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ダンジョンで始まる子育てスローライフ~ダンジョンに閉じ込められたら社畜と人懐っこい幼子ゴブリンの敵はダンジョン探索者だった~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 社畜、現実を知る

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47.社畜、母と幸せな時間を過ごす

「母さん体調はどうなんだ?」


「どうなんだって言う前に今までどこにいたのよ……。しかも、子連れって衝撃しかないわよ」


 呆れた顔で俺を見る姿も昔と変わらない。


 きっと母も俺と同じことを思っているのだろう。


 心菜と俺をずっと見比べていたからな。


「あっ、私の子どもではないですよ」


「えっ、そうよね。ちょっと残念だわ」


 どうやら母は俺と心菜をくっつける気だったのだろうか。


 さすがに年齢が離れすぎていて、俺には到底無理だ。


「それにしても童顔だと思っていたけど、ここまで童顔だとは思わなかったわ」


「いや、これにはわけがあってな」


 俺は数日前のことを伝えることにした。


 きっと母からしたら嘘のような話に聞こえるだろう。ただ、これを伝えないと俺がずっとどこにいたのかという話になる。


「ならちょっと待っててね」


 そう言って母は天井に向かって手を上げた。


 一体何をやっているのだろうか。


「これが私の能力なのよ。密会に便利なのよ?」


「へっ?」


 俺は何かおかしなことを聞いているようだ。


 母が能力者だなんてそんなはずはない。


 俺は心菜を見ると頷いていた。


「ゴボォ!」


 どうやら母が能力者だと言うことを俺だけが知らなかったようだ。


 ゴボタも母に慣れたのか、母のベッドの上で一緒に寝転んでいる。


「仕事の帰り道にスクーターで転んで、気づいた時には見知らぬところにいたんだ。帰る方法がわからなくて、その時に心菜が来てくれたおかげで、俺はダンジョンに迷い込んでいたことを知った」


「あっ、そうなのね。相変わらず鈍臭い子ね」


 うん、母さんよ。


 気になるところはそこですか。


 普通なら「えっ……ダンジョンに迷い込んで大丈夫だったかしら?」って反応するはずだ。


 それなのに鈍臭い子って済ませても良いのだろうか。


「あー、えーっとお兄ちゃんのお母さんも一度ダンジョンで迷子になっているんですよ」


 ああ、俺達親子揃ってダンジョンで迷子になっている珍しい家族だった。


 ってか今迷子になっていたって――。


「母さん宇宙人なのか?」


 ――パチン!


 また頬を軽く叩かれた。


 探索者は宇宙人って認識だからな。


 能力者でダンジョンで迷子になっていたら、探索者で間違いないはずだ。


「母に対して宇宙人って何よ! せめてUMAって言ってちょうだい」


 やっぱり俺の母はどこか変わっていた。


 母は能力者として戦う力はなく、補助としてダンジョンに入ったことがあるらしい。


「まぉ、そんなことがあって俺は元気に暮らしていたわ。実質数日しか経っていないから、今は外の変化に追いついていけないよ」


「ふふふ、それは仕方ないことよ。これからもダンジョンで楽しく生活しなさいよ」


 母の一言で俺達は、もう一緒に住めないことに気づいた。


 息子のように感じているゴボタに母を合わせることができた。


 それに母が亡くなる前に会えたからな。


 俺はそれだけでもダンジョンから出てきて良かったと思った。


「せっかくだからみんなにジュースを買ってきてもらっていいかしら?」


 母にジュースを買いに行くために、俺はゴボタと席を外した。


「母さん、俺を生んでくれてありがとう」


 俺は小さな声でつぶやいた。


 ♢


「ここちゃん、残ってもらってごめんね」


 そう告げると、彼女は能力を解除した。


 彼女の能力は〝空間を惑わす〟ことができる力だ。


 ゴボタくんが部屋に入った瞬間に、最後の力を振り絞っていた。


 それに治癒草を与えられて、少し力が戻ったのだろう。


 その段階で能力は以前のように発動していた。


 本当は一言も話せないし、息をするだけでも精一杯だ。


 笑う力も残ってはいないし、手を動かすこともできない。


 今日も薬や呼吸機に頼って、息子が帰って来るのを待っていたのだろう。


 毎日お兄ちゃんを探すために、ビラを配っていたしダンジョンにも探しに行っていた。


 ダンジョンで迷子になっていたのも、お兄ちゃんを探している最中だった。


 みんなにずっと幸せな幻覚を見せてくれていた。


 手を上げた時に最後の力を振り絞ったのだろう。


「お母さん、今度は私がお兄ちゃんを幸せにしますね」


 静かに響くモニターの音が、まるで私にお兄ちゃんを託すと返事をしているようだ。


 私の言葉にどこかニッコリと笑っているような気がした。

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