第05話:首輪(グレイプニル)
静かな森の奥、大きな古木の影に隠れるようにして立つ小屋があった。
それは呪い師の家で、村の人々が様々な相談を持ちかける場所だった。小屋の内部は薬草の香りに包まれ、古来の呪術の書や奇妙な飾りが所狭しと並べられていた。
車座になり四人の獣人が、話し合いをしている。
大柄で威厳のある風体をした人物はアヲの祖父の族長、大地と霊をつなぐ指導者
その右横には、族長の長男であるアヲの父、丘の上で見る月
その右横(族長の対面)には、この大陸でも5本の指に入る呪い師、影の中の神聖な秘術
その右横(族長の左)には、美しい濃紺の毛並みをもつアヲの母、調和を保つ三つの岬
四人が集まったのは、アヲの首輪についてだった。
「わが一族には、古来より強大な力を持つ子にグレイプニルをつける風習がある。
しかし、アヲの力は強大な力で表せない、生まれた直後でさえ大地が怯えたほどだ」
族長は深いため息をつきながら話し始めた。
父は頷き、続ける。
「アヲの力は特別、この村でも50年ぶりの首輪の使用者。しかしその首輪の影響で彼は獣人術群をうまく使えない」
呪い師が言葉を取り上げた。
「首輪は彼を守るためのものでもあり力を抑制する呪いでもある」
母は慎重に言葉を選びながら話した。
「アヲはまだ幼いのです、そして人一倍やさしい子、他者を傷付けたら、一番傷つくのは彼です」
族長
「皆も知っての通り、狼の獣人は狂凶化しやすい、精神力を養わない子供のうちはとくにそれが顕著だ
最近のアヲの目をみると、子供とは思えない落ち着きを見せている」
父は頷き、続ける。
「彼の獣人としての成長を考えるならば、首輪を外すのも一つの方法だと思う」
議論は深夜まで続いたが、最終的には次の満月の夜に
首輪の四の封印のうちを一つを外し経過観察することになった。