01-02
「隊長! 前方から未確認飛行物体が接近中です!」
それは高度八〇〇メートルの上空、闇夜のなかでの遭遇だった。
「赤い光を点滅させながら、だんだんとこちらに迫ってきます! 扇風機をひっくり返したような、奇妙な形です!」
操縦席に座る青白い顔の男が、正面のスクリーンを睨みつつ叫ぶ。
しかし、うしろの座席に深く身を沈めた男は、膝の上に開いた大きな図鑑から目をそらすことなく、落ちつきはらってこうこたえた。
「隊員、わたしの資料によると、それは地球のヘリコプターというものだ。とてもエネルギー効率が悪く、騒がしい乗り物であるが、この星ではポピュラーな……」
隊長の言葉が終わらぬうちに、隊員は思いっきり舵を切った。銀色に輝く球状の小型宇宙船は直角に夜空を左折、衝突寸前でヘリコプターをよけた。
「こらあっ! わたしは生身の体なんだ。操縦に気をつけたまえよ!」
ごろごろと床を転がりながら隊長が怒鳴る。
しかし隊員は聞く耳を持たず、闇夜に消えていく赤い光を背面のスクリーンで確認しながら、ぽつりとつぶやいていた。
「見つかっちゃったかな……?」
この小型宇宙船を操縦している『隊員』は、有機体で構成されたバイオロイド(ロボット)である。
彼の本当の体は、月の裏側に停泊している母船にあり、そこから脳波増幅装置を使い、バイオロイドを遠隔操作していた。つまり一言で説明するなら『操り人形』。
なので、少々乱暴に小型宇宙船を操縦しようがへっちゃらで、乗り物酔いすらしやしない。
「すみません。生身の生命体を運ぶのは久しぶりなので……」
そう言って隊員はキョキョキョと笑ったが、まっ黒で大きな目玉以外、小さな鼻と口の穴があいているだけのバイオロイドの青白い顔に、表情はなかった。
ふらふらと頭を抱えながら、ようやく立ち上がった隊長は、急いで自分の席にもどると、読んでいた『全宇宙生物図鑑』に異常がないか確かめた。自分の背丈の三分の一もある大きな図鑑だが、いつも肌身離さず持ち歩くほど大切にしている。
やがて隊長は、ほっと安堵のため息をつくと、またもとのように深く座席に身を沈めて、図鑑を読み始めた。
「研究熱心ですね、隊長」
「隊長はやめてくれ。いつもは博士と呼ばれているんだ」
いつもは博士と呼ばれているこの男は、銀河でも四本の指(宇宙人の平均的な指の数)に入るほど有名な生物博士だ。いろいろな星をまわっては、さまざまな生物を採取、研究している。
「では博士ぇ、今回の任務は、いったい何でありますか?」




