第23話 登場キャラクターの補足とか
この物語はフィクションであり実在の存在とは一切関係ありません。
夜の多摩連邦は静かだ。雅が張った結界のおかげで、風の音すら柔らかい。その穏やかな空気の中で、俺は布団に突っ伏したまま、ぐだーっと足をばたつかせていた。
「……なんで俺、こんなことになってんだろ」
天井を見上げ、ぼそっと呟く。
——いや、答えは知っている。名前だ。名前が全部悪い。
役野小角。
TS前、五十路のおっさん。TS後、十四歳の魔法少女。
ああもう、こうして言葉にするだけでも頭が痛い。
「“役小角”なんてガチレジェンドと同じ名前つけられたら、そりゃ引っ張られるよな……」
修験道の開祖。鬼神を従え、日本中を跳び回り、最後は大天狗・石槌山法起坊に昇華した超人。
そんなバケモンみたいな存在と名前が同じって、どう聞いても呪いのフラグだろ。
魔法少女名が「オズ」なのは気に入ってるけど、たぶんそれも役行者の“オヅノ”から来てるんだよな。逃れられない血筋みたいなやつ。
枕を抱えながら、俺は続けて頭の中を整理していく。
「いづなは……まあ、あいつは“飯縄権現じゃない”って言われても驚かないよな」
世間は勝手に、“飯縄権現の魔法少女”って勘違いしてるけど、中身は違う。
本当はいづなの特性は「飯縄三郎」——権現の眷属であり、ときに“もう一人の権現”みたいに扱われる大天狗だ。
つまり、あいつも俺と同じで“人外ギリギリカテゴリー”。
しかも元の名前が葛葉三郎。そりゃそっちに引っ張られるわけだ。あと、魔法少女名がそのまんま「イヅナ」なのも誤解を後押ししてるよね。
「……本人は気にしてないけどな。むしろ楽しんでるまである」
あいつ、変に大人びてるくせに、たまにギャルっぽく絡んでくる。こちらの心を乱すのが趣味なんじゃないかと疑うレベルだ。
次に思い出すのは、雅だ。
「雅の“八王子権現”は、まあ……反則級に強いよな」
八雷刀だの八雲弓だの――状況に応じて呼び出される、まるでRPGのラスボスみたいな八紋神器。歴史にそんな武器の記述ないのに、普通に存在してるのがすごい。
牛頭天王の権威、八人の王子の霊力、そして雅の圧倒的カリスマが全部ミックスされた神格。
八王子は八大龍王とも一緒にされるから、うまいこと顕現してくれた理由のひとつかもしれない。
ぱたん、と仰向けになる。
頭の中に、つむぎの笑顔が浮かんだ。
「……つむぎは、なんというか……うん。かわいいよな」
同級生や年下の子の面倒をよく見るしっかり者で、時々ちょっとお姉さんぶるけど実は子どもっぽいところもある。隠形能力が超優秀で、存在感を消して人を助けに行く。あれは本当に“優しさの化身”みたいな力だと思う。
最近は、気づいたら俺の隣にいることが多い。つむぎの方は多分無自覚だろうけど……まあ、悪い気はしない。
そして、最後に思い出すのが——かえで。
「真のメスガキって言葉、あいつのためにあるよな……」
特性は「大峰山前鬼坊」。役小角の従者だった“前鬼”が大天狗化した存在。
それがかえでの力となり、最近はその“立場”まで受け継いでる気がする。俺にべったり懐いてるのは……いや、ありがたいけど、うるさい時は本当にうるさい。
そうやって一人一人を思い返していくうちに、気づけば部屋の空気がほの温かくなっていた。
「……なんだかんだで、今の俺、仲間に恵まれてるよな」
TSされて、名前に呪われて、魔法少女になって、修験道の理不尽世界に巻き込まれて——
それでも俺は、たぶん、ひとりじゃない。
結界の外で風がひゅうっと鳴り、部屋の温度がわずかに下がった。俺は布団の端を指でつまみながら、さっき雅が言っていた話を思い返す。
「……横浜連邦のリーダー、関凛華。元・暴力団の幹部だった、って本当なんだよな」
雅は「横浜は力でまとめるタイプだから」と苦笑していたが、俺はどうしても胸の奥に引っかかりが残る。
権力に“闇”が混ざるときの匂いを、俺は何度も見てきた。改変前でも、この姿になってからも。
横浜。
港の裏社会。
そして、元ヤクザの魔法少女リーダー。
「……ちょっと、きな臭いよな。」
まだ誰も危険だなんて言っていない。実際、何も起きていない。けれど——胸の奥に沈んだこの小さなざわつきだけが、やけにしつこく残った。
何卒、応援のほどお願いいたします。




