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100日の恋  作者: すみっこのラスカル
カクテル言葉
33/44

33 サイドカー(いつも二人で)

1階ロビーフロアは3階まで吹き抜けになっており、その奥の部分がコーヒーラウンジになっている。朝食ビュッフェもここで行われるとのことだった。

 果たして女性を同伴している深田慎一郎は手を挙げて笑顔を送ってきた。高木も同じように手を挙げて彼らのテーブルに向かうと、2人は立ち上がって笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは」

涼子も笑顔で挨拶した。

「こんにちは、ひとりぼっちの新幹線、寂しくなかったですか?」

深田は人差し指で涙が落ちる仕草をを眼の下で真似て、悲しそうな表情を無理に作ってからすぐに笑顔に戻った。

「いえ、子供じゃないですからね」

涼子はにっこり微笑んだ。

「おいっ慎、そんなつまんない話はどうでもいいから、澪ちゃんをちゃんと紹介しろって」

高木に澪と呼ばれた女性はニコニコしながら二人の会話を聞いている。

「えっと、これ、僕の妻ではなく、ましてや愛人でもない、ちゃんと血の繋がった正真正銘の妹です。ミオっていいます。サンズイヘンにウカンムリの令、1文字でミオって読みます」

深田が澪のことをちょっと照れながらやっと紹介した。背丈は涼子と同じぐらいだが身体全体は筋肉質のようでがっしりしているように見える。ウェーブのないロングヘア―をポニーテールとシュシュでまとめて、テーパードパンツがよく似合う今どきのキュートな女の子である。

「はい、深田澪っていいます。でもウカンムリじゃなくアメカンムリです。雨に令です。いま大学4年で、とりあえずはスポーツアパレルの会社に内定もらってます。兄とは歳が離れてるけど、両親からは確かに妹だと聞いています。でもDNA鑑定はしたことないけどね。以上‼」

澪はちょっと笑みを浮かべながら、それでも大真面目に自己紹介した。

「それと、こちらは山野涼子さん」

深田は澪に涼子を紹介する。

「はじめまして、山野涼子と申します。このたびはお誘いいただきありがとうございます」

涼子は澪に向かって丁寧に頭を下げた。

「いやだあ、お誘いいただいてなんてぇ、私も誘われた側なんだけど。ねえ、慎兄」

澪は深田に笑いながら同意を求めた。

「うん、まあ、そうなんだけど、こいつ4年生だからもう引退してるんだけど、いちおう大学のゴルフ部にいるんで、ラウンドレッスンするにはちょうどいいと思って連れて来たんだよ」

深田が高木に向かって同意を求めるように頷いた。

「澪ちゃんなら山野さんも気を遣わなくて済むだろって」

高木も首をコクコクして頷きながら澪と涼子を交互に見てから、手を挙げてウエイターを呼んだ。

「とりあえず明日のラウンドのことを話しておきたいから、何か飲み物でもどうぞ」 

4人は丸テーブルを囲んでゆったりとしたそれぞれのラウンジチェアに腰を下ろした。

高木がこのゴルフ場のローカルルールやセルフカートでラウンドする際の注意事項などを説明したあとは、もっぱら澪のゴルフ大会の成績や涼子のディレクターキャリア、それに高木と深田のバンド経験などで話が盛り上がって、高木の病状についてはわざとなのか、たまたまなのかは不明だが、まったく話題に上らなった。気になっていたのは涼子だけではなかったはずだが、それを訊けるような雰囲気にはならなかったので、皆あえて口には出さなかったようだ。夕食は3階の中華レストランで四川料理とのことで、2時間後にレストラン集合で一旦別れることになった。


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