4-4:ドウシさんとオタカラショップ
「じゃあ、そろそろグッズショップに行きましょうか。」
「はい。わかりました。」
グッズショップ! 殺風景だった秘密の部屋の中に、グッズといえば、今は懐に入れている9人が描かれたブロマイドが入ったフォトフレームが一つだけ。先代の父が、部屋中を秘蔵のアルコールコレクションで一杯にしていたように、いつかわたしも、この部屋を彼女達のグッズで一杯にできれば、どんなに心が躍るだろうかと、部屋にいた時は何度も夢見ていたものだ。そして、とうとう彼女達のグッズを手に入れることができるのだ。
オタカラのグッズショップは、今いるカフェから歩いて、さらに5分程の距離にあった。
「ドウシさん。これ見て下さい。等身大パネルですよ。」
「等身大パネル?」
店の入り口には、メンバー全員分、合計9枚のパネルが飾られていた。よく見たらパネルはメンバーのサイン入りで、「A市観光いっぱい楽しんでね♡」などの簡単なメッセージが添えられてあった。メンバーのパネルを一人一人じっくりと見ていたら、
リョウ君が声をかけてきた。
「ドウシさん。とりあえず店の中に入りましょう。」
「あっ、はい。わかりました。」
そうだ、グッズを買いに来たんだった。
店内はオタカラのグッズで一杯だった。ここはオタカラのグッズショップなので当たり前なのだが、それにしてもこんな夢のような店があるなんて信じられない。
これは? クリアファイルか。何か書類を挟むこともあろう。とりあえず全種類買っておこうか。これはアクリルスタンドというのか。なんか少し安っぽい気もするが、これもメンバー全員分揃えておくか。うん? これもアクリルスタンドか。さすがにメンバー全員分だと少し多すぎるか。とりあえずこっちはリタの分だけにしておくか。おっ、ポスターも大量にあるな。どの絵柄もいいな。これも部屋の壁に貼るとするか。全部ほしいが、とりあえず好みの絵柄を5,6枚程キープしておくか。わたしはこれらのグッズを秘密の部屋のどこに置こうかとイメージし、ウキウキしながら次々と商品を選んでいった。
これは缶バッジか。リョウ君みたいにバッグに付けようかな。何? 缶バッジは全てランダムなのか。えっ? 待て。リョウ君のバッグは一面全てリズの缶バッジで一杯だったぞ。この男、バッグ一面をリズにするために、今まで一体どれだけのバッジを購入してきたのだ?
そこに、すでに買い物を済ませたリョウ君が近寄ってきた。
「ドウシさん。そんなに買うんですか? 大丈夫ですか? 持てますか?」
わたしは、オタカラグッズが大量に入った買い物カゴを両手にもっていた。
「いやー、田舎だとなかなかグッズを買える機会もないので。それに、部屋に何もおいてなくて、殺風景だったので。実はオタカラのグッズもブロマイドしかもってなくって、」
ほらと、懐からブロマイドを取り出そうと思い、
「それで、帰ったら部屋に飾ろうかと…」
と、言いかけた所で、思い出した。というかすっかり忘れていた。自分は昨日祖国を捨てたのだった。だから今後あの部屋に入ることは永久にない。このブロマイドも、次の導師が秘密の部屋に入った時、Watercolorsに関する証拠を一切なくすために、わざわざ日本まで持ってきたのだ。ついでに言えば、Watercolorsのボックスセットは執務室の本棚の一角に適当に突っこんでおいた。あれはさすがにかさばるので持ち運ぶのを断念した。それに、侍従長からは、導師が間違えてあの箱を執務室まで持ってきてしまい、仕方がないからその辺の空いている本棚にでも入れて置いたのだろう、くらいにしか思われないであろう。まさか、あのふしだらな作品を観たとは思われまい。
「そういえば…、そうですね。」
買い物カゴに入れられていた大量のグッズを元の商品棚に戻し、結局、数点グッズを買っただけで店を出た。ただし、これらのグッズでさえ、今度は飾られる場所がないのだ。あきらかに元気をなくしていたところ、それをじっと見ていたリョウ君が声をかけてきた。
「次はバスに乗りましょう。」




