第二話(中)
なんとか1日1話投稿続けている奇跡が続いていますが、絶対にいつか途切れると言う事を先に報告しておきます。現実の話になってしまうのですが、土曜から少し私用が忙しくなるので多分そこで一度途切れると思います。
それまでは筆をのらせ書き続けたいと思いますが…。
―退院まで残り1日
「いや、暇だよ」
「そうなの?」
座学も受けなくて楽そうなのにと、ミーシャはそう続けるが実際暇で、暇で仕方がない。今日の午前中は最終検査があってそこでも異常はないとの事だったから、正式に明日の退院が決まった、別に今日退院しても良いとの事だが、そこは丁重にお断りさせて貰ったらこの暇さだ。
「ミーシャが来てくれてよかったよ」
「なんだかそう言われても、嬉しくないのはなんでかしら?」
そりゃあ、暇つぶしの相手と呼ばれて嬉しい人など居ないだろうから、彼女の認識は正しいだろう。と言っても自分であれば例え暇潰しの相手と言われても、行ってもいいのであれば喜んで毎日通う可能性もあるが…、しかしそれをすると相手に面倒くさがられるとも思うので実際にはしないだろう…。というかそんな事を言ってくれる相手も居ないし、無駄な妄想だと思い今一度彼女の言葉に耳を貸す。
「それより武蔵、座学は大丈夫なの?」
「俺は例え3日何も習ってなくても、ついては行けるぐらいの学力はあるよ」
「あらそうなの、剣舞の事も嫌いだから、座学も嫌いだと思っていたわ」
「ミーシャこそ大丈夫なの?勉強の範囲も違うでしょ?」
「私は、特別留学だから…」
そんな事を言って目を逸らす、だからと言って勉強を疎かにするのも良くはないと思うが、まぁ彼女の場合であれば勉強で1番を取るより、剣舞で1番を取ってプロになる方が簡単そうだが…。まぁこんな事は俺が心配する内容でもないな。
「じゃあねミーシャ」
「えぇ明日学園で」
そう伝え今日の楽しい時間も終わる、明日から学校と言っても退院前に色々手続きと、学園長室に向かう為遅刻する事は確定なのだが。
まぁその話は彼女に伝える話でもないか…一応和泉さんには伝えておいた方が良いかもしれないと思い連絡を取ろうとしその手が止まる、彼女はもう自分のサポートをしてくれる訳でもないし、彼女にも別に伝えなくてよいかと考え恐らく最後になるであろう、剣ヶ丘市、剣ヶ丘病院のベッドを楽しみ、今日は寝床に着いた、
―退院日
「本当にお世話になりました」
そう医療スタッフの皆さんに感謝を伝え病院を後にする、昨日の夜は寝ようとしたがやっておけばならない事を思い出し、結局昨日の夜は殆ど眠れなかった、それ程重要な事を暇だと嘆いていた2日間でやっていないのは、本当に情けない事この上ない。一封の封筒を持ってこれで漸く学園に行くことができる。
―剣ヶ丘学園、学園長室前
緊張する、コンコンという乾いた音と共に、「どうぞ」という女性の声が響く、その女性の声は、誰でも引き寄せる甘美な響きとは裏腹に、一度入った人間が恐怖で逃げ出せなくなりそうな一面をも感じさせる声を持つ女性のもとへと、これから自分は入って行くと考えると思うと少しの冷や汗が垂らしながら、その声に負けずに自分が口に出すべき言葉をだす。
「失礼します」
「ん?おぉー剣聖じゃないかー、どうしたんだ?」
告げるべき言葉を伝えると、先ほど感じていた圧倒的威圧感は、どこへやらと何とも気さくな女性に変貌したのが、この学園の長、剣ヶ丘開花学園長。
「学園長ちょっとお話が…」
「おぉ、少し待て、今この仕事を終わらせてっと」
山盛りに置かれた書類を一枚一枚、丁寧に確認し終わらせようとしているが、なんとも丁寧だ、丁寧過ぎて物凄く時間がかかっている。
「後程時間をずらし、もう一度伺いましょうか?」
「なーに、気にするなよ、今終わるから」
そうはいっているがその書類の半分も進んでいない姿を見ると、全く信憑性を感じはしないが。それとは別にこの人は本当に凄い人なんだが、それも本当かどうかを疑いたくなる、仕事スピードの遅さだ。彼女が成し遂げた偉業は未だ同じことを成し遂げた人が居ない程の偉業なのだが…。
「終わったー」
そんな事を考えていると、こちらへ歩き近くのソファーへとなだれ込む。まだまだ書類はあると言うのに大丈夫なのだろうか?
