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魔獣出現で都市国家化して魔法少女戦国乱世!!?  作者: 山田衛星


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第9話

この物語はフィクションであり実在の存在とは一切関係ありません。



 わたし、綾糸つむぎ。小学五年生。多摩連邦の末っ子の魔法少女です。今日は学校帰ったら宿題しようと思ってたのに──


 【緊急警報:ゲート出現予測 残り時間 00:03:45】

 【位置:立川駅南口 脅威レベル:A】


「やば……これ私がやらないと!」


 ランドセルは途中の公園に隠して、人気のない路地へ走る。慣れてるから平気。変身は何度もやってきたから、もう怖くない。


 深呼吸して、両手を胸元で組む。


「綾糸つむぎ──行きます!」


 足元に紫色の蜘蛛の巣紋がぱっと広がった。銀色の蜘蛛糸が旋回し始め、わたしの身体を包むように絡みつき、光へと変わっていく。黒と紫の忍者ロリータ装束が形になり、スカートのフリルがふわっと揺れる。髪が少し伸び、サイドテールにまとまって、首元には蜘蛛型チョーカーが出現。黒タイツと紫のニーハイブーツが足元に現れ、最後に背中の蜘蛛紋章が銀色に光る。


 変身完了。


 糸を指先から伸ばし、ビルの壁に張って跳ぶ。高速ワイヤーアクションで駅前へ。風が顔に当たって、ちょっと気持ちいい。でも、今は戦闘モード。


 ゲートはすでに開いていて、巨大な……狼?虎?みたいな魔獣が一体、地鳴りのように咆哮していた。


「ひゃ……でか……!」


 体高は5メートルくらい?ビルの2階くらいある。真っ黒な毛並みに、赤い目が光ってる。牙がギラギラしてて、めっちゃ怖い。でも、逃げない。雅お姉ちゃんといづなお姉ちゃんも八王子で戦ってるし、私が立川を守らないと。小角さんも今日は留守だし。


「行くよ……!」


 糸を複数展開して足場を作り、一気に距離を詰める。魔獣が飛びかかってくるより早く、私は見えない糸を足元に張り巡らせた。地面すれすれ、魔獣が踏み込む場所に罠を仕掛ける。


「捕まって──『銀縛り』!」


 地面の影から糸が立ち上がり、魔獣の四肢を締め上げる。ギュッと絞め込んで、動きを止める。でも、相手は脅威レベルA。体格が大きすぎて完全には封じ切れない。糸が引っ張られて、少しずつほどけていく。


「っ……暴れ方つよ……!」


 魔獣が前足を振り回し、ビルの壁面が抉られる。瓦礫が飛んできて、わたしは糸で飛び退いた。上空へ逃れて、視界がぐるんと回転する。でも、冷静に。焦ったら負ける。魔法少女になってから、何度も戦ってきた。この2ヶ月ちょっと、わたしは日野を守ってきた。できる。


「中身が熱い……核が胸の奥にあるタイプ……!」


 魔獣の身体の中心、胸のあたりがほんのり赤く光ってる。あそこが弱点。でも、どうやって近づく?魔獣がこちらに跳び上がってくる。空中戦は苦手。でも──


「なら……!」


 指先から無数の糸を放ち、魔獣の胴体に巻き付ける。体重差なんて関係ない。蜘蛛糸は、意思で動く。わたしが「動け」って思えば、どんなに重くても動かせるハズ。


「よい! しょっ!」


 糸を地面に叩きつけるように操作し、魔獣の身体を強引に軌道修正する。空中で一瞬制御権を奪って、地面に落とした。着地の衝撃で、周囲に砂煙が上がる。地面が揺れて、駅前のガラスが割れる音がした。


「見えた……ここ!」


 胸元へ向かって糸を一点集中し、銀色の杭のように束ねて射出した。何本もの糸が一つに収束して、槍みたいに鋭くなる。


「『銀糸杭』──!」


 糸の束が魔獣の胸を貫いた。核に直撃。魔獣が悲鳴を上げて、身体が霧散し始める。やった!と思った瞬間──


 尻尾が大きく振り回される。


「あっ──!」


 視界が回転し、わたしの身体が吹き飛ばされた。背中から地面に叩きつけられ、息が詰まる。痛い。すごく痛い。でも、変身は解けていない。まだ戦える。


「いたた……」


 少しだけ動きが鈍くなった。立ち上がろうとするけど、身体が思うように動かない。魔獣は核を貫かれたはずなのに、まだ完全には消えていない。最後の足掻きで、再びこちらに向かってくる。ゆっくりと、でも確実に。


「まずい……!」


 糸を張ろうとするけど、間に合わない。魔獣が目の前まで迫る。


 そのとき──


土蜘蛛シルクス、伏せて!」


 上空から、イヅナお姉ちゃんの声。


 反射的に地面に伏せると、黒炎と朱色の紋様が渦を巻く呪火が、魔獣の頭部を直撃した。精神と存在を焼く『飯縄火炎』。魔獣は悲鳴を上げることもなく、完全に霧散した。光の粒子になって、消えていく。


 イヅナお姉ちゃんが、影の翼を広げてわたしの隣に降り立つ。狐の面を頭に乗せた姿が、すごくカッコいい。


「大丈夫?土蜘蛛シルクス


「うん……ありがとう、イヅナお姉ちゃん」


「ま、ギリギリセーフってとこか。でも、一人でよく頑張ったね」


 いづなお姉ちゃんは、わたしの頭をぽんぽんと撫でてくれた。ちょっと恥ずかしいけど、嬉しい。温かくて、安心する。


 配信チャット欄が、一気に爆発していた。


土蜘蛛シルクスちゃん頑張った!』

『小学生でA級倒すとか天才かよ』

『イヅナちゃんナイス救援!』

『立川も無事!』

『多摩連邦マジ最強』


 画面を見て、ちょっと照れる。みんな、応援してくれてる。




 家に帰って、ランドセルを置いて、リビングでお茶を飲んでる。お母さんが「おかえり」って笑顔で迎えてくれた。魔法少女のこと、家族は知ってる。最初はすごく心配されたけど、今は「気をつけてね」って送り出してくれる。


 宿題を広げながら、今日のことを思い返す。


 雅お姉ちゃんといづなお姉ちゃんは八王子で三体も倒したって聞いた。すごい。わたしは一体だけで精一杯だったのに。でも、いづなお姉ちゃんが「よく頑張った」って言ってくれた。それだけで、すごく嬉しい。


 小角さんは今日、23区の北東域に行ってる。夜まで戻らないって。いつも一人で危ないことしてる気がする。でも、きっと大丈夫。強いから。


 電脳の共有チャンネルを開いて、メッセージを打つ。


*『今日もみんなお疲れ様でした!立川、守れました!』


 力こぶの絵文字をつけて送信。


 すぐに返事が来た。


*『つむぎちゃん、本当にありがとう。助かりましたわ』(雅お姉ちゃん)

*『つむぎ、またドーナツ食べにいこーぜ』(いづなお姉ちゃん)


 画面を見て、また笑顔になる。


 明日も、魔獣が出るかも。でも、怖くない。わたしには仲間がいるから。雅お姉ちゃん、いづなお姉ちゃん、小角さん。みんながいるから、頑張れる。


 宿題を片付けて、早く寝よう。明日も、きっと忙しい一日になる。




何卒、応援のほどお願いいたします。

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