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異世界の伝導シリーズPart.70:208代導師様  作者: ににん(ni-ning)
2章:導師様とアイドルの出会い
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2-4:導師様と謎のアイドル

 あの日のわたしは、DCSPと警官達のやりとりを見て、その後床に大量に散らばったアニメのグッズを見た。ただそれだけの、いつもと変わらぬ一日を過ごした。それだけのことだった。


 ……………。

 いや、正直に言うと、あの日はわたしにとって、それだけのことどころではなかったのである。


 おそらくあの学生はわが国の幹部の子息というからには、頻繁に日本へ旅行に行き、その度に現地にて日本のアニメのグッズを大量に入手していたのであろう。

 写真やフィギュア、プラモデル、その他見たことのない種類のグッズが地面に大量に散乱していた。一見すると、それはものすごく際どい衣装を着た女性や、見たことのないロボットのアニメ関連と思われるグッズが大半であった。そして、その大量のグッズの中の一枚の写真がふとわたしの目に止まり、なぜかその写真だけが光り輝いて、わたしを導いているように見えたのだ。思わずわたしはその写真を手に取り、中を確かめた。それはアニメのブロマイドであり、複数の少女達がこちらに向かって微笑みかけているというものだった。その写真を見ている一瞬の間、わたしは今まで感じたことのない、なんともいえない幸福感に包まれた。そして、思わずその写真をコートのポケットの中につっこんでしまったのだ。


 その日のわたしは写真の彼女達のことが、なぜか気になってしょうがなかった。

 議会開催中も、諸団体との引見の最中も、侍従長との車の中でも、ポケットの中の写真をもう一度見返したいという欲求で一杯だったが、必死に我慢した。師邸に戻ってからじっくりと確認しよう。どこか確認できる所はないか? その時、執務室の奥に、例の秘密の部屋があったことを思い出したのだ。


 その日深夜、師邸に帰ったわたしは、そのまま執務室に直行し、たしか机の引き出しに入れておいたはずの鍵を取り出し、父より譲り受けたその日以来、久しぶりに執務室の奥にある秘密の部屋のドアを開けた。

 椅子に深く座り、コートに仕舞っていた写真を取り出した。写真をじっくりと見てみる。写真の少女達はやはり、それぞれが表情や身振りで彼女達の個性を表現しながら、満面の笑みでこちらのほうを見ている。写真に写っている少女達は合計で9人だった。その後、しばらく飽きることなくずっとその写真を眺めていた。そして知らないうちに、自分も彼女達と同じように笑顔になっていることに気付いた。このような表情をするのはいつ以来のことだろうか。導師に就任する以前、もっと昔のことであり、思い出すことさえ難しい。その時、執務室に掛けられている壁掛け時計から本日の執務開始を告げるラジオ体操のメロディが奏でられた。気づけばもう翌日の執務の時間になっていた。もう一度写真を見直した。写真の右隅には小さく「Watercolors」(ウオーターカラーズ)と書かれていた。


 次の日、執務終了後、どこかから持ってきたフォトフレームに彼女達の写真を入れ、秘密の部屋の机の上に置いた。


 その日から、執務終了後は、秘密の部屋に入り、「Watercolors」と書かれたこの9人の少女達の正体を突き止めることが、わたしの日課となった。

 深夜、秘密の部屋の椅子に座り、ノートパソコンを開き、彼女達の正体に追った。わが国ではインターネットに対する検閲、中でも日本のコンテンツに対する検閲は特に厳しく、当然のように普通に「Watercolors」と調べたのでは、彼女達の情報を得ることは不可能であった。だが、この国の最高指導者という地位にあるわたしは、一般の国民と比べて、その点では、かなり自由に情報を閲覧することが可能である。しかしながら、導師国から支給されているわたしのノートパソコンから発せられた情報は、諜報部門を通してこの国の支配者層や政権の中枢に把握されている可能性がある。いや、わたしが彼等に対し不満をもってないか、反抗の意思がないのか、その確認のために、確実に管理されているだろう。ここでわたしがそのまま「Watercolors」と検索したら、わたしがDASRAKの検閲を通っていないアニメについて検索したことはバレバレだ。そこで、彼等にわたしの行動に気づかせないため、わたしは毎回彼女達のことを調べる時は、AIにも分析不可能なほど、世界中からあらゆる無関係で無意味な情報を数千件に及んで無作為に閲覧し、それに紛れるようにして少しずつ、彼女達の情報を入手していった。彼等はわたしが執務終了後、世界中の情報を事細かく集めているという情報を諜報部門より聞いて、現職の導師はなんという勉強家であろうかと感心したことであろう。


 Watercolorsについては、以下のように情報を徐々に、そして断片的に入手していった。


 Watercolorsというのは、やはり日本のアニメのようだ。確認したが、やはり導師国内では放送されていないようだ。だがわたしの予想では、彼女達のアニメがDASRAKの検閲を不合格となることはありえないはずだ。単純に今までわが国の輸入リストに入ってこなかっただけだろう。そして、このわたしの予想が正しかったことは、後日証明されることになる。


 Watercolorsの公式ホームページが存在することは確認した。これを見れば、彼女達のことについて詳しく知ることができるはずなのであるが、じっくりと閲覧するなどという危険を犯すことはさすがにできない。見たいという気持ちを必死に抑え、今まで2,3度ちらっと覗いた程度である。


 Watercolorsというのはアニメのタイトルだけでなく、作中で彼女達9人が結成したグループ名だということだ。


 彼女達9人は、A市という日本の地方都市に住んでいる、同じ高校に通う生徒達で、学校のクラブ活動の一環として、ガールズアイドル活動をしており、最終的には、ガールズアイドルの全国大会で優勝することを目標にしているこということだ。


 そして彼女達が作中で作り、披露された楽曲は、後日音楽商品として販売されており、購入が可能だということだ。だがそれは、日本国内に限った話である。


 このアニメシリーズは彼女達が高校を卒業すると同時に、すでに日本での放送を終了しているそうだが、彼女達Watercolors自身はその後、現在もグループとしての活動を続けているということだ。彼女達の情報については、日本からだけでなく、海外からも入ってくるので、彼女達の人気は日本国内に限った話ではなくワールドワイドなのだろう、そして彼女達は今も大人気のようである。


 彼女達の情報を入手すればするほど、彼女達のことがもっと知りたくなった。

 わたしにとって、彼女達のアニメシリーズを見ることと、そして彼女達の楽曲を聴くこと、この2つがわたし個人的な夢となっていた。

 日本のcアニメチャンネルに加入しようか、アメリカのZappleミュージックに加入しようか、などと何度も真剣に悩んだものだったが、確実に検閲にひっかかってしまう。そもそも導師国では加入すること自体が不可能なので、それは永久に叶わぬ夢であった。


 だがその夢が思わぬ形で叶う日が来た。


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