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天才剣士と神童剣聖の剣舞(ソードダンス)  作者: 鈴川掌
第八話 満開へと至る道
38/42

第八話(中)

お待たせしました、八話(中)です、芽生の苦悩書いている時が一番楽しいかもしれないです。

最近思ったのですが、私の作品のあらすじって多分ゴミだと思うんですよ、あとプロローグと一話もプロローグと1話は直そうと思えば多分直せるんですけど、誰かあらすじの書き方教えてください……。

 予選は順調に勝ち進めている、それでも恐らく私は成長をしていない、今は過去の実績だけでなんとか勝てているという状態だ。

 東雲武蔵に勝ちたい、その一心でアイツの研究を開始して早三日、誰かを集中的に研究し尽くすなんて事やった事はない、だからこそ予選にある一日の休養日を活かして、なんとしてもアイツの近くへと進みたいが、どうも頭が回らない、一度刀を振るってこよう、何事にも息抜きは必要だ。

 模擬戦場へ行き自主練を開始する、まずは私の生命線ともなっている狂い桜・開花の型を無心で行う、刀が空気を斬る音が心地良い、研究ばかりで質の良い睡眠というモノはできていなかったが、この心地良さならぐっすり眠れるかもしれない。

 刀を振り続けて数十分が経った頃の時、模擬戦場の戸が開く音がして、刀を納刀し振り返る。

「よっ!元気にしているか?芽生」

「姉さん…」

 少し気まずい前回の喧嘩別れ件がある。姉さんは気にしてはいないのだろうが、私は気にしている。

「姉さん…ごめんなさい…」

「な、何を謝っているんだよ、気にするなって。こっちも悪かったと思っているよ、悩んでいる人間にかける言葉ではなかったかなって」

 頬をポリポリと掻きながら、くすぐったそうに反応する姉さんをもう少し見ていたい気分ではあるのだが、私には無駄に出来る時間はもう殆ど残っていない、今日が剣聖祭予選四日目そして各生徒事用意されている唯一の休養日、やるなら今日しかない。

「それでも謝らせて、そしてお願いがあるの」

「なんか芽生にそんなに謝られると調子が狂うな……それでお願いって?

 その言葉を発した途端に姉の空気が変わる、姉はこの学園の学園長例え妹であっても、生徒一人に肩入れする訳にはいかないのだろう、これが学園を背負う剣聖祭代表者であったのなら別なのだろうが…。

「一度でいいの、狂い桜・満開を私に見せて」

「それは…まぁいいか、これで芽生と東雲が同条件になるし…」

 少し聞き捨てならない言葉を聞いた気がする、私の東雲が同条件になる?つまりは東雲にも、狂い桜・満開を見せたという事にならないだろうか?しかし何時?と考えた瞬間に結論は出た、そう言えば姉さんがまたswordを壊して叱られたという話を人伝(ひとづて)に聞いたつまりはそういう事だろう?

「姉・さ・ん?」

「悪かったって思っているよ、元剣聖が面白いように進んでいくから、ちょっとちょっかいをかけたかっただけで…」

 しょんぼりする姉さんを見て、私はどういう感情をすればいいのだろうか、ずっと剣舞という競技が大好きな子供と例えればいいのか、子供気分が抜け切れていない大人と言うべきなのか、それはわからないが、まぁどうだっていい、見せてさえくれれば何か掴めるかもしれない、今の私がダメでも…明日の私が習得に一歩近づけるかも知れない、だからこそ見せて欲しい。

「じゃ、じゃあ、やって見せるぞ?」

「ええ、お願い」


 姉さんが自ら行う狂い桜を見るのは何年ぶりだろうか?ただ言える事は一つ、姉さんは昔と何一つ変わらずに狂い桜という武術を芸術と思わせる域まで進化させている。開花は私にもできる狂い桜の基礎中の基礎、満開はその基礎である開花を攻撃に転じさせる為の技、今なら解るアーサーが言っていた、その使い方は間違っているという言葉の意味。

 開花は自分の防御に使うカウンター技であり、その域を出る事はない、故にアーサーはそれを知っているからこそ開花を攻撃に転じさせた私を見て落胆したのだろう。

「フンッ!」

 開花が始まり狂い桜は満開へと至るそれは、防御は終わり攻撃に転じる事を意味する。別に開花から満開へと繋げる必要は無い、それどころか防御から攻撃にいきなり転じるという事はそれだけ難しいことなのだが…。この姉は嘲笑うかの様にそれを易々(やすやす)とやってみせる。

