51.社畜、こじゅくりをする
ホワイト率いるゴブリン達に囲まれながら、俺達は家に向かった。
「俺らがいない間に何があったんだ?」
その道中で、俺が元の世界に戻っていた時の話を聞くことにした。
「ダンナ様がここから去ったすぐに宇宙人が攻めてきたの」
「やっぱりそうなんか……」
初めは二人組の探索者が攻めて来たらしい。
ちょうどゲートの近くにホワイトはいた。
トラップ設置で目の前に岩を落としたら、探索者はすぐにゲートから出て行った。
その瞬間にポイントが増えたことに気づき、何かわからないホワイトはゴブリンに触れたらしい。すると、どんどんと力がみなぎった。
「それでゴブリンにポイントを振れば強くなると思ったのか」
「そこからは元々の集落のゴブリンに協力してもらって、ゲートから宇宙人が入ってきたタイミングで追い払ってたよ」
ゲート周辺が戦場になっていたのはそういう理由だったのか。
家の方に歩くたびに普通の草原になり、ほとんど戻る前と変わらない。
「次第に向こうも人数が増えて追い返せなくなったので、直接私が交渉してきたの!」
ん?
それはホワイト自身が話し合ったということだろうか。
「なぜかみんな私を見て、着ていた物を脱ぎだして……」
「はぁー」
それを聞いていた心菜が大きなため息を吐いていた。
きっとロリコン好きがホワイトに欲情したのだろう。
「何か変なことはされなかったか?」
「特にそれ以外は……あっ、気持ち悪かったのでぶらぶらしているやつを蹴って、持っている物を全て回収したよ」
うん。
聞いただけで股間が痛くなってきた。
笑顔で微笑むホワイトの顔が、どことなく怖く見えてくる。
ゴボタも力は強いが、ホワイトも中々の怪力だったはず。
そんなホワイトが男の大事なところを蹴ったら、大変なことになるだろう。
隣にいる生田も同じようなことを考えていた。ただ、心菜はそんなホワイトに拍手をしている。
ここは男女の差があるのだろう。
もちろん自衛をしたホワイトを攻める気はないし、いざとなった時にそれができたホワイトを褒めてあげたい。
「それからは同じ方法で武器と防具を集めたかな」
どうやらみんなが持っていた武器は、元々探索者達が使っていた物らしい。
それにしてもここだけ聞いていたら、親父狩りをしているような感じがしてきた。
ホワイトのお色気で身ぐるみ全て剥がして、そのまま元の世界に帰す。
その後、再び人を連れて来たタイミングで、また脱がしてを繰り返していた。
「いや、それならもう少しポイントが多くないか?」
「途中からは捕らえて、逃げられないようにしているよ? また人を呼ばれてもめんどくさいしね」
うん。
我が妹は思ったよりもしっかりしているようだ。
その後も話を聞きながら歩くと、大きな村みたいなものが見えてきた。
俺のスキルに村を作る能力はなかったはずだ。
「あれはなんだ?」
「私とダンナ様の愛の巣です!」
「はぁん!? 村じゃなくて?」
「私とダンナ様の愛の巣です!」
「うん、二回も言わなくて良いからな!」
「わかってないよ! そこで私とダンナ様が子作りをしてたくさんのゴブリンを生むんですよ。この間一緒に子作りをしたじゃ――」
急いでホワイトの口を塞ぐ。
俺はホワイトと子作りをした覚えはない。
あるのは頬にキスをしただけだ。
「お兄ちゃん……いや、クズ男め!」
「ああ、お前がそんな最低な男だとは思わなかった」
ほらほら、二人とも勘違いしているだろう。
「ボスゥ……」
リーゼントもどこか引いている。
「オラも恋人が欲しかったよ!」
いや、あれは落ち込んでいただけだった。
「とーたん、こじゅくりって?」
幸いゴボタが理解できなくてよかった。
ゴボタにまで引かれた俺は生きていけないだろう。
「ふふふ、唇に直接触れるなんて子作りしたいんですか?」
ホワイトはまた何を言って――。
あれ? あいつはどこに行った?
ホワイトはいつのまにか塞いでいた手を払いのけていた。
気づいた時には俺の隣に立っていた。
軽く頬にキスをしてきた。
「ふぁ!?」
それを見ていたゴボタは目を大きく見開いている。
ゴボタなクリクリな瞳が可愛いな。
「へへへ、これでまた子どもができちゃうね」
そう言ってホワイトはお腹を触りながら家に入っていった。
「はぁー、そういうことか」
「お兄ちゃんがクズじゃなくてよかった」
二人の誤解は解けたが、俺の心はズタボロだからな。
妹のように可愛がっていた子と親友から見えない鈍器で殴られたようなものだからな。
「とーたん!」
「ん? なんだ?」
ゴボタが俺の服を引っ張っていたため、目線を合わせるためにしゃがみ込む。
――ドンッ!
するとおもいっきり頬に衝撃が走った。
あまりの痛さに後ろにふらつく。
「ゴボタもこじゅくり!」
ゴボタは色々と勘違いしているのだろう。
それは子作りではなく、キスでもない。
ただの頬への顔面突きだ。
それでも本当のことを教えるよりは良いだろう。
そんなゴボタを俺は微笑みながら見ていた。
後日、ほぼ毎日顔面突きをされた俺は顔半分が真っ青に染まり、治癒草を顔に貼り付ける生活をするとは思いもしなかった。
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