「剣ヶ丘学園長、大丈夫ですか?」
「おぉ、大丈夫だ気にするな、文字の見過ぎで軽いノイローゼに罹っているだけだよ」
人はそれを大丈夫だとは、言わない気がするが…まぁ彼女が大丈夫と言うのであれば大丈夫なのであろう。
学園長に茶を貰い、今日ここに来た理由を簡潔に纏めた封筒を手渡す。
「これを」
「これは…退学届?」
彼女は何故という顔でこちらを見ている、彼女には俺の症状も全て報告されているはずだ、だからすぐにわかってくれると思っていたが、どうやらそう簡単には納得してはくれないらしい。
「何故こんなものを?」
こんなもの、人の意志をこんなもの呼ばわりされるのは、少し納得が行かない、まぁいい、すぐに受理されるものではないと言うのは、自分自身でも理解はしていたつもりだ。
「それはですね、学園長も知っての通り、俺のブレインは消え去りもう剣士としての道は厳しいかなと思い書いた次第です」
「剣士としての道は厳しい?試しても居ないのにか?」
その言葉に何も俺は言い返せない、でも既にもう自分で決めたことなんだから、何か言わないといけない、それ程簡単に決めた訳でもない。
「じ、実際に!ブレインの使用をせずに剣聖祭もその予選も勝ち上がれた人は居ません、ですので…」
「おい言葉を慎めよ?剣聖」
「元です」
彼女の威圧感に、段々自身の語気が弱まっているのと同時に、威圧感によりこの場がピリピリしているのを肌で感じた。彼女が嫌いな事は殆どないが、彼女にとっても許せない事が一つだけある、それは…。
「それは逃げだろう?今のお前は剣聖という称号からも、剣舞というスポーツからも、漸く解放されると願った所に舞い込んだ、己が身の丈の話に漬け込み、逃げようとしているだけにしか、私は感じない」
「ち、違います、前々から考えていた事です」
「ならばなぜ、2年に進級した?お前がそうしたいのであれば、いつでも辞める事は出来たはずだ!」
「そ、それは、このような理由が無いと両親の許しを…」
「両親を理由にするな!」
その言葉を前に俺は完全に黙ってしまう、もう無理だ…この人には全てバレている、だけれど辞めたいと思っていたのは事実だ、あの場でミーシャに語った言葉も本心である。
「お前は今、漸く逃げ出せると知って、この場から逃げ出そうとしているだけだ、私を納得させる理由がなければ、私はお前の退学など認めない!」
それにと彼女は続ける、まるで優しく本当の姉の様に柔らかに。
「お前は、ブレインの使用を無しに剣聖祭を勝ち進んだものは居ないと言ったが、私はそれも嘘だと言う事は知っているぞ?」
「なっ?そんな訳」
「あぁ、お前も良く知っている筈だ、あの場面を見ていたはずだからな、尚且つ去年一番その近くに居たはずだ」
その言葉を聞いた瞬間、自分の計画全ての稚拙さが身に染みる、そして自分はその場に居ても立っても居られず。
「失礼しました」
そう言い、逃げる事を選択した…。
「そういう逃げは、私は許すぞ」
そんな言葉を言われながら去る自分が凄く惨めに感じる、けれどそれでも俺は…。
―廊下
「和泉さん、おはよう」
「本当なんですか?」
「えっ?」
彼女から鬼気迫る、声で質問される。本当なんですか?とはどういう事だろうか?皆目見当がつかない、なにか彼女を怒らせるようなことをしてしまっただろうか?
「ごめん、俺なにかした?」
「何もしてません」
ならば何に怒っているのだろうか?俺が何もしていないけど、彼女を怒らせるような事といえば、やはりアレだろうか?彼女との縁を切るように,一方的に鍛冶師との契約を打ち切りにしたことだろうか?だがそれは確か彼女も望んでいた気がするのだが…。
「本当にわからないや」
「本当に剣舞を辞めるつもりでいるんですか?と聞いているんです!」
やはり鬼気迫る表情で問い詰めてくる、彼女が和泉さんが何故そのような事を、気にするのだろう?確かに一切相談もせず決めたのは良くはないかもしれないが、それでも自分が前々から考えていたことだ。
「うん、さっき学園長に話してきたよ」
受理はされなかったけど…。
流石に決まってもいない話を、そうペラペラと話す訳にもいかないから簡潔に答える。
「嘘ですよね?」
「嘘じゃないよ、前々から考えていた事だから」
「なんで?」
なんで?と聞かれても理由は、ミーシャに話した本心と彼女に話した、ブレインが使えなくなったことが大きな理由なのだが…。
「なんで、ですか?なんでなんですか?貴方が辞める必要ないじゃないですか?」
大粒の涙を流しながら、こちらにそう問いかける。和泉さんは何か勘違いしているのではないかと少し疑問に思い口に出す。
「和泉さん俺が、学園長から退学の話をされたと思っていない?」
「違うんですか?」
全く違うそれじゃあ、学園長が悪者になってしまう。これは自分の我儘であって、学園長の意志ではない。
「辞める気でいるのは本当だけど…別に退学を言い渡された訳では無いよ?」
「辞める気でいるのは、ってそれじゃあ何も変わってないじゃないですか」
結構変わる気がするのだが、そうでもないのだろうか?まぁそれは正直な所どうでもいい、辞める気でいるのは事実だが、学園長が認めてくれないんじゃ退学もできないだろうから。
「でも今すぐに辞めるって訳でも、ないからそこは安心してよ」
「安心なんてできませんよ。どうしたら辞めないでくれるんですか?」
何故彼女がここまで、自分が辞めない事に拘るのだろうか?
