさきには、鮮やかな緑の草原と、つき抜けるような青い空の境界線が、ぐるりとまわりを取りかこんでいる。



「高台……。丘……。そうか!」



 わたしは立ち上がって、周囲を見渡した。


 この場所から一歩も移動したことがないわたしは、ここが平らな大地がどこまでも続く、広大な草原(そうげん)だと思っていた。


 しかし、ここは小高い丘の上にある、それほど広くない草原(くさはら)だったのだ。


 よくよく考えれば、地平線があまりにも近く見える。この小型宇宙船からぜいぜい四~五〇〇メートルくらいだろうか。


 しかも宇宙船を中心に(ゆる)やかな窪地(くぼち)になっているので、丘の(へり)から先の景色が、まったく見えなかったのだ。



 どうりでトモミやアユムは、いつも突然ひょっこりと地平線から姿を現すわけだ。彼らは丘をのぼって、ここへやって来ていたのだ。



「ほんとそれ。この緑が丘で工事を始めると、いっつも不思議な事故が起きて、中止になるからねぇ……」



 さっきまで小型宇宙船を調べていたアユムが、いつのまにか神妙(しんみょう)な顔でわたしのとなりに座り、耳もとでささやいた。



「それに最近の話だけじゃないんだ。戦国時代、この場所に城を築こうとした領主(りょうしゅ)さまに、ひとりのお坊さんが訪ねて来てこう言ったんだ。


 この丘の地下には龍の玉が眠っています。ここに城を建てると龍の玉の怒りにふれ、貴方(あなた)様の一族は絶滅するでしょう……。


 領主(りょうしゅ)さまは城を建てさせないために隣国(りんごく)大名(だいみょう)が流した(うそ)の伝説だと決めつけ、一切取り合わなかった。けれど、城が完成したその夜、突然の大火事にみまわれて、城ともども、領主(りょうしゅ)さまの一族はひとり残らず焼け死んだんだ。龍の玉の怒りの炎のせいだって(うわさ)だよ……」



 じりじりと焼けるような夏の午後の陽射(ひざ)しが、わたしたちに照りつける。


 冷や汗ともつかぬ一筋のしずくが、トモミのあごからぽたりと落ちた、そのとき――。




 ピロロロ! ピロロロ!




 とつぜん鳴った電子音に驚いて、アユムは小型宇宙船からずり落ち、草原の中にしりもちをついた。それを見たトモミが、おなかを(かか)えて笑っている。


 ばつが悪そうに頭をかきながら立ち上がったアユムは、ポケットから小型の機械を取り出し耳に当てた。

 地球の通信機器らしい。



「はあい、ママ? いまトモミたちと遊んでいるの」



 アユムはいつものおっとりとした口調にもどっていた。オカルト話をしているときのアユムとは別人のようだ。



「あいつ、見せびらかすようにスマホ使うのよね。わたしが持ってないの知っててワザとやってんの。これだからボンボンは嫌よねぇ……」



 トモミがふんっと鼻を鳴らす。



 アユムはスマホと呼ばれる通信機器をしまうと、にこにこしながら


「おやつの時間だから、ぼく帰るねぇ」


 と言って、走って帰ってしまった。




 その姿が緑が丘の地平線に消えていくのを、わたしとトモミは黙って見送った。




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