18話 ギルドの素材カウンターで驚かれて、ギルドマスターに呼び出しをくらう
ドラゴンロードを討伐したことをギルドに報告しにいく森の中の道の途中。
「冒険者の被害者の遺品は、回収出来ませんでした」
とシュププは言う。
「まあ骨も残らない高熱のブレスだったし、しゃーない」
と私が言う。
「エリア様、次はどこに行くです?」
「冒険者ギルドに報告しにいく」
そして報酬ゲットだ。
「冒険者ギルドに報告……僕が魔獣であるとうっかり喋らないようにするです」
うっかり喋るだろうなぁ。
まあ服従済みの魔獣を連れ回すことは別に何のお咎めもない。
「夕食は何にするです?」
「お嬢様、何か食べたいものはありますか?」
「ええい、シュププとカスパール君、どっちも語尾がですます口調で、どっちが喋ってるのかややこしいんじゃ!」
「「?」」
下手くそなラノベあるある、今誰が喋ってんねん問題。
主に書き分けが出来ていないプロ成りたてに多い。
「というわけでカスパール君。今後は語尾にヤンスとつけるように」
「酷いですヤンス!?」
「ですは要らない」
「さすがお嬢様!」
いざ冒険者ギルドへ!
◇ ◇ ◇ ◇
ギルドの納品カウンターでは、素材鑑定が受けられる。私は皮袋に詰めたドラゴンロードの灰を見せる。
「うおおお、これは……ドラゴンロードの灰でヤンス〜!!」
「納品カウンターのモブのくせに変な口調使うなッ!! カスパール君と被るだろうが!!」
「じゃあ僕はもうヤンスヤンス言わないで良いですかね」
「お嬢様の決めた事を破るつもりですかこのクソトカゲ」
「ヒィィ……めっそうもありません、ヤンスです」
納品カウンターのモブがギルドマスターを呼ぶ。
ムキムキなおじいちゃんが現れる。
「面倒な事になってるな……お前らこっち来い」
私達はギルドマスターに連れられ、ギルドの奥に通される。装飾の無い、普通の部屋だ、つまらん。
「で? 何があった?」
「実はかくかくしかじか」
「何ぃ!? 福山雅◯が結婚しただと!?
……誰だそれ」
「ヴヴッ、私もう生きていけない……ぐすん」
「ふざけてないで、ちゃんと話せ。
村を占拠していたというブルードラゴン討伐に向かったBランクのベテラン冒険者が一人も帰ってこなかった。そしてお前たちの持ってきたドラゴンロードの灰。つまり……」
ギルドマスターの言葉にシュププが続ける。
「ギルドマスターのお察しの通り、魔獣四天王のドラゴンロードが現れました」
「なんてことだ……だが、灰を見るに討伐出来たのだろう?」
「はい。ですがギルドマスターのお察しの通り、新たに判明した魔獣四天王のゴブリンロードが蘇生術を使えるようで、既にグレートオーガが復活しています」
「は? 蘇生術って勇者が使える伝説の秘術だろ? というかゴブリンロードって何だ、聞いていないぞ」
「はい。さらにギルドマスターのお察しの通り、魔獣四天王のヴァンパイアロードなる者が王子暗殺計画を企てています」
「待て待て、何だヴァンパイアロードって」
「はい。あとギルドマスターのお察しの通り、ドラゴンロードも、間もなく復活するでしょう」
「待て、情報が大洪水を起こしている。いったん整理させてくれ」
ふ〜っ、とギルドマスターは息を吐く。くせぇ。
「つまり、魔獣四天王はグレートオーガ、ドラゴンロード、ヴァンパイアロード、ゴブリンロードの4体が新たに現れた。グレートオーガは討伐されたが、ゴブリンロードにより復活。ドラゴンロードは討伐されたが、同じように間もなく復活しそうだと。さらにヴァンパイアロードは王子暗殺計画を企ててる、と」
整理されてねー。シュププが言ったこと繰り返してるだけじゃん。
そういえば、ヴァンパイアロードは読心術を持っている可能性があるとかないとか。まあいいか。
「……他に報告はあるのか?」
「無い」
「ホッ、僕が元魔獣であることや、ヴァンパイアロードが読心術を使える事は秘密に出来ました」
「お嬢様の奴隷の自覚が足りないクソトカゲ、語尾にヤンスをつけなさい」
「ヒィィ! ヤンス!」
「おい、読心術って何だ!?」
報告って面倒だなぁ……。




