14話 アホ王子2
ギルドに通わず、宿と森の往復をひたすら繰り返し、2ヶ月間の修行を終えた。
「お嬢様、そろそろ資金が尽きそうです」
「じゃあ、そろそろギルドに行って依頼をこなしていこうか」
メイドのシュププとともに、宿を出る。
「シュププ、今のところ私の目標は2つ」
「どんな目標でしょうか、お嬢様」
「爵位をとることと、ギルドランクをAにすること」
「素晴らしいです、お嬢様!」
ギルドランクは最大Sだけど、これは魔王を討伐するにふさわしい勇者にのみ贈られるものだ。
ゲーム内では主人公が持つことを許された。
だから私はAランクを目指すに留める。
うっかり勇者になろうものなら、何のフラグを立ててしまうか分からない。
ゲームの主人公に頑張ってもらうことにしよう。
◇ ◇ ◇ ◇
ギルドに入る。
さてと、目ぼしい依頼は無いかな〜。
「おい」
お、これは良さそうだ。
東北の村に現れたブルードラゴンの討伐。
「おい、聞いてるのか」
「シュププ〜、これにしよ〜」
「はい、お嬢様!」
「おい!」
うるさいな、誰?
私を呼ぶのは、金髪で整った見た目をした、貧相な体の男。確かコイツは……あぁ思い出した。
「第一王子様、クラウン・アストライオス!」
「人を指差すな無礼者め」
「ちなみに私の名前は?」
「エミリ……じゃなかったエリアだろう」
「正解っ!」
間違えそうになってたけど許してやろう。
しかし何故か、第一王子様は不審な目で私を見つめる。
「……本当にエリアか? 悪魔が取り憑いていないか?」
「はぁ〜? 取り憑いてませ〜ん、ぷっぷっぷ〜」
「……」
第一王子様は驚いたように瞳孔を開いて私を見つめる。
何やねん。というか何しにギルドに来たのか。
「まぁいい。お前に指名依頼だ。王宮に水を入れに来い」
「私に?」
王子様直々の指名依頼。
はて。そんなに名を上げていないのだけれど。
なお指名依頼は断ってもペナルティは無い。
「というかレーヴァテイン元伯爵の者なら誰でも良い。王宮の水が足りないのだ。お前を高給で雇ってやろう。来い」
「まぁなんて素敵なお誘い! おととい来やがれ!」
「ん?」
一方的に我が一族を追放して、それで困っていますだぁ? ふざけんじゃないよ!
王子様に魔法をぶっ放さなかっただけ褒めて欲しい。
というかシュププが恐ろしい形相をしているから、早めに話を切り上げないと王子様に手を出しかねない。
「じゃ〜ね王子様〜」
「おい、待て……くそっ、何で俺が水魔法使いなんて探す羽目に……」
王子は放っておいて、いざブルードラゴン討伐へ!




