11話 ピンチで覚醒する主人公
異世界ファンタジー乙女ゲーム『ロイヤル・マジェスティ・プリンセス』の敵は基本的に弱い。なので多くの人はあまりやり込みせずにストーリー全クリして、このゲームを卒業する。
しかしゲーム制作陣は何を考えていたのか、このゲームの敵に遊び要素を入れていた。
その1つは、野生の魔獣が1000分の1の確率で完全魔法耐性を獲得(ただし討伐時経験値が1000倍)というもの。
もう1つは、レベルはさほど高くないのに、ステータスが異常に高い変異種の出現(1000分の1の出現率)。変異種のステータスは、ラスボスの10倍とされている。ただし、戦闘開始時に明らかに普通個体と違う事が明記される上、確実に逃げる事が出来る仕様である。(討伐時経験値は100倍)
つまり私は100万分の1の確率で、やたら強いオーガに出くわしたということになる。
「お嬢様、逃げましょう!」
「いや、むしろチャンスなのでは?」
今の私のレベルは500ちょっと。
相手のステータスはラスボスの10倍ならばレベル350相当だ。レベル差でゴリ押しで勝てる。
また、ゲームの仕様通りであればこのグレートオーガをやっつければ10万倍の経験値が入るはず。
つまりパワーアップチャンス!
「魔法が駄目なら物理で殴る! うぉぉー!」
2周目オジサマから貰ったドラゴンの牙の剣で斬りかかる。
「……フン」
スィー。
グレートオーガはつまらなそうに私の剣を肘で受け流した。私は体勢を崩す。
「……ではそろそろこちらからの反撃といこう」
ドン!
グレートオーガのパンチが私の腹に直撃する。
「お゛ぼぅ!!?」
「……ほう? 腹を貫通させるつもりだったが」
ぎゃあああーーー!!!
いってーーー!!!
20mくらい吹っ飛んだ。
「お、お嬢様ーー!!」
シュププが急いで駆け寄ってくる。
グレートオーガはゆっくりと近づいてくる。
「……レベルだけ上げて、技量が追いついていないようだな。そのような者を6人ほど葬ったことがある」
ポーチから回復薬を取り出し、急いで自分の体に振りかける。痛みが引いてくる。
「ふ、ふふふ、ふふふふふ……」
「お嬢様!」
「ぜったいにゆるさんぞ虫けらがぁーーー!!」
「……虫?」
「いでよ四属性魔法の手!!」
風魔法、土魔法、炎魔法、水魔法で作られた魔法の手を20本ほど空中から現し、グレートオーガに掴みかからせる。
「……無駄だというのに」
グレートオーガに魔法の手が触れるが、特にダメージは生じていない。だけどそれが目的じゃない。動きを制限するためだ。
「はぁぁーーー!!!」
再度グレートオーガに突撃する。
「……む? 魔法は動きを邪魔するための……フン!!」
グレートオーガは魔法の手を振り払い破壊するがもう遅い。奴は私の攻撃を正面から受けざるを得なくなる。
私は魔力を体と剣にまとわせて、硬化させる。
「食らえ!!」
「……! その技は、その技法はムノー様の……ぐおおおお!!?」
2周目オジサマから貰った、武◯色の覇◯、じゃなくて魔技とやらで、グレートオーガの腹を横に真っ二つに切り裂いた。
「……見事……」
グレートオーガはゆっくりと拍手しながら、事切れた。
こうして私とシュププは、グレートオーガに勝利した。
町に戻り教会で鑑定すると、私のレベルは2080、シュププのレベルは1491になっていた。
グレートオーガの素材は、普通のグレートオーガと同じ引き取り価格だったので売らずに、私達の防具に仕立て上げてもらうことにした。




