5. はじめての魔力探し
一人になったことだし、さっそく魔力について思い出してみようっと。なになに。ふむふむ。
魔力って、おへその下にあるみたい? あと、なんとなく温かく感じるっぽいね。
で、温かさを感じたら、それを体中に回すように練習していくといいのかな。あ、それを “魔力操作” っていうんだね。
まずは、魔力を感じるところから。目を閉じて。……うん、全然分からない。なんでか息止めてたし。ぷはっ。
「温かいってことだから、手で温めてみる?」
そう思いついて、しばらく両手をおへその下に当ててみる。ちょっとは温かくなったけど、なんとなく物足りないような気がする。
「あっ、ストーブで手を温めてみるとか? それなら、もっと温かく感じるよね」
まずは、ストーブの近くに行って手を温める。あったかーい。そしたら、その手をお腹に当ててっと。あ、さっきよりは温かい!……でも、ちょっとの間だけだった。
「はぁ、最初の一歩から難しいよ」
記憶の中では、もっと簡単そうなのになぁ。なんでできないんだろう。お父さんに聞きたいけど、ほんとは洗礼式まで待たないとダメだもんね。こっそりやるしかないよね。はぁ。
とりあえず、おへその下を気にしながら、しばらく座って集中してみよう。何か出てくるかもしれないもんね。ふぅ。……うん、やっぱり分からない。
「そうだ! 台所でお水を出してみたら、何か感じるかも」
これは、いい考えなんじゃない?ふふん。
台所に行って、キラキラ石に手を当てて。お水が出てきたから、お腹に集中、集中。……うーん、温かくなったと言われたら、そんな気もするかもしれないって感じ。
結局そんなには分からなかった。
そういえば、少ししか魔力を使わないって言ってたもんね。魔法が使えたら分かるのかな。って、今そのために魔力を感じてみてるんだった。むぅ。
「はぁ、なんか疲れたー」
慣れないことをしたからか、なんだか眠くなってきたよ。お腹もいっぱいだしね。気分転換に、ちょっとお昼寝してこよう。
そうして、ベッドに入った途端に、すぅっと寝てしまったのだった。
「レティ、そろそろ夜ごはんだよ」
すっかり寝てしまってたみたい。お父さんが、わざわざ起こしにきてくれた。ちょっとすっきりしたけど、なんだかまだぼーっとする。でも、夜ごはんだしね。
そのあと夜ごはんを食べたけど、わたしが眠そうだったから、お父さんが「すぐベッドに行っていいよ」って言ってくれた。
「もしかしたら、誕生日ではしゃいでたから、ちょっと疲れたのかもしれないね。早くお休み」
今日は結局、魔力については何も分からないまま終わっちゃったなぁ。でも、色々と試すことはできたから、それは成功だもんね。ちょっと前進。……おやすみなさい。
⊹ ⊹ ⊹
「おはよう!」
今日は朝から元気。昨日いっぱい寝たからか、すっきり起きられたんだよね。今日も朝ごはんが美味しい。
「今日はハルトくんと遊んでくるんだよね?」
「うん!いつもくらいの時間に迎えに来てくれると思うよ。それまでは、絵本を眺めてるー」
「ははっ、そんなに絵本を気に入ってくれて、お父さんも嬉しいよ」
「ふふっ、早く自分で読めるようになるんだ」
「そうだね。来月までに、神殿教室に持っていくものを揃えないとね。今度お出かけして買いに行こうか」
「うん、行く! なんだかワクワクしてくるね」
そんな話をして、お父さんと笑い合う。
後片付けも終わって、お父さんは離れの作業場へ行ったから、わたしは絵本を開く。文字は読めないけど、絵を眺めるだけでも楽しいね。あと、魔法使いが杖から火を出してるのは、やっぱりすごいと思う。
絵本を眺めていたら、真ん中の鐘が鳴った。2の鐘は鳴ってたから、今は3の鐘までの真ん中だね。ということは、もうすぐハルトが迎えに来るよね。早めにコートを着てようっと。
「レティちゃーん、迎えに来たよー」
ほらやっぱりね。ハルトにお返事してから、作業場へ「行ってきます」って伝えに行く。これでよし。それじゃあ、ブーツに履き替えて出発!
