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天才剣士と神童剣聖の剣舞(ソードダンス)  作者: 鈴川掌
第九話 私が私である為に
42/42

第九話(上)

第九話です。

ちょっとしたネタバレになるんですが、この作品は一応恋愛要素を入れようとしています。そしてメインヒロインを誰にしようかいまだに決めていません。本当はミーシャにしようとしていたんですがまだ考えています、言ってしまうとこの話に一応出すつもりのキャラクターかミーシャか開花の誰かです、おいおい開花は10歳も年上やぞと思うかもしれませんがまぁ細かい事はいいじゃないですか…、ちょっとした性癖みたいなものです、年上で且つ最強ってすごいいいと思いません?

そしてコメント稼ぎ見たいなるかもしれなくて、もしかしたら規約違反かもしれませんが僕個人としては、できれば読者様の要望があればそのキャラクターにしたいと思っています。因みに新しくでるヒロインは僕っ子の予定です。

で予定してるストーリーとしては、僕っ子がヒロインの場合ミーシャが少し弱くなります、ミーシャがヒロインの場合最強になります、開花がヒロインの場合は超最強になります、良ければ希望だしてくれるとありがたいです、一応規約に引っかかるかもしれないので活動報告にも同じ事乗せて置きます。


 大きく息を吐く、どれ程畏怖されようが、どれ程奇異な目で見られようが構わない。だって私は神童(ミーシャ・アーサー)なのだから。

 どれ程実力が離れていても、どれ程強大な敵が前に立とうとも、私は手を抜かない、それはこの学校に来て大事な事を教えてくれた名前も知らない同級生に学んだ事。

 私は傲慢になっているのかもしれない、けれどそれでも私がそう望んだのだから、私は私のままこの性格で居続けよう、それがせめてもの兄への償いになると信じているし、私をいい方向に進ませてくれていると思うから。勝者の丘で孤独に一人佇む事それだけが私より強い兄への恩返しであると信じて。

 私が私である為に重要な事をこの予選最後の試合の前に洗いざらい思い起こしておく。

 私は、剣聖祭で優勝して、ちゃんと公式に剣聖の称号を与えてもらう。

 私は、今はもう活躍できない兄の為に、兄が残せたであろう以上の成績を残してから引退する。

 私は、誰よりも最強の私で居る為の努力を惜しまない。

 最後に、私は東雲武蔵と剣聖祭でもう一度戦う。

 これだけ復唱したらもう大丈夫、今日も私は私で居られている。


 ―剣聖祭予選9日目―

 控え室で大きく息を吐きながら集中する、深い深い水の中に沈み込むように、ゆっくりとゆっくりと水底に辿り着く。

 例え息が無くなっても焦る事はない、困ればこの辺り一帯の水を私の熱で蒸発させてしまえばいいと思いながら、水底に居座る。水の中で目を開き辺りを確認しても、そこは暗い水底で決して誰も居ない空間その誰も居ない筈の空間で暫くゆったりくつろいでいると、遠くから私に迫る手が見える、あぁもう時間なのか。できる事であればもう少しだけこの空間に居たかった。

「ミーシャ?準備できてるかー?」

「一々声をかけなくても良いのよ?ミリオン」

「それで寝過ごして、不戦敗扱いになりかけたのは何処のどいつだ?」

 そういえばそんな事もあった気がするが私は気にしない、だってあれはもう遠い昔の事なんですもの、今のそんな私はそんな小学生の様なミスはしない。

「思い耽っている所悪いが、お前がそれをしたのはつい2日前だからな」

 確かにそうだった、ではあれは遠い記憶では無くつい一昨日の出来事だったという訳か、ハハハ……、確かにそうだった。

「ちょっとミリオン時間は!」

「まだ試合まで15分はあるよ」

「はぁー、良かった…、また対戦相手に迷惑をかけるところだったわ…」

 自分でも改めて時計を見るが、こちらから見てもまだ時計は試合開始予定時刻より15分前を指示(さししめ)していた。

 流石に9日間連続で試合を行っていては神経も磨り減るし、体力も大分尽きかけている、だがだから何だというのか、体力が限界?握力も残っていない?そんなのはただの負けた時の言い訳に過ぎない、だから私はそんな言い訳をしない。

