第09話:解呪
密かに集まった奴隷商たちは、その場の重要性を感じ取り、息を呑んでいた。
魔導士は、アヲの前に立ち、深く息を吸い込みながら、複雑な呪文をゆっくりと唱え始めた。
その言葉は、通常の人間には理解できない古代の言葉であった。
アヲの体には、奇妙な感覚が広がり始めた。彼女の体の中で、何かが変わり始めていることを実感した。全身が重く感じられ、瞼が閉じられなくなるほどの光に包まれた。
そして、彼の足元から青白い光が放たれ、その光は徐々に全身を包んでいった。
魔導士は呪文を唱え続けていたが、突如として巨大な衝撃が彼女を襲った。その強烈な反動により、魔導士は後ろの壁に強くぶつかり、意識を失った。
場の中心、アヲの首から、長い間彼を縛り付けていた呪いの首輪が静かに地面に落ちた。アヲの身体は一回り大きく成長し、全身が神々しく輝いていた。
周囲の奴隷商たちは驚きの声をあげたが、それも束の間。アヲから放たれる荒れ狂う力の前に、奴隷商たちは一人また一人と地面に倒れていった。
アヲの放った力は圧倒的で、その場にいたすべての者たちに影響を及ぼしていた。特に、既に奴隷紋を押されていた子供たちもアヲの力の影響を受け、次々と倒れていった。
しかし、彼らが倒れるのは短時間だった。間もなく、それぞれの子供たちの身体から紋章が光り始め、やがて消えていった。奴隷としての紋章が解除されると、彼らの体からも同様に青白い光が放たれた。
彼らは混乱の中、次第に意識を取り戻していった。目を開けると、同じ獣人族の子供たちが自分の周りにいた。そして、彼らの額や腕にあった奴隷としての紋章は跡形もなく消えていた。
・・・
その時、大きな扉が静かに開き、そこには、アヲが愛している、そして盗賊に襲われて死んだと思われていた母の姿があった。
「アヲ」と、その母は静かに名前を呼んだ。「力を抑えなさい」
アヲは目を見開き、母の姿に驚きと喜びが入り混じった。しかし、母の冷静な目の前に、彼女は急速に力を抑えることを試みた。
「母...どうして...?」アヲの声は震えていた。
母はアヲの頭を優しく撫でながら、彼女に近づいた。
「今は説明する時間がないわ。まずは皆を安全な場所に連れて行くことが先決よ」
その母の態度に、子供たちは安堵の息をついた。彼女の存在は、この緊急の状況において、彼らにとっての最大の安心感となった。
「後で全てを話すわ。今は、私の指示に従って」母の声は冷静でありながらも、優しさが溢れていた。
アヲは頷き、母とともにこの場所から離れるのだった。
・・・
アヲとその母は、深い森の中、厚い壁で囲まれた砦の方向へと急速に進んでいった。母はアヲに砦の配置や構造についての情報を提供し、アヲはその指示に従いながら、自らの新たな力を駆使して進んでいった。
彼らが砦に到着すると、アヲはその場に留まって、手から放たれる力で砦の大門を瞬く間に破壊した。母の案内のもと、彼らは大人の女たちが監禁されている場所へと急いだ。
アヲの力で扉や足かせが次々と解除され、女たちは驚きの中、外へと飛び出してきた。
一方、砦の兵士たちはアヲの力の前に手をこまねいていた。彼らは、その場に立ち尽くすしかなかった。
母の指示のもと、アヲと女たちは砦から脱出し、森を駆け抜けながら、山の麓の村へと向かった。
後半すこし展開がはやい・・・
砦のボスとの戦闘があったと思われるが、今のところ記述なし