 そして姉さんは私ですら生で見た事は無いモノを見せてくれる、それは狂い桜の最後、桜の道行。

 開花した桜は満開を迎え、そして散る、つまりは散華。

 開花で自分の周囲を完璧に守るカウンターを形成し、満開で相手の態勢を崩し、そして散華は相手に防御不可の絶対なる連撃をお見舞いする、それを姉さんは私に初めて生で見せてくれた、まるでお前もここに来いと言わんがばかリに。

「姉さん…今のって…」

「私は芽生が大好きだからな、ちょっとしたサービス…東雲には内緒だぞ?」

「ええ、わかってる」

 それだけの期待を私自身に向けられていると言うのも同時に理解している、そして私はどれだけ恵まれているのか身に染みた。

 これだけ自分の目指すべき理想がすぐ傍にいるというのは、早々巡り合う事の無い筈だ、それが憧れから始まったものだとしても、その憧れを越えたいという気持ちを持ち続けるのは、それはそれで凄い事だと自分でも思う。


 姉さんは去り、私は一人で満開の習得を目指し鍛錬を続ける、今日が唯一の休養日。今日中に何かきっかけを作れなかったら私の負けだ、無策で東雲に挑み、私は惨めに負けるのであろう。今までの自分であればそれで納得したかもしれないが、今の私はそれをよしとはしない、姉さんの彼らだけが見れる景色を私も見たいから、私は絶対に諦めない。

 暫くの時が経ったときだった、刀を一度納刀し、給水をする為に端に固めている自信の荷物を取りに行った時、意外な人物が私の目の前に現れる。

「貴方は?……確か東雲の鍛冶師の……和泉さんといったか」

 彼女は私を情報を探りに来たのか、私の姿をじっと模擬戦場の入口で見ていた。決してやましい事はしていないし、情報収集をするのも禁止されていないが、瞬きもせずにじっと見つめられるのは少し気になる。

「すみません、別にやましい事はしていないんです」

「構わないよ、どうせ東雲が観察してこいとでも言ったんだろう?」

「いえ、武蔵君には何も言われていないのですが…」

「むっ、そうか…そうだったか」

 それは私の事など、眼中に無いという事なのだろうか?それとも私より目先の敵を優先したいのか、或いは…否これが本心だろう恐らくあのバケモノ以外は目に入らないのだろうあの男は。

 とはいえそれだったら何故?私の鍛錬を見続けていたのだろうか?よくわからない。

「答えられればで構わないんだが、いいかな?」

「はい、なんでしょうか?」

「なんで私の鍛錬をじっと見つめていたんだ?それが東雲の為になると思ったからとかかな?」

「うーん…なんでなんでしょうね?」

 彼女にも理由がわからないのか、私に何か違和感があったのだろうか?それはそれで気になる。

「ただ一つ言えるのは…」

「一つ言えるのは?」

「とても芽生先輩の動きが美しかったからかもしれないです」

「そ、それは……どうも」

 彼女と私は頬を赤らめ、微妙な空気がその場を支配する、恐らく顔や仕草では無く剣技を差しているのだろうが、美しいと直球で言われるのは何分初めてなモノでどう反応すればいいのか困る。

「すいません、変な事言ってしまって…私…」

「いや、構わない…それじゃあ……」

「はい、それでは」

 このまま別れてもいいのか?彼女の感性を利用して私にとって有効な情報を得るチャンスなのではと脳裏に過るが、そんな事をするつもりは毛頭ないと頭を横に振る。

 だからせめて対等な関係として取引を持ちだしてみよう別に彼女達にとっても悪い話ではないだろうし、それだけ私が東雲武蔵という人間を意識しているという事を(しら)せるにはいい機会だ。

「ちょっと待ってもらってもいいか?」

「?構いませんが…」

「少し私と話をしないか?」


 まるでナンパの様なセリフ回しだが、これ以外に良い言葉が思い浮かばなかったというのも事実だ、だがらこそこちらから要件を話そうそうでなくては私は彼女に変人と言うレッテルを張られてしまうかもしれない、それだけは東雲武蔵に関わる人間にそう思われるのだけは避けたい。

