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5-8:導師様祖国に帰る

本作品を楽しんで読んで頂いた皆様へ。ご愛読ありがとうございました。

本作品を読んで、なんかいいなと思って頂けたら、高評価よろしくお願いします。

この作品を読んでくれる友達が本当に一人もいないので…

 現在時刻は、日本時間で言うと午前2時を過ぎた辺りだろうか。


 日本を飛び出したわたしのIF-35A戦闘機は、現在導師国に向けて飛行している。

 先ほど日本の防衛基地の一つを完全に破壊したことについて、日本側でも、世界に数人しか存在しないといわれる、人智を超えた能力者によって攻撃されたということはわかっても、果たしてどこの国の、何者が、一体何のために攻撃したのかということについてはわかるまい。いや、日本側も導師国より、2日前に導師が「偉大なる国家殉死」を遂行するために日本に降り立ったという連絡を受けているだろうから、わたしが犯人だと疑われている可能性が一番高いか。では一体何のためか? 特に意味はない。いわゆる異世界パフォーマンスというものである。

 そういうわけで、侍従長には前もってこの件を報告しておく必要があるので、スマートフォンを使用して侍従長に連絡しようとしたのだが、さすがのわが国の最新のスマートフォンでも、この空の上では使用できないらしい。仕方がない。侍従長には導師国に戻ってから報告することにしようか。


 それにしても、一昨日は「偉大なる国家殉死」を遂行し、昨日は日本にて、長年の夢だったWatercolorsの聖地巡礼とライブ参加が実現、そして今は、わが祖国導師国への派手な凱旋帰国と、今までの平穏な導師生活が嘘みたいな、本当に慌ただしい3日間であった。


 そろそろ導師国の領空に近づいてきた頃だろうか。

 すると、無線から突然声が聞こえてきた。


「もしもし、こちらは導師国空軍である。聞こえるか? 応答せよ。そちらのIF-35A戦闘機のパイロットよ。貴戦闘機は現在導師国領内に向けて侵入しようとしている。今すぐに引き返せ。もし当方の指示に従わねば、導師国に対する敵対行為だと判断し、直ちに攻撃態勢に入る。…あれ? おかしいな? 聞こえてないのかな? もしもーし、直ちに応答してくださーい。」


 この声は…マリー士官だな。わたしは直ちに応答した。


「マリー士官よ。こんな遅い時間までお勤めご苦労である。警戒は不要だ。わたしだ。導師だ。」


「えっ? カス?」

 マリー士官はものすごく驚いているようだ。まあ当然だろう。マリー士官とは2日前に永遠のお別れをしたばかりだ。だがマリー士官は、今応答した人間が導師本人であると、すぐに信じてくれたようである。


「カス! でもどうして? あっ! もしかして私のために戻ってきてくれたんですか?」

 マリー士官は思わず、導師にそう尋ねた。


「うむ。マリー士官よ。君の言う通りだ。わたしも日本国に降り立って改めて気づいたのだ。わたしは君たち導師国の国民に対して、まだまだやるべきことが残っていることにな。」


「カス! もしかして、それって結婚?」


「それには私一人だけの力では絶対に不可能だ。君たち国民全ての協力が不可欠だ。そうだな、マリー士官よ。まずは導師国までの道案内をお願いしたい。もちろん協力してくれるな?」


「もちろんです。夫婦はいつでも協力するものです。」

 今一つ会話が嚙み合っていない気もするが、まあ特に問題はない。


「マリー士官よ。それと頼みがある。今から空軍基地司令に向けて、侍従長に基地までわたしを迎えにきてくれるようにと。それと、先ほど日本の防衛基地の一つを完全に機能不全にしてしまった。申し訳ないが、日本側との調整をお願いするとあらかじめそう伝えておいてくれ。」


 侍従長の力ならば、日本側と交渉し、公式には突然基地を襲った未曽有の自然災害とかそういうことにして、なんとか切り抜けてくれるだろう。それにしても、自分で言うのもなんだが、ものすごい額の賠償金額になりそうだな。


