四光年の旅人と、宙のホライズン
夏立ちぬ午後の
海岸通りへ続く道に
さゆらぐ木漏れ日が
つくる影絵は
まるでときかけの
ジグソーパズル
早苗月の陽射しが
光のピースで
少しずつ
埋めていくように
やわらかな葉の
若草色に包まれながら
クレマチスの花は
吹きゆく緑風を
風車のようにあつめて
旅ゆく風に
帆をふくらませるように
北の空から
駆け上がる北斗七星
ゆるやかに続く
星の海岸線を
五月雨星から
真珠星へと
帆かけ星がゆく
宙の水平線から
現れ出る星々は
ケンタウルス座の光
リギル・ケンタウルス
それは
見えない一等星
太陽の次に
この惑星を近くから
見守るその光は
四光年の旅人
旅ゆく心に
夢をふくらませながら
まばゆい星の光も
見守るように
やさしい星の光も
この宙のどこかで
今この瞬間も
輝いている星があって
地平線から宙へ
何度も這い上がるように
昇りゆく星の光も
そして
見えなくても
そばにある星も
あるように
声にならない
声に耳を澄ませて
言葉にならない
言葉に心を澄ませて
光とはきっと
見えるか見えないか
ではなくて
そこにあると
そう感じられること
かも知れない
たとえ見えなくても
離れていても
心の中で輝く
星を、信じて
向かい風の日も
横風や凪の日も
あるけれど
未来という風に
夢という帆をかざして
そして
大切な光を
心に感じながら
風薫る午後の
海岸通りへ続く道で
頬に感じる
風と光と
夢の水平線に、想いを馳せて
春から初夏の夜空の北斗七星から、うしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、からす座の四つ星は、「春の大曲線」と呼ばれ、それぞれ「五月雨星」「真珠星」「帆かけ星」とも呼ばれます。その先に、ケンタウルス座があります。
ケンタウルスは、神話では上半身が人、下半身が馬で、足(アラビア語で「リギル」)の位置に一等星のリギル・ケンタウルスが輝きます。北半球ではケンタウルス座は上半分しか見えませんが、この星は地球から4光年の距離で、太陽の次に近い恒星とされます。
早苗月は5月、緑風はこの時期に吹く風です。クレマチスは、初夏に風車のような鮮やかな花が咲き、花言葉は「旅人の喜び」です。
季節の星や花をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。