第03話:祝福される忌まわしい子
気がつくと、見覚えのあるような街の中にいた。しかし、周りには人の気配がない。
よく見ると、それは未知の場所だった。まるでAIによって自動生成された街並みのようであった。
向こうから仔犬が歩いてきた。
仔犬は「不思議な街並みですね」と言った。
その言葉は、まるで脳に直接データが送信されるような感じであった。
アオは「これは夢なのか?」と考える。しかし、その直後「夢ではありません」という情報が脳に届いた。
アオは過去の記憶を思い出そうとするが、最も古い記憶はトラックに轢かれ、空中に放り投げられる瞬間までであった。
「そう、貴方は死にました」という情報が、悲しみを伴いながら脳に送られた。
この場所は何なのかと思うと「生と死の狭間」という答えが脳に届く。
アオは驚きと恐怖が入り混じった感情を持っていたが、それを落ち着かせる方法が見当たらなかった。
仔犬はアオの顔をじっと見つめていた。その瞳には人間のような理解の深さが宿っているようであった。
「貴方は死にました 次の世界に旅立つ 刹那の時間を少し借りました。
次の世界で 少しだけ僕の力を貸しますので、有効に使ってください、ではまたいつか」
アオの心の中には多くの疑問が渦巻いていたが、言語化する前に
空間が歪みはじめ、自分の身体を含め全てが空間がひっくりかえるような感覚がうまれ、ふたたび意識がなくった。
・・・
アオは、父「丘の上で見る月」と、母「調和を保つ三つの岬」の
長男「全てを飲み込む白銀の溝」として生を受けた。
古き狼の獣人の一族「月の弓と箒の星」族長家となる。
アオは生まれる前から、強大な力を持っていた。
生誕の儀は、本来生後七日目に、呪い師を呼び行うものだが、アオの場合、出産に臨席していた。
その呪い師「影の中の神聖な秘術」は、彼に首輪を取り付け、独特の節回しで祝詞を捧げた。
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大地よりの恵みと星々の導きを受けて、我らの部族は続く世代へと命を繋ぐ
風の歌と、水の踊り、火の温もり、土の力を持ち、繁栄の木が部族の心の中にしっかりと根を張る
ウィユテヒン・ピャハ・キチの月の光が、ウォワハワラガン・ジ・サムの三つの岬に調和をもたらし、トカタンカ・ズゼチャ・ウィユテの白銀の溝が繁栄の道を示す
大きな山々も、小さな川のせせらぎも、我らの部族とともに共鳴し、新しい生命、新しい希望が絶え間なく湧き上がるよう祈り踊る
古の精霊たちよ、部族の繁栄を証とし、永遠の幸福と繁栄を我らに賜り願う
呼び名の中で、真名が眠る。古き力、新しい未来を紡ぐ約束、その盟約を結ぶ
ウィユテヒン・ピャハ・キチの月の光と、ウォワハワラガン・ジ・サムの三つの岬が調和を持ち、トカタンカ・ズゼチャ・ウィユテの白銀の溝が全てを纏める
古の精霊たちよ、この契約を証とし、これらの名前に力と守護を与えよ
大地よりの恵みと、星々の導きを受けてウィユテ・シチャ・ピジュタ・ウィチャの部族は続く世代へと命を繋ぎ踊る
風の歌と、水の踊り、火の温もり、土の力を持ち、繁栄の木が部族の心の中にしっかりと根を張れ
ウィユテヒン・ピャハ・キチの月の光が、ウォワハワラガン・ジ・サムの三つの岬に調和をもたらし、トカタンカ・ズゼチャ・ウィユテの白銀の溝が繁栄の道を示す
大きな山々も、小さな川のせせらぎも、ウィユテ・シチャ・ピジュタ・ウィチャと共鳴し、新しい生命、新しい希望が絶え間なく湧き上がるよう祈り踊れ
古の精霊たちよ、我らウィユテ・シチャ・ピジュタ・ウィチャの部族の繁栄を証とし、永遠の幸福と繁栄を我らに賜り願う
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この時、アオの目はまだ開いておらず、この出来事を彼はまったく覚えていない。
この首輪の目的は、アオ自身を守ること、そしてアオから周囲を守ることだった。
彼には二つ年上の姉がおり、彼女の名前は「大河の岩に残る三つの輝き」という。
真名は、みだりに使用してはならないため、普段は、父:アガナ、母:マハロ、姉:ナヲ、アオ:アヲと呼び名がある。