「はっ! 承知しました。でも、やっぱりハニーはすごいな。実は私も帰りに2機撃墜したんですよ。」


「そうか。」

 ……。とにかく、これまで以上に懸命に働かなければいけないな。


 マリー士官が司令部への伝達を終えると、わたしに話かけてきた。

「でもハニー。少し見ないうちに何か一段とかっこよくなったような気がしますね。」


「そうか。」

 マリー士官がわたしの呼び名をなぜ突然カスからハニーに変えたのかよくわからないが、別になんと呼ばれようが、特に問題はない。


「うーん、こちらからハニーの顔が見れないので、なぜなのか自分でもよくわからないんですが。」


「そうか。」


「もしかして私のハニーへの愛が大きすぎるから? キャッ!」


「そうか。」


「あっ! 導師国が見えてきましたよ。」

 マリー士官がそう言うと、確かに雲の隙間から、導師国の姿がうっすらと確認できる。


「そうか。よし、では帰ろう。偉大なるわが愛する祖国へ。」


「イエッサー!」

 そして二人の戦闘機は、目標である空軍基地へと向かうのであった。


 導師の「そうか。」は、以前と相変わらずの無機質なものであったが、今はそれに加えて、なぜか少し温もりが感じられた。


 空軍基地に到着すると、早朝にもかかわらず、ものすごい数の人達が導師の帰りを待っていた。IF-35A機を降りると、導師は、彼ら彼女らに向かって、右手を大きく振った。ずっと、ずっと、導師が確認できる限りの人達に向かって、ずっと手を振り続けた。


 そして、それからしばらくして侍従長が待つ場所まで行くと、


「侍従長よ。また世話をかけるな。」

 と、少しバツが悪い顔をして侍従長に話しかけた。

 すると侍従長は、


「お帰りなさいませ。よくぞお戻り下さいました。我らが導師様。」


「うむ。これからが大変だ。お前には、これからもずっと仕事をしてもらわねばならぬ。」


「もちろん承知しております。偉大なる導師様。」


「侍従長よ。お前が一番頼りだ。共にがんばろう。」

 侍従長は、導師から出た予期せぬ言葉に一瞬戸惑ったものの、すぐに平静の落ち着きを取り戻すと、


「もちろんでございます。わたくしはいつまでも導師様とご一緒です。」

 と、そう答えた。


 二人で車に向かって歩いていると、侍従長が導師にしゃべりかけてきた。

「それにしても導師様。」


「なんだ?」


「導師様のこの度の「偉大なる国家殉死」は大成功に終わったようでございますね。」


「…うむ。そうだな。」

 導師はそう言って少し笑うと、


「そういえば侍従長よ。お前はなぜわたしのことをカスと呼ばないのだ?」

 と、少し不思議に思ったので聞いてみた。

 侍従長は、ニコリと微笑むと、


「やはりわたしにとって導師様は導師様。長年導師様と呼び続けてきましたので、わたしにとってはカスと呼ぶよりは導師様の方がしっくりときます。」


「そうか、なるほど。そうだな、わたしもWatercolorsウオーターカラーズのことは、ずっとWatercolors(ウオーターカラーズ)と呼んできた。わたしにとっては、今さらオタカラと言うよりは、確かにWatercolorsの方がしっくりとくるな。」


「はっ? 一体何のことでございましょうか?」


「うむ。なんでもない。気にしないでよい。さあ、それでは今から執務に向かおう。」


 そうして導師様は、再び導師国で導師としての日常を過ごすことになるのでした。

 そして導師国の5000年を超える歴史の中で、唯一「偉大なる国家殉死」を遂げてなお生還した導師様となり、生ける伝説として、国民からこれ以上ない尊敬と人気を得ることになりました。現在の導師国を実質的に支配している勢力も、一度死んだ人間を再び殺すような真似はできなくなり、しばらくはその推移を黙って見守ることにしたようです。

 導師様は導師様で、導師国に戻ってからは、自分が国民達のために何ができるのか、自分のできることから少しずつやっていこうと、日夜奮闘しているそうです。

 そして、導師様の今の個人的な夢は、「Watercolors」のアニメを導師国で放映することだそうです。でも、どうやって実現するつもりなのでしょうか?

 それと、導師様はやはりブラックはダメだ、職場改革だと言って、現在導師業の働き方改革を実行中だとのことです。そして、次のWatercolorsのライブは、ちゃんと休暇を取って、正規のルートを使って行く予定にしているそうです。でも、どうやって行くんでしょうか?


 あっ! そういえばWatercolorsの物語についてなんですが、実は続きがあって。

 5周年ライブの中でプルの口から発表していたのですが、導師様が言い忘れているようなので補足しておきますね。

 3年の3人が卒業後、高校に残った6人は、その後もガールズアイドル部を続けていました。そして、翌年度にガールズアイドル部に入ってきた新1年生の部員達は、彼女達でAcrylics(アクリリクス)というグループを新たに結成しました。Watercolorsの6人も、自分達の練習をしながら、彼女達AcrylicsをWatercolorsの妹分として、一生懸命育てていました。そして、プル達が高校を卒業した翌年度、Acrylicsは念願のガールズアイドルの全国大会の優勝を果たし、彼女達Watercolorsの雪辱を見事に果たしてくれたのでした。Acrylicsの物語もすごくおもしろそうなのですが、残念ながら、こちらはアニメにはなっていないようです。


 その後の伝説によると、導師様はその後、歴史上国民から最も愛された導師様として、歴代最高の導師様、史上最高の導師様として、その知世を後世に伝えられたと言います。


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