「どうかしました?」

「あーっ、そのなんだ、聞きたい事があるんだがそれを、君に聞いてしまってもいいのか、それを悩んでいる」

 アイツはどうやって成長したのかなんて、やっぱりアイツの専属たる彼女に聞くのは間違っているか…。

「構いませんよ、どんな事でも…それが武蔵君の事であってもたった一つを除けば、答える事は武蔵君も構わないと言うと思いますし」

 たった一つの事?まぁそれが東雲武蔵の成長過程や心理的なモノである事は、恐らく確定だろうが、折角の機会だ、聞くだけ聞いて玉砕してしまおう。

「東雲武蔵がどうやって、狂い桜という流派の一端に辿り着いたのか、それを知りたいんだ」

「狂い桜に至った経緯ですか……」

 やはり答えるのは不可能な問であったか…まぁしょうがないと割り切れるさ、そんな事よりも早く満開に至る為の何かきっかけを掴む為の努力をしなくては。

「やっぱり、教えられないか、いいよ気にしないで、じゃあ私は……」

「いえ、その事は別にお教えする事はできます、ですがどのように言語化すればよいのか悩んでいました」

 教えてもらえるのか?こんな自身の力そのものについてと言う話なのに。

「ざっくりとした、私の感想でもよろしいでしょうか?芽生先輩」

「あぁ、教えてもらえるならそれで構わないし、教えてくれるなら私の事も開示する」

「わかりました、では」

 そうして彼女は語りだす、東雲武蔵がどのような心境で、どのような執念で、狂い桜という境地に至ったのかと言う考察を、しかしそれは聞いてしまえばあっけの無い、言ってしまえばツマラナイものだった。

「言ってしまえば、そうですね……それが最適だったから真似したという事でしょうか?」

「最適だったから?」

「そうです、置田みかんさん。武蔵君の最初の対戦相手の名前です、芽生先輩も、もう戦っていますから彼女の攻撃手段についてはご存じですよね?」

 置田みかん、少しのタイムラグが発生したが、思い出す事は可能だ、まるでサーカスやマジックの様に移り変わり、意表を突くには最適なブレインを持った1年の女子生徒であったはずだ。

「あぁ、その娘なら覚えている、まだまだ甘い所はあるけれど実に有望な生徒だと私は思う」

「それでしたら置田さんにとって、相性最悪なのが狂い桜と言う事も」

「勿論知っては居るというか、実際に戦えば間合いに入ってきた相手に対しほぼ自動的にカウンターを放つ開花との相性が悪い事は理解できたが」

 まさかそう思ったから、あの状況で開花を身に着けようとしたのか?それは……余りにも常軌を逸脱しすぎているとしか言い表せない。

「ははっ、まさに『天才』だな」

「そうですね、武蔵君は未だ底を知らぬ天才だと私も思います」

 そうと決まればうかうかしていられない、何としてでも満開を東雲との対決までにモノにしなくてはならない。

 それとは別に話してくれた事のお礼をするのを、忘れていた彼女とは対等な情報交換をしたい東雲という陣営に貸しも作りたくない。

「東雲に伝えといてくれ、私は必ずお前との勝負までに狂い桜・満開を会得して見せる…と」

「わかりました、伝えておきます」


 決意が揺るがない内に改めて満開という技のおさらいをしておこう。

 まず満開は開花や散華とは違い納刀状態で始める居合では無い、抜刀し中段に構える所から始まる技だ。といっても姉さんなら全て納刀状態から始める事もできるし、抜刀状態から始める事も可能なのだろうが、それは私にはできない精々開花を抜刀状態でも何とか数発なら連発できる程度が、私の実力だろう。

 狂い桜の基本は圧倒的な剣戟の物量による多段攻撃、相手に防御という手段を取らせない事を主題に置いた流派である、しかし満開はその中でも相手の防御を崩し攻撃を仕掛けるという性質が強く、それでいて開花以上に速く、一つの斬撃に乗る重さも段違いだ。

 それを踏まえた上で今一度、満開を試みる。

「セイ!ヤァ!ハァァァアアア!」

 そこでふと気になる事が一つできた。

「あのいつまで見ているのかな?和泉さん」

「あっ、すいません、ついぼーっと見てしまいました」

 別に見られて観察される事は嫌いじゃないし、悪い事でもないが、それが東雲の相方である彼女なら別だ、躊躇(ためら)いが出る訳では無いのだが、少し気になってしまう。

「何か、私に言いたい事でも?」

「いえ、そんな事は滅相もございません、ですがもう一度だけ満開を見せてもらってもいいですか?」

「ん?別に…構わないが、というか満開ですらない未完成品だがね…」

 私がライバルと思っている相手の相方に、そう言われるのは何か不思議な気分である事には変わりは無いが別に減るモノでもないし、まぁいいか。

 今一度刀を中段に構え、一段に相手の防御を崩すための突きを、そして二段目以降の防御させる事の無い速さで斬り付けるという理想を持って刀を振るうが、姉さんがやった満開とは違い私の満開は、精々最初の一撃で相手を少し崩せる程度の連撃になり何度やっても繋がる事はない。