「ねぇねぇ、今日も広場に行くの?」
「うん。ちょっとハルトに内緒話があるからね。家ではお話できないの」
「そうなんだ。どんなお話か、ちょっとドキドキするね」
「まずは、広場に着いてからね」
そこからは、昨日のこととか、神殿教室のことを話した。ハルトには、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいるから、教室がどんな感じなのか聞いてきたんだって。
教室では、文字の読み書きと、簡単なお金の計算とかも教えてもらえるんだって。この辺は、お父さんやお母さんも働いてる人が多いから、代わりに教えてもらうみたい。
だから、いつから通うかも、どれくらい通うかも人それぞれだし、お家で教えてもらえる子は通わないみたい。
話しながらだと、広場までの道のりもあっという間だった。寒いからか、あんまり人はいないみたい。でも、内緒話にはちょうどいいよね。
この広場は、街の真ん中くらいにあるんだけど、走り回れるくらいに広いから、よく遊びに来てるんだ。
春とかには、ふさふさの木の下でピクニックをしたりもするんだけど、今は木も寂しい感じだね。
今日はお話がしたいから、広場に入ってすぐのベンチに座る。向こうのほうのベンチには人がいるけど、遠いから大丈夫だよね。
「ねぇねぇ、ハルトは魔法って分かる?」
「魔法?……あ!そういえば、お兄ちゃんが今年10歳になったから、洗礼式を受けたんだけどね。そのときに、魔力っていうのを測ったんだって」
「そうそう、洗礼式! わたしも昨日聞いたの!」
「それでね、一部の子だけ、魔法を習う学校に行くかもしれないって言ってたんだ。その魔法のことだよね?」
「うん、そう!」
「でも、お兄ちゃんも魔法は見たことないって言ってたし、僕もよく分からないや」
「そうなんだね。魔法はね――」
わたしも見たことはないけど、お父さんは使えるらしいこと。あと、絵本で魔法使いが杖から火を出してたこと。それから、魔法の学校で習った人にしか魔法が使えないことも話した。
「わたしは、まずは魔法を使えるようになりたいの。そしたら冒険者になるんだー」
「冒険者ってなに?」
「えっとね、魔物をやっつけるお仕事なんだけど、色んなところを自由に旅するの。魔法を使ったり、剣とかでも戦ったりするんだよ」
「えー格好いいね! しかも色んなところに行くなんていいなぁ」
「でしょでしょ。だからね、わたしも魔法の学校に行きたいんだけどね。問題は、洗礼式なんだよね」
「そっか、魔力が多くないとダメだもんね。僕も魔力が多かったら、魔法の学校に行きたいなぁ」
「ハルトなら、そう言うと思った!」
嬉しくなって、思わずハルトの手を握ってしまう。ぶんぶん手を振っていると、二人ともおかしくなって、笑い出してしまった。
「でも、魔力が多いか少ないかなんて、自分でも分からないよね。洗礼式で魔力が少ないって分かったら、がっかりしそう」
「ふっふっふ。わたし今ね、魔力が増やせないか試してるの」
「えぇー! レティちゃん、すごいね!」
ふふっ。ハルトってば、びっくりして目をぱちぱちしてる。
「でも、昨日から始めたばっかりだし、まだ全く分からないんだけどね」
「そっか。僕も分からないけど、増やせたら学校にも行けるもんね。僕も試してみる」
「そうこなくっちゃ!」
そこからは、魔力はお腹にあって、温かく感じるらしいこと。それを体中に回せるようにすること。そして、わたしなりに色々と試したことを話した。
ハルトもお腹に集中してみたり、手を当ててみたけど、やっぱり分からないみたい。
「そういえば、絵本では杖から火を出してたんだよね。火は危ないけど、お水が出せたら、魔力って感じられないかなぁ。台所でお水が出るみたいに」
「えっ、杖から火が出るの?」
「そうなの。杖があれば、お水出せるかな?」
「うーん、どうだろう。でも、試してみないと分からないよね。杖ってどんなの?」
「絵を見た感じでは、木でできてる棒みたいだったよ」
「じゃあさ、木の下に落ちてる枝で試してみようよ」
「そうだね。大きさはこのくらいで――」
そう言って、手で大きさを伝える。それから、木の下に行って、いい感じの枝がないか二人で探してみる。
お互いに拾って見せ合いっこするけど、なかなか見つからない。そうして広場を歩きながら、別の木の下に行ってみると、いい感じの枝が1本あった。
「これどう?」
「あ、よさそう。それ使ってみよー」
「じゃあ、レティちゃんにあげるね」
「うん!やってみる!」
まずは、絵本の魔法使いみたいに、枝の真ん中あたりを握って、胸のあたりにもってくる。うん、いい感じ。
そうして、なんとなくだけど、お水が出るのを想像しながら
「水!」
と言って、えいやー!っと枝を前に出してみた。だけど、水は出なかった。
「うっ、出なかった」
「出なかったね」
「しかも、魔力も分からなかった」
「そうなんだね。うーん。それなら、魔力が枝から出ると思いながらやってみるとか?」
「あ、それよさそう!」
次は、枝から魔力が出ると思って、体の中を感じてみる。そうして、お水が出るのを想像しながら
「水!」
と言って、枝を突き出してみた。そうしたら、今回も水は出なかったけど、お腹のほうに何かを感じた。
「ハルト!お腹に何か感じたよ!」
「えーすごい!僕もやってみたい」
「うん、やってみて。はい」
枝を渡して、ハルトが試すのを見ていると、やっぱりお水は出なかった。だけど、何度かやってみたら、お腹に何かを感じたみたい。
そのあとも、お腹の感じがつかめるまで、交代で何度か試してたけど、ちょっと疲れたのでベンチに戻った。
ベンチに座って、ちょっと休憩。ふと隣を見たら、ハルトがお腹をさすさすしていた。
「お腹のこれが魔力なのかな。不思議だね」
「そうだよね。でも、こうやって感じられると面白いね」
「うん、楽しかったね」
「次は、これを体中に回すみたいなんだけどね。今日はここまでかなぁ」
「そうだね。3の鐘も真ん中の鐘も鳴ってたから、そろそろ帰らないとだもんね」
広場を見渡してみると、もう誰もいないようだった。夢中になってたから、あっという間だったね。
「あ、そうだ! 本当は魔法は使っちゃダメだから、これは二人だけの秘密だよ。誰にも言わないでね」
「うん。約束だね」
広場を出て、来た道を歩いていく。枝を振り回したりして、ちょっとぽかぽかしてたけど、やっぱりまだ風は冷たいね。歩いていると、急に寒くなってきたように感じた。
ハルトとは、それぞれ家でこっそり練習してみること、来週にまた広場に行って、お互いに報告し合うことを約束して、お別れした。
一人で試してみるのも面白かったけど、違う思いつきもあったし、ハルトに話してみてよかったなぁ。それに何より、すっごく楽しかったし。来週も楽しみ!
それまでに、魔力を回せるようになってるといいんだけどな。