 だが疲れで若干の気のゆるみがあるのは間違いないという事を頭に入れて、今一度気合を入れ直す。

「ヨシッ、じゃあ行ってくるわね」

「ミーシャ、ちょっと待った」

 席を立ち試合会場に向おうとした矢先にミリオンに止められてしまう。

「なによ?ミリオン、言っておくけど今日は変な縛りには乗らないわよ?」

「だから縛りじゃないって、分かっていると思うけどもう剣聖祭出場は確定している、ミーシャも彼もね、それでも考えは変わらないかい?」

 何だ、そんな事か…そんなの答えは決まっている。

「当たり前よ、私は全勝で剣聖祭に出場するわ、それに手を抜くなんて私に道を示してくれたあの子に失礼だもの」

「あの子?誰だい?」

「さぁね、名前は知らないわ、だけど私に最後まで頑張り続ける凄さを教えてくれた存在よ」

 あの子に誓って、私は手を抜くという事を止める事にした、それが上に立ったものの責務だという事をあの決して強いとは言えないけど、勇敢なあの子に教わった。

「じゃあ行ってくるわ、特殊な繊維(ヘファイストス)は?」

「これ以上は言っても無駄か…、頑固な妹を持つと苦労するな、息抜きと言う言葉を覚えて欲しいんだが、それはそれとしてそれはここに」

「ありがとう、その頑固な妹にした張本人に言われても説得力はないわね」

「それも、そうだった」

 その一言を聞いてから控え室から立ち去る。

 コツン、コツンと自分の靴音が響き渡るが、一歩進めるごとに自らの足音はけたたましい程の喧騒にかき消されていく、この歓声が自らに向いている物だと認識するのは数秒とかかる事は無いが、それを実感する度に顔が火照り始める。

 自分が認められている、自分が求められているという状態がここまで気持ちの良い感情だとは思ってはいなかった。そう気持ちがいいのだどうしよう無い程に、誰にかに求められる気持ちは、でもだからこそこうも思う。

 絶対的な強さを持って、しかしそのブレイン故に嫌われてしまった、東雲武蔵と言う人間は一体何を糧に勝者の丘で孤独に佇めるのだろうかと、そんな事を考えていると試合会場のど真ん中に辿り着く。

 試合開始までは残り10分、対戦相手の姿は未だ見えない、しかし絶対的王者として私はこの勝者の丘で孤独に待つ。

「クラウ・ソラス」

 Swordを出した瞬間に歓声がブワッと湧き上がる、これはこれで恥ずかしいが、私は身の丈ありそうな我が愛剣を地面に突き立て次の挑戦者が来るまでの間、もう一度あの暗い水底へと向かう。


 たった一人で泳ぎ始め大きく息を吐く、肉体から空気を吐き出して何もない空っぽな私に変貌する。

 ここでは全てが等しく平等だ、雑念が生じれば水底に沈む前に浮上しなければ苦しくなり、それはどんな実力者でも変わらぬ事、逆に言ってしまえば雑念を全て捨て去り暗い水の中を沈み込み、水底に辿り着くのは実力が伴っていない人間でもできる事だ、大事なのはそれを継続させる事。

 暫くの時間が経ち、私は水底へと辿り着く。

「あぁ、心地いい」

 そう思わざるを得ない程、体が楽になり自分の事であれば実践しようとすれば、すぐさま実行し解決できてしまえそうなほど心地が良い、暗い水底でもしっかりと物を捉える事ができるし、視野も広がって死角という物も存在しないような気分になる。

 この状態のまま剣舞(ソードダンス)ができたら、どれ程楽しいのだろうか?どれ程自分は高みへ行けるのだろうか?そんないつかは至りたい最強の自分を夢想する。

 誰かと戦っている、これは誰であろうか?私は縦横無人に試合会場を駆け巡り、相手もそれに負けじと応戦する、自らの得意技であろうものの応酬。私の姿も相手の姿も見えなくなり、それでも私は相手が居るべき場所に連続で攻撃を仕掛ける、そして相手もそれを分かっているが如く完全に防ぎきる、きっとこれは剣聖祭決勝の武蔵と戦っているんだと想像し、胸が高鳴りとてつもなく嬉しい感情が湧く、私はここまで来た、さぁ武蔵貴方は何処まで登ってきたの?と言い合いながら何度も何度もswordを打ちつけ合う。

 その時だった、余りにも興奮しすぎて息を吸ってしまったのは、暗い水底から急浮上し、私は先程まで立っていた試合会場に戻ってくる、楽しかったのに残念だ。

 そして待ち遠しかった相手と相まみえる。

「貴方の事を待っていたわ、今日はよろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いする」

 この態度からするに1学年上の先輩だろうか?先輩だからといって、私の剣聖祭出場が決まっているからと言って、手加減をするつもりはないし、最後の花道を用意する気も無い、私は本気で戦って、この学園で私が最強である証明をするというだけ。