「ダメか……」

「……………」

「和泉さん、何かこの未完成の満開を見て感想でもくれるのかな?」

「そうですね、感想と言うよりも不躾ながらアドバイスになりうるかは、わかりませんが一つ気になった事を話してもよろしいでしょうか?芽生先輩」

「構わない、それが私の成長に繋がるならば、批評でも酷評でも受け入れる」

 彼女は一呼吸スーッと置いて語り出す、私が考えようもしなかった事を。

「芽生先輩、先輩は完成に拘り過ぎている気がします。もっと未完成でも良いという気持ちを持ってみてはいかがでしょう?満開に至らずとも、開花を終えた桜は間違いなく満開に近づいているのですから」

 どういう事だろうか?未完成で妥協するべきだと、彼女は言っているのだろうか?それはできない相談だ、それは姉さんに対する冒とくになりうる、姉さんが築きあげた狂い桜を否定する事になってしまう。

「未完成品で妥協するなんて事は、姉さんが許しても私が許さない」

「違います、妥協するのではなく、全く違う技にしてしまえばいいと私は思います」

 違う技に?それは一体どういう事だろうか?

「満開に至らぬ桜でも、武蔵君が語っていた満開の特徴は満たせていると私は感じました、だから…そうですね武蔵君風に言うのであれば我流にしてしまえばいいのでは?と言うのが私の提案です」

 我流。つまりは姉さんの狂い桜を自分なりに改良してしまえばいいと彼女は言っているのだろうか?余りにも満開ができない事から考えた事はあった…がそれでも満開には至らなかった、だが彼女はこう言うのだ、未完成でもそれを技として昇華してしまえばいいとそう言っているのだ。

「それは、考えた事も無かったな…いつも満開に至る事だけを考えて刀を振るってきた、そうか至らなくてもそれを糧にすることは、できるのか……」

「参考になったようなら何よりです」

 そう言って彼女はこの場を後にし、出て行こうとするが私はそれを、どうしてだろう止めたかった、別に東雲を裏切ってこちら側について欲しい訳じゃない、何といえばいいのか…ダメだ頭で考えるよりも、行動に移せ。

「あ、あの!」

「?」

「私の名前は知っているかもしれないが、剣ヶ丘芽生、君の名前を教えて欲しい」

 彼女はそういう事ですかと言った表情でこちらを振り返る、その姿に私は見惚れてしまった、まるでお嬢様のようだと。

「名乗るのが遅れました、私の名前は和泉うちはと申します」

 丁寧にお辞儀をする彼女に私は…。

「本当にありがとう、また悩んだらアドバイスを貰いに行っても構わないかな?」

「それは……えぇその時は喜んでお受けします」

 その言葉がどうしようもなく嬉しくて、ガッツポーズをしてしまいたくなったが、そればかりは堪える。

「それじゃあ、うちはさんもアイツの鍛冶師を頑張ってくれ、そして本当にありがとう、必ず私だけの満開に至る方法を見つけ出すから」

「武蔵君の鍛冶師である私が言うのも変ですが、楽しみにしておきます」

 そうして私達は元居た場所に戻る、私は満開へと至る方法を探る為……そう言えば彼女は、うちはさんはどうしてこんなところに居たのだろう?




「♪~♪~♪」

 頭の中に思い浮かんだ曲を鼻歌で奏でる、どういう訳かはわからないが芽生先輩にアドバイスをする事になってそれで彼女は前に進めたようだった、それは剣士をサポートするものとしてはとても嬉しい事だ。

 武蔵君、ミーシャさん、そしてミリオンさんとも違うタイプの人、誰よりも努力を惜しまず、誰よりも壁に真正面からぶつかり続ける人そんな芽生先輩を見て私は何を思ったのだろうか?否答えは既に出て入る。

「かっこよかったなぁ」

 いつぶりだろうか、誰かに対してこのような感情を持ったのは、そうだな丁度10年ぶりくらいになるかもしれないな…。


 本文を読んでいただき誠に感謝します

 ここまで読んでいただいた皆様、ここまで読まなくても本文は読んでくれた皆様、そして前書きで読むのを止めた方や途中でつまんないと思ってブラウザバックされた皆々様全てにこの作品を一度開いていただいた事を感謝します。

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