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緑の丘の銀の星  作者: ひろみ透夏
第2話 アユム

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02-01 アユム

 

 

「なるほど。地球人の体は、マグロと(くさ)った大豆で構成されているのか……」



 思わず口にしたわたしのひとり言を聞いて、トモミがいぶかしげな顔をしたとき。



「そうとは限らないよう。ツナ缶と思っていたものが、よく見たらカツオの油漬けってことも、あるからねぇ」



 アユムだ。

 トモミのあとに決まって現れる。


 ずるずると小型宇宙船をよじのぼり、わたしの左どなりに座った。



「みんな気がつかないで、食べているけどねぇ……」



 アユムという、このおかっぱ頭の少年は、十二歳にしては少々小柄(こがら)でぼんやりとした少年だ。


 それ以外はまったく平凡で標準的な地球人のオス……いや男の子で、特筆(とくひつ)すべき点はひとつもない。



 トモミも標準的な十二歳の地球の女の子であるが、スラリとした体型でわたしより(ちょっとだけ)背が高く端正(たんせい)な顔立ちをしており、黙っていれば地球人のオス……いや男の子には好感が持たれるだろう。


 もちろん、地球人にはそう見えるというだけで、わたしから見れば、ふたりとも奇怪(きっかい)容姿(ようし)であることに違いはない。



「それは興味深い。わたしの経験上、味が似ているということは生物学的にも近い場合が多い。ええと、マグロとカツオ……。ふむ、どちらも海に()む生物のようだね」



 わたしは『全宇宙生物図鑑』の未開惑星編にある、地球のページをめくりながら言った。



「あったりまえじゃない! こんなに大きくてぶあつい図鑑を(かか)えているくせに、そんなことも知らなかったの?」



 そう言って図鑑をのぞき込んだトモミの眉間(みけん)に、みるみるしわが寄っていく。

 この星の言語で書かれていないのだから無理もない。



「これは古代シュメール文明で使われていた、くさび形文字のように見えるねぇ」



 アユムも反対側からのぞき込んできた。


 トモミと違ってアユムはおっとりとしているくせに、(みょう)な知識を持っていたりするので、わたしは図鑑をぱたりと閉じた。



「夏休みってさぁ、あと何日だっけじゃんみたいな~?」



 そして、地球人が子どものときにだけに使用するという珍妙(ちんみょう)方言(ほうげん)を使って、何気(なにげ)ない話題をふってみた。


 もちろん、話をそらすためだ。



「まだ一週間以上あるわよ。ハカセ、そんなに学校に行きたいの? 信じられない」



 トモミが肩をすくめる。


 なぜか彼女は、わたしのことをハカセと呼ぶ。わたしが銀河的に有名な生物博士であることは、知るはずもないのだが……。


 それにしても『夏休み』と呼ばれる、この星特有の子どもたちの休暇(きゅうか)制度(実状(じつじょう)は教師のための骨休み期間と考えられる)のせいで、あと一週間以上も、このように時間をもてあました地球の子どもたちが、昼間から大量に周辺をうろついているのは確かなようだ。



 やはりわたしは救助が来るまで、この場所にとどまっているのが無難(ぶなん)だろう。







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