 ―3

「武蔵見ているかしら?」

「はぁ?」

 ―2

 今は目の前に居ない友人に声をかける、貴方は私を見て入れてくれるかしらと、恋焦がれる様に、彼の視線が私に集中している事を望む。

 私は今から飛び立って見せる、だから貴方も私のすぐ傍まで早く来て欲しい、私の傍までくるという事がどれだけ難しい事か、私自身が分かっている筈だ、そう簡単に辿り着ける程甘い道のりではない、70年間磨き上げたアーサー家相伝という流派に、私とミリオンで築きあげた私の実力そのものもまだ十分と言っていい程に弱体化した武蔵であれば差が残っている。

 ―1

「私は先に高みへ行くわ」

「だから何を言って…」

 ―0

 カウントダウンが終わった瞬間に炎を纏いしクラウ・ソラスを相手に叩きこむ、そのたった一撃で決着をつけるが如くの勢いで相手が倒れる程度の一撃を叩きこむ。

 踵を返し、試合会場を後にしようとするが何かがおかしい、いつも相手に勝った時に聞こえる勝利のコールが聞こえない。

 まさかと思い振り返る、確実に刃は届いていたと思うし、刃が届いていなくてもクラウ・ソラスに乗せた炎の属性攻撃か相手のヘファイストスを燃やし尽くしたと思っていたが、まさかまさか、立っているとはね…。

「どうやって防いだのかしら?ブレイン?それとも私の一撃を防ぐだけの実力があったのかしら?」

「試合中に…、自分のブレインを教える訳がないだろ」

「それもそうね、それじゃあ自分で探るとするわ、どうやって防いだのかを…」

 今一度炎をクラウ・ソラスに纏い今度は更に強力な一撃を、私の代名詞とも言える技を叩きこむ。

「プロミネンス!」

 芽生の《斬撃支配(スラッシュショット)》とも違う残影を具現化するのではない、振るった斬撃をその勢いのままに炎として撃ちだす技、属性を上手く扱う事ができない人間にはそもそも真似すらできない芸当、それを試合場内全域をカバーするかの様に私が振るった場所から徐々に弧を描いた炎は燃え広がっていく、どうやって避けたのか、それともどうにかして防いだのかその事象を私に見せて見ろ…。

「っと」

 燃え広がる事を止めなかった斬撃は、そのたった一呼吸を前に意図も容易く相殺される。

「なっ!?」

 思わず声を出さずにはいられなかった、冷静を取り繕う事も忘れて、立ち尽くす事ができない、私を相手が許す筈も無く。一目散に私へとその刃を向ける。

 ―ギィィイイン―

 鈍い音が響き渡り、私と相手の距離はほぼ0距離まで近づかれてしまう、しまったと私が私自身を悔やみ、己が傲慢を呪う、どれ程手を抜かないと自負していても心のどこかでいつも通りに事が進めば勝てると思っていたのだろう、だから私は自らに向いた刃にもギリギリで反応しているのだ。

 こんな攻撃いつもならば、ブレインを使わずともカウンターをできたはずだ、しかしそれが今はできない、故に私はこの剣聖祭予選で初めてのブレインを使用する。

「《運命の決断(ディスティニーディシジョン)》」

 後手であろうと確実にカウンターを決める私の一つ目のブレインは発動と同時に相手を弾き飛ばし、完全に無防備になったその胴体に一撃を入れようとする。

 しかしそれは叶わない、何故ならば不可思議にも確実に捉えたと思っていた筈の私の攻撃は既に相手のswordによって完全に阻まれている。

「っ……」

 慢心は無かった筈だ、なのに何故私の攻撃は意図も容易く防がれるのかそれを今一度疑問に思う、こういう時にこそ冷静になれる者こそが勝負を制すのだとミリオンも良く話していたというのを覚えている、だからこそ考えろ考えるんだ…ミーシャ・アーサー…。

 属性攻撃がまるで幻かのように消え失せた。武蔵の《無神》の様に相手のブレインや属性攻撃を完全に打ち消すブレインと言う事だろうか?否それはおかしい、なぜならば《運命の決断》は完全に発動した、故に私は絶好のカウンターを打ち込めた筈だ、それなのに私の攻撃は通らない。

 であればこういう物はどうであろうか?

