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魔獣出現で都市国家化して魔法少女戦国乱世!!?  作者: 山田衛星


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第11話

この物語はフィクションであり実在の存在とは一切関係ありません。



 つかさと出会った翌日、俺はまた、瞬間移動で秋葉原へ跳んだ。そして今回は、北東、葛飾方面へ向かって歩き始めた。


 街の空気が、徐々に変わっていく。秋葉原の雑踏が遠ざかり、建物の崩壊度合いが明らかに増していく。窓ガラスはほとんど割れ、壁には魔獣の爪痕が生々しく残っている。人の気配も、まばらになっていく。


 電脳の地図を確認する。北東域——足立、葛飾、江戸川。赤く表示された警戒エリア。【魔獣出現頻度:高】【魔法少女不在】【行政機能:停止】


 ——やっぱり、ひどいな。これならもう変身した方がいいだろ。


 いちおう路地裏で変身する。黒い翼が大きく展開され、白いブラウスと黒のフレアスカートに変わる。頭上に小豆色の頭襟が現れる。変身完了だ。


 俺は、跳躍して廃ビルの屋上に立った。周囲の気配を探る。魔獣の残留霊気が、そこら中に漂っている。最近、複数の魔獣が暴れたらしい。建物の崩れ方が新しい。


 そのとき、視界の端に小さな影が横切った。


 ——人?


 眼下には、小さな人影。子供だ。赤いパーカーを着た、小柄な女の子。ツインテール。年齢は——小学生? いや、もう少し上か?


 彼女は崩れた商店街を駆け抜けていく。動きが速い。慣れてる。この荒廃したエリアを、まるで自分の庭のように走っている。


 俺は黒い翼を広げて、音もなく彼女の後を追った。屋上から屋上へ、静かに跳躍する。彼女は一度も振り返らない。目的地があるみたいだ。


 やがて、彼女は半壊したアパートの前で立ち止まった。周囲を警戒するように見回してから、入り口に入っていく。


 俺は近くのビルの屋上に降り立ち、様子を見守った。アパートの窓から、微かに明かりが漏れている。人がいる。それも、複数。


 ——孤児たちの隠れ家、か?


 電脳のニュースで読んだことがある。北東域は行政が崩壊して、取り残された子供たちが多いって。


 そのとき、アパートの入り口が勢いよく開いた。


 赤パーカーの女の子が飛び出してくる。表情が、さっきとは全く違う。焦りと、恐怖と、それから——自分を責めるような色。


「アッコ! アッコー!!」


 彼女は周囲を見回しながら、必死に叫んでいる。声が震えている。


 俺は反射的に駆け出していた。


「どうしたの!?」


 彼女は俺を見て、一瞬驚きの色を見せた。でもすぐに、状況が状況だと判断したのか、叫んだ。


「アッコが……アッコがいないの! 絶対あたしのせいだよ! あの子、あたしの後追っかけて……バカ」


 言葉が途切れる。彼女の目に、涙が浮かんでいる。


「落ち着いて。私、探すの手伝う」


「手伝う……?」


 彼女は俺を見た。疑いの目。でもその奥に、すがるような何かがあった。


「アンタに何が分かんのよッ! ここでどんだけ必死で生きてきたか、知らないくせに!」


 突然、彼女が叫んだ。


「アタシが守れなかった……アタシのせいで……! アタシが、ちゃんと見てなかったから……!」


 感情が爆発する。声が震えて、涙がこぼれる。彼女は自分の拳を握りしめて、地面を睨んでいる。


 ——ああ、この子。


 俺は、彼女の肩に手を置いた。


「分かんないかもしれない。でも、探したい。手伝わせて」


 彼女は俯いたまま、小さく頷いた。


「……アッコは六歳。ちっこくて、茶色の髪で、ピンクのリュック背負ってんの」


「分かった」


 俺は目を閉じて、意識を集中させた。法起坊の力——修験道の呪術。周囲に意識を広げていく。崩れた建物、放置された車、漂う魔獣の残留霊気。その中から、小さな生命の気を探る。


 ——閃いた。


 ここから北西の方角。微かだけど、確かに子供の気。そして、その近くに——魔獣の気配。


「北西の方角だ! 急ごう」


 赤パーカーの女の子が顔を上げた。


「……本当に分かるの?」


「もちろん。信じて」


 彼女は一瞬迷ってから、頷いた。


「――変身 」


 赤と黒の和風ゴスロリ装束。小さな赤い鬼の角が頭に生える。


「……あたしは鬼童きどうかえで。魔法少女やってんの」


役野小角えんのおづの。同じく、魔法少女」


「……じゃあ、行こ」


 二人は北西に飛んだ。


 俺は黒い翼で滑空し、かえでは赤い霊気の翼で地面を蹴りながら跳躍を繰り返す。風が顔に当たり、髪が激しく揺れる。崩れた建物が次々と視界を過ぎていく。商店街の看板が半分落ちかけていて、歪んだ文字が陽光に照らされている。


 かえでの動きは俊敏だった。鬼の身体能力なのか、地面を蹴るたびに5メートル以上跳躍する。空中で身体をひねって方向を変え、次の足場へと着地していく。まるで獣のような動きだ。野性的で、でも確実。この荒廃した街で生き抜いてきた経験が、その動きに現れている。


 「この先! すぐだ!」


 俺は叫んだ。子供の気配が、すぐそこまで近づいている。でも同時に、魔獣の気配も濃くなってきた。嫌な予感が背筋を走る。


 崩れた商店街を駆け抜ける。半壊した薬局、窓ガラスが全て割れたコンビニ、看板だけが残った居酒屋。かつて人々が行き交っていた場所が、今は廃墟と化している。地面には魔獣の足跡が残っていて、アスファルトが抉られている。


 そして——


「アッコ!」


 かえでが叫んだ。




何卒、応援のほどお願いいたします。

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