「辞めないで、って言われてもなぁ、ずっと辞めたかったのは事実だし…」
「そうですか…わかりました…少し失礼しますね」
彼女はその言葉で納得したのか、何かボソボソと言いながら立ち去る、彼女の背中には、問いただしてきた時と同じく何か鬼気迫るモノを感じさせながら立ち去る姿を見て、自分は少し恐怖を抱く。
怖い、今まで彼女を怖いと思った事が無かったが、彼女を怒らせてしまうとこれ程怖いのかと足が少し竦み、その場に立っている事しかできなくなる。それと同時に何か胸が苦しいものを感じたが、それがなんなのかは自分にはわからなかった。
―教室
教室に入ると信辰達がここぞとばかりに集っている、どうしたのだろうかと疑問に思っていたが何をやりたいのかは理解できた。
「あれ?元剣聖の東雲君じゃないか?」
「どうしたんだ?あぁ負け犬か」
ワイワイガヤガヤと自分と同じレベルになったらなったで、相も変わらず、自分に対する嫌悪感を丸出しにこっちへと来る人間も居る事に少しほっとすると同時に、彼らにも恐らくもう勝てない事が悔しいのだろうか?自分は力いっぱいに手を握りしめていた。
「なにかよう?」
いつも通りの自分を装う、そうしなければ余計馬鹿にされると分かっているから、でも馬鹿にされる方がマシかもしれない、馬鹿にもされず何も話題にも上がらなくなった時、それは真の孤独だ。それだけは嫌だから、彼らの様な存在が居る事にも感謝できるような気がした。
「用なんて無いよ、僕達は負け犬になり下がる気はないから、とっととどこかに行ってくれないか?」
「それは無理な相談だね」
「は?」
「これから授業だからね」
呆れた顔で答える、その為に学校に来ているのだ、逆に授業を受ける気が無かったら今日この学校には来ていない。幾ら辞める気があるとはいえ、基本教養も無い人間になりさがるつもりは無い、だからこそ勉強は大事だ。
それとももしかして自分がミーシャに負けた事で自分でも考えられない程、意気消沈していてテキトーに煽れば乗っかってくるとでも思っていたのだろうか?
確かに悔しい事は悔しかったが、自分の悔しいの意味は他人とは恐らく違う意味だからかそこまでの挫折を味わう事はなかった。だって負けたのが悔しいのではなく、普通の剣士になれないという事自体が悔しいという感情の方が大きかったから。
「ミーシャ、おはよう」
「あら、武蔵てっきり昼は過ぎると思っていたけど案外早かったのね」
「退院するだけなんだから、それ程時間は取られないよ…」
そうミーシャと雑談を開始すると、彼らは嫌なモノを見るような顔で各々自分の席へと戻っていく、最初から授業を受ける気でいるなら俺なんかに構わず、準備しておけばいいのにと、見ながら今日も一日を過ごしていく。
―昼下がり
学校も終わり、太陽が茜色に変化していく姿を見ながら、ミーシャに誰も居なくなった教室に呼び出される。
「武蔵、ちょっといいかしら?」
「?、いいけど…」
また戦いを休日の暇つぶしとして、挑まれるのだろうか?流石に今の俺には無理な相談だが…。
「明後日、少し買い物に付き合ってくれないかしら?」
「……、デート?」
「違うわよ!」
顔を真っ赤にさせ答える彼女、今の彼女はクラスでも普通に話しかけられている、ならば自分なんかに頼む必要など無いと思うのだが。
「とりあえず日曜の11時、寮で待ってなさいよね」
「わかった…」
こうして、ミーシャとのデート?の約束を漕ぎつけた訳だが、はてさて一体どういう了見なのか、今の自分には皆目見当もつかない事だった。
この小説を書いてからPV数が毎日40を超えるなんて快挙を成し遂げています、それが今の自分のモチベーションになっているので、この場にてお礼を一つ。
このようなまだ小説を書き始めて3ヶ月も立っていない、恐らく皆さんから見ても稚拙な文章だと思いますが、それを見ていただきありがとうございます!
本文を読んでいただき誠に感謝します
ここまで読んでいただいた皆様、ここまで読まなくても本文は読んでくれた皆様、そして前書きで読むのを止めた方や途中でつまんないと思ってブラウザバックされた皆々様全てにこの作品を一度開いていただいた事を感謝します。