「イン・ネティブル…、不可避の連撃はどう対処するのかしら?」

「くっ」

 ―ガキィン、ガキィン―そう音を立てては何度も互いの剣がぶつかりあう。

「くぅぅっ……」

 苦しいのかそれともブレインの使い過ぎで、頭がどうにかなりそうなのかそれはわからないが間違いなく消耗している、だが負けたくないという気持ちが強いのかそれでも諦めないという姿は尊敬にすら値する。

 しかしイン・ネティブルの連撃は一瞬隙を見逃さない、一瞬ほんのわずかに出来た隙を逃さず背後に回り、今一度攻撃を叩きこむ。

 ―ズバッ―ガキィィイイン―

 一瞬入ったと思ったが、相手が体を無理やり捩じり何とか寸での所で致命打は阻止する。

「ねぇ神童さん」

「なにかしら」

「私を勝たせて、お願い」

 この女は何を言っているんだ?私を勝たせて?そんな八百長が認められると思っているのか?先ほど尊敬にすら値すると言った言葉は、前言撤回する私は彼女を侮蔑する。

 武蔵が剣聖と言う称号を馬鹿にしたときもこのような感情にはなった、しかしあちらは正当に実力勝負を求めて私が奪っただからそれ以降は何も思っていない、だけれどどもこの女は私に八百長を求めているそんな事許される筈も無い。

 あぁ怒りで物事を進めるのは無理だと分かっている、だけれども…、私はこの女を許せない。

 コイツのブレインは、先程の攻撃で正体が分かった、恐らくだが正面の攻撃に対しての特防なのだろう、だかそんな事はもうどうでも良い。

「貴方はもう剣聖祭出場が確定しているでしょ?私は今6勝2敗これを勝てば、もしかしたら…」

「黙りなさい…もう私に話しかけるな」

「ヒッ…」

 今の私は酷く憤慨してもう周りの事が見えていない、だから今から私はこの女が二度と八百長の交渉等出来ないように…ぶっ潰すわ。

「ククク…アハハハ…」

「なによ…その目は……」

 目?一体何のことであろうか?

属性付与(エンチャント)…プロミネンス…」

 プロミネンスを剣に纏わせ私は縦横無人に立ちまわる、お前の攻撃が一切届かない所からプロミネンスに良く似たただの属性攻撃を放つ、それでも相手はブレインを使って相殺してくれる。

 やっぱりお前のブレインは正面からの攻撃を相殺するという、ごくごくありきたりなブレインだったのね、ならもう…興味がないわ。

「これで決着、残念ながら予選敗退ね」

「は?何を言って…」

「行け…プロミネンス」

 その言葉を合図に私が無駄に縦横無尽に駆け回った場所から、属性付与でその場に留めて置いたプロミネンスが発射される。

「興味ないけどお前のブレインはどうせ正面に対して絶対的な防御を持つとかそういう物なんでしょう?」

「人の心とかないのか!?」

 この攻撃に対して言っているのか、それとも自分が勝てば剣聖祭出場の夢が途絶えなかった事に対して言っているのかわからないが私がやるべきことは一つ。

「《強制(オーダー)》……『ブレインの使用を禁ずる、そして無様に負けなさい』」

 完全に負け筋を無くす、もし私の予想が外れて武蔵の無神の様に全方位に対して属性、ブレインに対するアンチだとしたら私の攻撃は今一度相殺されてしまうかもしれない、だからそれを無くした。これ以上はもうお前と戦いたくない、顔すら見たくない、お前は剣士の風上にも置けない。

「なんで、ブレインが発動しない?おい!どうなってる!」

 爆炎と共に相手のヘファイストスや意識を刈り取り、上のディスプレイにはただただ空虚に私の名前が表示されている。

「これ以上話す気もないし、そもそも聞こえていないでしょうけど、一つだけ言っておくわ……私の名前はミーシャ・アーサー、舐め腐った貴方に敗北を与える者よ」


前に話していたキャラの生誕秘話を話していこうと思います、今回は東雲武蔵とミーシャ・アーサーについて。

東雲武蔵は多分皆さんも想像する通り日本で一番有名剣豪であろう宮本武蔵から名前を取っています、東雲は単純に技考える時にめんどくさくなってゼロ戦から名前を取る為に空要素を入れた苗字となっております。

ミーシャ・アーサーは海外のまぁ日本でも間違いなく有名であるアーサー王伝説から取っていますだからと言って最終奥義がエクスカリバーになるなんて安直な考えはしてません、まぁ技を調べてもらえば安直な技名と言うのはバレてしまうんですが……、ミリオン・アーサーってどこかで聞いた事ありません?多分その想像であっていると思います。

本文を読んでいただき誠に感謝します

ここまで読んでいただいた皆様、ここまで読まなくても本文は読んでくれた皆様、そして前書きで読むのを止めた方や途中でつまんないと思ってブラウザバックされた皆々様全てにこの作品を一度開いていただいた事を感謝します。

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