36
今日も予報通り朝から快晴である。8月の半ばを過ぎているとはいえ、まだまだ日差しは強く、山間部での紫外線はかなり強いように思われた。涼子も顔はもちろんのこと、手足にもしっかり日焼け止めクリームを塗ってコースに出た。昨日敬介から聞いていたように、ノーキャディで2人乗りカート2台のセルフラウンドである。ミスショットしてもあまり気を遣わなくて済むし、何と言ってもグリーン以外はカートでフリー走行できることで、涼子にとって時間に追いかけられずに移動できるのがよかった。
澪はバックティから打ちたいと言ったが、素人相手に調子に乗るなと深田と敬介の両方から叱責されて断念したようなので、涼子もレディースではなくレギュラーティから4人いっしょにラウンドすることにした。スタートホールは林に囲われたストレートのミドルホールだ。高木が3オン2パットのボギー、深田は2オン2パットでパー、澪はいきなりバーディを取った。
「みなさん、お上手なんですね」
涼子はお世辞ではなく素直にそう言ってから、60センチほどの2パット目を沈めた。涼子は4オン2パットのダブルボギーだ。
澪は4ホール目が終わってからカートのバッグを積み替えて、涼子と一緒にラウンドしてくれた。涼子はスイング自体に問題はないが、グリップが根本的に間違っているとのことで、澪に両手とも何度も直されて、最初は握りにくかったが、それを我慢して3~4打その通りに打ってみると、それまでフェード気味だったボールが見違えるようなスレートボールで自分が思う方向に飛んでいき、涼子は急にゴルフが上達したようで嬉しくなった。やはり澪はすごかった。大学のゴルフ部で、プロプレイヤーにでもなろうかという人たちは違うんだなと、澪の1打1打のショットやその球筋を目の当たりにしてそう思った。どちらかというと細身の身体で、プロを目指す気もない澪でさえ、放つボールはどこにそんなパワーを秘めているのか、上級アマチュアの男性顔負けの飛距離を出していた。
「ああ、今日はほんとに楽しくゴルフができたわ。澪ちゃんのおかげだね。ありがと!」
涼子はゴルフバッグをカートから降ろしながら澪に笑顔で礼を言った。
「いえいえ、涼子さんはスイングが基本に忠実だから、間違ってるところをちょっと直せばボールが変わると思っただけなんです」
澪は涼子に対しては何故かタメ口ではなく、敬語を交えて普通に話す。
「そうなのかなあ…。でも確かに昔っていうか、澪ちゃんぐらいのとき、まじめにスクールに通って教えてもらったことあるから、それが良かったのかもしれないね」
涼子はショートアイアンを持って軽くスイングして見せた。
「うんうん、そう、そのままでOK。グリップだけ気を付ければ100なんかすぐ切れちゃいますって。涼子さんは100じゃなくって、ちゃんとコースマネージメントを覚えて、90切ることを目指すべきですよ」
澪は涼子に向かって軽く拍手するように手をたたきながら頷いた。
「えーっ、そんなの無理だよ」
涼子は精一杯煽てられていると分かっていても嬉しかった。結局最後まで澪とツーサムプレイのようになってしまったが、1ラウンド通して回ったので4時間足らずでホールアウトできた。その結果は澪 73、深田 82、高木 89、涼子が103であった。涼子はキャリアハイのベストスコアである。それもレディスティではなく、レギュラーティから打ってベストが出たのだった。これであれば仕事でのお付き合いゴルフでも楽しめるかもしれないと考えると本当に嬉しくなってきた。
「夕食まで2時間以上あるし、風呂は部屋で入ってしばらく休んでゆっくりしますか?」
高木が深田と涼子たちに尋ねた。
「そうしようか。ここの大浴場で風呂上りに1杯飲んで、それが2杯3杯になって晩飯食えなくなったら困るからな」
深田が笑いながら右手で酒を飲む仕草をした。
涼子も澪も笑顔で頷いて承諾した。




